メルマガ148号

今回は県内外で「南西諸島ミサイル要塞化写真展」を展開している東アジア共同体研究所 琉球沖縄センター(瑞慶覧長敏センター長」の緒方修顧問の原稿を紹介します。緒方さんは本土開催の写真展の企画や講演を担当。南西諸島の軍備強化の状況と危機感についてご執筆いただきました。ぜひお読みください。

ミサイル危機を全国で共有しよう!

南西諸島・ミサイル危機の全国写真展を展開している。県内・県外で30カ所以上に及ぶ。
講演会(ズーム講演も)を伴う時もある。今年の7月、8月だけで大阪、東京、京都で実施中だ。7月6日(木)には衆議院第二議員会館内の会議室に約30人(+ライン参加者)を集めて、緒方がパワーポイントをお見せしながら行った。
主催者は学堂会。憲政の神様、尾崎行雄の精神を受け継いで発足した。代表は太田敦之氏。尾崎の曽孫にあたる。
「目の下のたるみが曾祖父からの遺伝です」とおっしゃっていた。明治維新の志士のような風貌。ちょんまげを結い、刀を差せばすぐにも幕末にタイムスリップしそうだ。開明派の若殿と話しているような気になった。

衆議院議員会館は、永田町の首相官邸の隣に並ぶ。そんな日本の中枢でなぜ私が講演することになったのか。3月末に文芸思潮という文芸誌(季刊誌)で沖縄特集が組まれた。表紙には文芸誌らしからぬタイトルが載っている。
「沖縄 南西諸島 急激に進むミサイル基地化 本土も組み込まれる列島ミサイル・ライン」。冒頭の23ページの特集だ。
私が以前講演したものを基にしているが、写真が50枚以上、地図、INF中距離核戦力全廃条約、スタンド・オフ防衛能力に5兆円などの資料がずらりと前後左右に配置されている。南西諸島・ミサイル危機現状把握早わかり決定版のような素晴らしい出来だ。もちろんこれは私の力ではない。文芸思潮の五十嵐編集長(作家)の企画・構成力だ。

五十嵐氏はこの特集号を刷り増しし、全国会議員に配った。衆議院が465人、参議院が248人。合わせて713人。それとは別に緒方を学堂会に講師として推薦してくれたのだ。

私の講演は要約すると、馬毛島(まげしま)から与那国まで1200キロの距離に浮かぶ島々がミサイル基地だらけになる、自衛隊は住民対策など考えていない、島嶼防衛は最初から無理と判断し、住民は戦争前夜の危機を感じている、という話だ。

鹿児島県に属する馬毛島から日本列島の西端・与那国までの距離はちょうど青森から山口まで、本州と同じ長さだ。ロシアとフィンランド国境が1340㎞で、タイガの森と人口のまばらな農村地帯だ。そこがNATOの対ロシア最前線となる。ロシアにとっては北欧諸国にぐるりと取り囲まれた形だ。
では1200キロに及ぶ南西諸島は何か?中国にとってははるか沖に並ぶ敵の空母群、海中から狙う魚雷群に映る。海南島の原子力潜水艦が太平洋に出ようとしても南西諸島のミサイル・ラインが妨害している。中国は第一列島線と呼んでいる。
このラインは台湾を経てフィリピン、ボルネオ島に伸びている。我々日本人の思考範囲は与那国島で停止しがちだが、台湾からわずか350キロ南方にはフィリピンのルソン島が位置している。(ここには二つの基地があって、米国は当然この基地の使用を狙っている。)

馬毛島からわずか12キロの対岸に種子島がある。ここには基地建設労働者が集中し、宿が取れない状況だそうだ。近く馬毛島に3000人収容の宿舎を作るらしい。大滑走路を整備し、南西諸島全体をサポートする兵站基地が出来上がる。無人島だから島民の反対はない。

第二次世界大戦中、奄美大島は隣の地獄の沖縄戦とは無縁だった。米軍としては、奄美大島は山が多く、滑走路の面積が取れないため、占領しても無駄と分かった。そこで沖縄と切り離して早期に「復帰」がかなった。負け戦の日本軍の醜い姿も、奄美では実感がない。そのため、今でも自衛隊に対する住民の反発も少ない。自衛隊入隊も、警察や消防に勤務するつもりで入る若者がいる、という。
私の勘では、馬毛島・奄美大島・徳之島あたりが自衛隊の南西諸島司令部の本拠地となり、沖縄島をはじめとする離島のごちゃごちゃからは離れて、勝手に机上計画にふけるのではないか。ここは反対運動が少なくてやりやすい。

東京からは遠い日本の南西の端の話だが、以上のようなことを話すと初めて聞いた、と驚かれる方が多い。これからも関東近郊での講演・写真展が予定されているので。おおいに南西諸島の危機、いや日本の危機をアピールしていきたい。

それにしても西部方面総監部のある健軍飛行場から飛び立ったヘリコプターが、宮古島沖で墜落した事件は何だったのか?幹部5人が同時に乗っていた。西の伊良部島、すぐ隣の下地島の3000m飛行場を視察するつもりだったことは間違いない。墜落したのが4月6日、3か月以上たっても4人が行方不明、6人の死亡が確認されただけ。(時を同じくして韓国方面で演習中のF16が2機「不時着」し、8日間も駐機していた。異例の出来事だ。)
だいたいがプロ野球チームでも主力選手は同じ飛行機には乗らない。エンターティンメントの世界でもそれだけのプロ意識があるのに自衛隊はどうなってるんだ。健軍小学校出身の私としては地元・西部方面総監部のたるみに腹が立つ。中国を敵視する以前に、自らの堕落した精神を叩きなおせ。

緒方修(東アジア共同体研究所 琉球沖縄センター顧問)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

以下の注意事項をご確認の上、良識あるコメントにご協力ください

  • コメントをいただいてから掲載まで、お時間をいただくことがございます。
  • 各コメントに対して当会より個別の返信はおこないません。回答を必要とする当会へのお問合せは、お問合せフォームにてお受けいたします。
  • 当会の目的や参加者の交流促進に寄与しないと当会が判断したコメントは、掲載を見送らせていただく場合がございます。
  • 投稿コメントの公開を希望しない場合は、コメントの記入欄にその旨ご記載ください。また、お名前のみ公開を希望しない場合、お名前欄にペンネームをご記入ください。

*