メルマガ82号

今回は「南西諸島軍事強化トピック」です。毎日更新している沖縄「戦前新聞」の情報を当会発起人の新垣邦雄さんに解説していただいています。射程距離1000キロを超える長射程弾を沖縄に配備するという政府構想、那覇基地の15旅団を師団に格上げの方針など、南西諸島の軍事強化に全く歯止めがかからず、緊張強化を高める状況を報じる記事が並びました。毎日、湯水のように流れる軍事強化が続きますが、今何が起きているのかをつかんでいくために、ぜひ解説と、記事をお読みください。

(以下再掲です。ご確認ください)
 来る12月18日、また沖縄が戦場になるって本当ですか?ー「戦争準備を知る、声を上げる。止める」シンポジウムを開催します。「敵基地攻撃能力」(反撃能力)の保有を認め、防衛費を増加させ、さらなる軍事緊張を高めるものでしかない安保関連三文書に対して警鐘をならし、発言されている弁護士の海渡雄一さんに「大軍拡と敵基地攻撃能力で戦争が止められるか」と題した基調講演で、詳しく解説していただきます。この講演をうけ、現場で日米共同統合演習を取材された琉球新報の明真南斗さん、映画、著作や論稿で南西諸島軍事要塞化に対していち早く厳しい批判を加えてきた当会発起人の三上智恵さんから報告をいただきます。詳しくはこちらをクリックしてご覧ください。
⇒ https://nomore-okinawasen.org/4216/

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南西諸島軍事強化トピック(12月5日~12月11日)

◆長射程弾 沖縄配備検討 陸自 滑空弾部隊 九州・北海道に(琉球新報 2022.12.11)  ⇒ https://nomore-okinawasen.org/4322/
12月11日、沖縄2紙に重要な記事2つが載った。一つは「長射程弾 沖縄配備検討」。政府は射程1000㌔超の長射程の最新ミサイル開発・配備の構想を矢継ぎ早に打ち出しているが、これを「沖縄に配備する」ことが明確に示された。陸自地対艦ミサイル、島嶼防衛用高速滑空弾、米軍トマホーク、極超音速ミサイル-などである。特徴は極超音速(マッハ5以上)、変則飛行で「防御不能」と言われる最新ミサイルであり、射程1600㌔超のトマホークはじめ艦艇や潜水艦、戦闘機など攻撃位置によっては北京にも届く「敵機委攻撃」ミサイルであること、それらを沖縄に大量配備するということだ。台湾有事対処の沖縄戦争に備え、沖縄列島が「中国へのミサイル攻撃基地」となることが明確になった。
◆国家戦略 防衛強化3目標 27年達成「沖縄で国民保護」(沖縄タイムス 2022.12.11) ⇒ https://nomore-okinawasen.org/4322/
 それ以上に重要で問題が大きいのは「政府が国家防衛戦略に、三つの防衛目標を定める方針を固めた」という記事だ。共同配信記事を以下にお示しする。
 『目標は「わが国の防衛方針の基本方針」の項目に記載。①力による一方的な現状変更を許容しない安全保障環境を創出②力による一方的な現状変更やその試みを同盟国や同志国と協力して抑止③わが国への侵攻に主たる責任をもって対処し、同盟国の支援を受けつつ阻止・排除ーと詳述した」と記事は記している。
 「一方的な現状変更」とは米国の対中国戦略文書の通し文句で、「中国の台湾武力統一」にほかならない。その台湾有事に備えて日本が軍備を強化し、「現状変更(武力侵攻)やその試み」を「同盟国や同志国で協力して抑止する」と言う。「日本(自衛隊)が米軍、NATOなどと共に戦う」、「台湾を守るために日本も戦う」という意思表明に読める。
 これまでバイデン米大統領は「台湾有事に関与」などと発言し、昨年、今年の日米首脳会談、2+2日米協議でも、米側が主導し日本が付き従う形で「一方的な現状変更(台湾有事)に共同対処」などと宣言してきた。それを「国家防衛戦略」に明記することは、日本の国家方針として「台湾有事」に関与し、「中国の台湾侵攻」を阻止するために自衛隊が戦うことを宣言することにほかならないのではないか。
 台湾有事「日米共同作戦」をスクープした石井暁共同通信専任編集委員は、沖縄での講演で「台湾有事に在日(在沖)米軍が関与」すれば、安保法制により「自衛隊が自動参戦する」戦争シナリオを説明した。いわば「米軍が口火を切り、日本が巻き込まれる」流れと理解した。ところが「国家防衛戦略」に日本の積極関与を明記することで、「台湾有事」の当初段階から「日米共に戦う」戦争シナリオに踏み込むのではないか。
 筆者の疑問を小西誠氏(軍事ジャーナリスト)に聞いた。
 小西氏の見解は筆者の見方に近い。「2013年の国家安全保障会議で、(中国の現状変更の試みに対し)、『わが国として事態をエスカレートさせることなく、中国側に自制を求めつつ、引き続き冷静かつ毅然と対応していく』というものであった」。その後の18年「防衛計画の大綱」でも「(表現は)かなりエスカレートした」ものの、「今回の国家安全保障戦略は、各種の敵基地攻撃能力を持つ長射程ミサイルの保有配備に合わせて、決定的に踏み込むもの」というご見解である。
 沖縄講演で石井氏は「安保法制+敵基地攻撃能力」により「米軍がまったく攻撃されていない段階で自衛隊が中国にミサイル攻撃する」「最悪ケース」を懸念した。事態はそこに向かいつつあるのではないか。危惧されてならない。

◆米司令官「24年受け入れ可能」 グアム 在沖海兵隊移転で 中国・北朝鮮に対抗(沖縄タイムス 2022.12.10)  ⇒https://nomore-okinawasen.org/4295/

 「在沖海兵隊 24年移転可能」。沖縄の負担軽減を名目に、莫大な日本政府予算を注ぎ込んだグアムの新基地の建設が進み、沖縄海兵隊約4000人の移転が2024年末にも可能になるという。先に、嘉手納基地のF15戦闘機が撤退し、F22戦闘機をローテーション配備することになった米軍戦略転換の背景に「沖縄の基地は中国との戦争で生き残ることができない」とする米軍の見方があることも報道された。米国にははかねて増強される中国軍、とりわけミサイル攻撃能力の向上に対し、「沖縄の基地は中国に近すぎかえって脆弱」(ジョセフ・ナイ)とする見方がある。
 自衛隊が対中国ミサイル攻撃能力を飛躍的に強化、「国家防衛戦略」に自ら戦う意思が表明される流れのなかで、米軍は徐々に沖縄から引き始めているのではないか。日本政府に「台湾有事は日本有事」、言い替えれば「台湾の戦争は日本の戦争」と受け入れさせ、日本の国防戦略として中国との戦争を主体的に担う態勢を築かせつつ、米軍は後方、側面支援に回る腹積もりではないだろうか。米国の資産(米軍基地、戦闘機など兵力)と国民(米兵)の出血を最小限にとどめ、日本と中国に戦争を仕向けて「唯一の競争相手」とみなす中国にダメージを与えるベストの選択ということになるだろう。
 沖縄選出の伊波洋一参院議員は10年前から「中国と戦うのは日本、自衛隊。米国は本国からより遠くで戦うオフショア戦略により、本国に危難を及ぼす核戦争に陥らない台湾周辺の地域限定戦争にとどめる狙い」と警鐘を鳴らしてきた。事態はまさにその通りに推移しているように見える。
 米商務長官が日本の経済産業相に「半導体の対中規制協力を」と要請した。「日本が高い技術力を持つ半導体製造装置などの輸出を規制し、中国の戦端半導体の開発を遅らせる狙い」とある。米国のIT産業、経済覇権を脅かす中国を蹴落とす露骨な中国排除政策ではないのか。かつての米自動車産業保護のための日本叩きを思い出す。米国にとっては都合がいいが、経済の中国排除は日本経済に深刻な影響を及ぼさないか。
 米国の「台湾防衛」政策が、いつの間にか日本の国防方針にすり替えられた。日本は米国のために中国と戦うことになるのか。日本が中国と戦争することになれば、壊滅的な損害を免れないだろう。日本はなぜ「台湾を守る」ために中国と戦うのか。日本の国益はなんなのかを自分の頭で考える必要がある。

12月5日(月))  https://nomore-okinawasen.org/4182/

◆南西諸島の迎撃部隊3倍 ミサイル防衛 計11態勢に 政府計画31年末に(沖縄タイムス 2022.12.5)
◆ミサイル迎撃 進展に課題 「反撃能力が安上がり」の声も 専守防衛逸脱の懸念(沖縄タイムス 2022.12.5)
◆陸自部隊増強は「検討中」 松野氏「南西防衛は強化」 那覇 第15旅団  普天間部会1~2月に(沖縄タイムス 2022.12.5) 
◆防衛増税 当面見送り 政府、増強計画先行へ 「27年度までに安定財源」(琉球新報 2022.12.5)
◆財源論議 見切り発車 防衛増税見送り 赤字国債発行も(琉球新報 2022.12.5)
◆防衛費増議論「中長期的に」 立民の長妻政調会長(沖縄タイムス 2022.12.5)
◆社説 説明なき要塞化を懸念 陸自の沖縄部隊増強(沖縄タイムス 2022.12.5)

12月6日(火) https://nomore-okinawasen.org/4201/

◆陸自15旅団 師団に増強 那覇拠点 隊員大幅増か 防衛相が自民に説明(沖縄タイムス 2022.12.6)
◆同盟は軍事介入のツール シンポ「戦争準備を知る、声をあげる、止める」に寄せて 布施祐仁(琉球新報 2022.12.6)
◆陸自増強「過重な負担」 知事「米軍比重は軽減を」 / 有事備え基金設置へ 与那国町 避難の費用支給(琉球新報 2022.12.6)
◆理事「米軍負担は軽減を」 陸自部隊の増強受け強調(沖縄タイムス 2022.12.6)
◆首相、防衛費43兆円指示 来年度から5年間 年末に措置決定(沖縄タイムス 2022.12.6)
◆財源の調整 難航必至 自民、増税に抵抗根強く(沖縄タイムス 2022.12.6)
◆前宮古島市長 二審も有罪 陸自用地収賄、控訴を棄却(琉球新報 2022.12.6)

12月7日(水) https://nomore-okinawasen.org/4227/

◆宮古島展示飛行11日抗議集会 ブルーインパルス (沖縄タイムス 2022.12.7)
◆空自展示飛行「島の軍事化」 宮古・市民団体訴え(琉球新報 2022.12.7)
◆陸自15旅団 師団格上げ 防衛相 安保戦略に盛り込む(琉球新報 2022.12.7)
◆「抑止・対処力高める」 沖縄陸自増強で防衛相(沖縄タイムス 2022.12.7)
◆長射程弾開発 5兆円 防衛力整備計画 離島防衛研究8000億円 / 防衛費増に特会剰余金 5年間16兆円 財源安定に増税想定(琉球新報 2022.12.7)
◆長射程ミサイルに5兆円 政府 防衛力整備計画で想定(沖縄タイムス 2022.12.7)
◆防衛安定財源に増税想定 当面16兆円 剰余金活用 あすにも大枠(沖縄タイムス 2022.12.7)

12月8日(木) https://nomore-okinawasen.org/4243/

◆15旅団増強 24年度以降か 防衛省明記、連隊二つに(琉球新報 2022.12.8)
◆陸自規模拡大に抗議 市民団体、県庁前で集会(沖縄タイムス 2022.12.8)
◆中国「秩序への挑戦」明記 国家戦略骨格 防衛計画に15旅団増強(琉球新報 2022.12.8)
◆防衛財源 段階的に増強 5年後で1兆円程度 来年度は見送り合意(沖縄タイムス 2022.12.8)
◆武力攻撃想定し計画作成 県議会代表質問 県、図上訓練向け(沖縄タイムス 2022.12.8)

12月9日(金) https://nomore-okinawasen.org/4271/

◆有事「軍事目標」防衛相否定せず 南西諸島のインフラ(琉球新報 2022.12.9)
◆「日頃から訓練必要」防衛相 先島の空港・港湾で(沖縄タイムス 2022.12.9)

12月10日(土) https://nomore-okinawasen.org/4295/

◆論壇 防衛三文書と軍拡予算 沖縄での戦争準備止めよう(琉球新報 2022.12.10)
◆防衛省 世論工作研究 特定国へ敵対心醸成 AI活用、SNSで誘導(琉球新報 2022.12.10)
◆識者談話 透明性の確保を / 憲法違反の恐れ(琉球新報 2022.12.10)
◆正体不明情報 拡散の恐れ 「支持獲得」の枠超える 防衛省 世論捜査研究(沖縄タイムス 202.12.10)
◆「省益」誘導の恐れ 防衛省 世論工作研究 発信元の検証困難 SNS空間 情報戦の恐れ(琉球新報 2022.12.10)
◆安保3文書全容解明 反撃能力保有を明記 長射程ミサイル増産 能動的サイバー防御 ◆海自に輸送総隊(琉球新報 2022.12.10)
◆社説 「規模ありき」は問題だ(琉球新報 2022.12.10)
米司令官「24年受け入れ可能」 グアム 在沖海兵隊移転で 中国・北朝鮮に対抗(沖縄タイムス 2022.12.10)
米 台湾支援を大幅拡充 国防法案 下院で可決 中国反発(沖縄タイムス 2022.12.10)

12月11日(日) https://nomore-okinawasen.org/4322/

◆長射程弾 沖縄配備検討 陸自 滑空弾部隊 九州・北海道に(琉球新報 2022.12.11)
◆国家戦略 防衛強化3目標 27年達成「沖縄で国民保護」(沖縄タイムス 2022.12.11)
◆防衛増税「未来への責任」 首相会見 安保、財政政策「大転換」 解散、国債発行は否定 / 沖縄の「国民保護」明記 防衛戦略(琉球新報 2022.12.11)
◆防衛強化へ所得税活用案 たばこ税も、法人税に加え(琉球新報 202212.11)
◆社説 防衛費43兆円 根拠なき膨張 危惧する(沖縄タイムス 2022.12.11)
◆ブルーインパルス飛来 宮古島市内をテスト飛行(琉球新報 2022.12.11)

文責:新垣邦雄(ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 発起人)

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