メルマガ147号

今回のメルマガは新垣邦雄さんからの投稿です。今年度に入ってから県の自治体外交が本格展開しています。沖縄を戦場にしないための積極的取り組みは、なりふり構わぬ日本政府の南西諸島軍事強化に対するブレーキとなり得るものです。本稿でこの点について言及しています。ぜひお読みください。

玉城知事訪中 - 日中友好を求める

対話による地域の平和を 

玉城デニー知事は7月5日、北京で李強首相と会談した。河野洋平会長率いる日本国際貿易促進協会(国貿促)の「訪中代表団顧問」の肩書で、中国ナンバー2の首相と河野会長と横並びで会談する厚遇を得た。会談で知事は「日本と中国の友好関係に貢献したい。対話によって地域の平和が保たれるようにしたい」と伝えたと報道された。玉城知事は台湾の訪問も予定している。「沖縄を戦場にしない」ための地域外交が大きく動き出したことを評価し、期待したい。
 公式の場で言葉にしては踏み込まなかったものの、玉城知事の念頭には「台湾有事の緊張緩和」があり、その思いが李首相、中国政府に伝わったことは間違いない。具体的な要請事項として知事は中国からの観光誘客のため「ビザ取得手続きの簡素化、直行便の復旧」を要請し、李首相は「民間交流の重要性についてはよく知っている。沖縄と福建省の交流を支持したい」と応えた。国同士の関係が冷え込む中で、中国との歴史、文化の関係が深い沖縄県知事が中国要人とエールを交換した意義は大きい。

自民党重鎮の責任
 一方、河野会長は6日に中国外交トップの王毅氏と会談し、王毅氏は「日本は台湾問題で一連のマイナスの動きが見られる」と批判したと共同通信が報じた。河野元衆院議長は日本の安保3文書改定、敵基地攻撃能力保有を強く批判している。岸田政権が台湾問題への関与姿勢、琉球列島のミサイル要塞化を強引に進める中で、河野氏、福田康夫元首相ら「日中平和外交」を重視する重鎮らが関係改善へ果たすべき責任も大きい。
 県副知事の韓国済州島訪問に続く玉城知事の訪中は、日米がのめり込む琉球列島のミサイル要塞化、軍事緊張の高まりを、自治体外交により可能な限り平穏な関係に引き戻す試みだ。知事訪問に対する中国政府の厚遇ぶりに、政府は「中国が日米関係にくさびを打とうとしているとの警戒感が漂う」(琉球新報)という。メディアにも「習近平指導部が「沖縄」で揺さぶり」(産経新聞)など、冷ややかに見る向きがある。中国に対し好戦的な政府や一部メディアは、沖縄県政、玉城知事の対話による「平和構築」の努力を、あたかも「日米関係に水を差し、琉球列島(南西諸島)の軍備(防衛)強化を邪魔するもの」と見ていのだろう。

対話なき軍備強化・戦争準備
 改めて指摘しておきたい。米バイデン大統領は中国を「軍事、経済の唯一の戦略的競争相手」、日本政府も国家安全保障戦略で「中国は最大の戦略的挑戦者」と位置づけ、中国に対する軍事、経済の敵視・排除政策に奔走している。再三、記するように、日米の「ミサイル要塞化」の渦中に置かれる沖縄は、「台湾問題」が「戦争」に陥れば、「ミサイル戦争」の犠牲の当事者となる可能性が大きい。日米政府の無謀な戦争準備に対し、沖縄県民、県政、玉城知事は必死の思いで「戦争回避」の「平和外交」を訴えているのだ。対話なき「軍備強化=戦争準備」に前のめりの政府、防衛省、一部メディアに、平和を求める沖縄県民、県政、県知事の「平和外交」の努力を批判、冷笑する資格はない。
 自治体外交には限界がある。「外交、防衛は政府の専管事項」ではないが(主権国民、地方自治の立場で物言う権利はある)、日本の中の「一自治体」、県知事として「台湾問題」、「尖閣」問題には踏み込み難い側面がある。外交、軍事問題の責任ある当事者、機関ではないからだ。一義的には直接当事者・機関の政府、外務、防衛の省庁に託さざるをえない。
 副知事、知事の韓国済州島、中国訪問時の言説に関し、「基地問題、尖閣問題に言及していない」という批判が沖縄の新聞含め、メディアで報道されている。「尖閣」について、「日中で棚上げにされている」、紛争に陥らない「日中の危機管理システムを順守せよ」といった言及は可能かもしれないが、政府、外交当局の役割と責任に踏み込む発言との批判も免れないだろう。中国李首相に知事が伝えたように「対話によって地域の平和が保たれるようにしたい」というのが精一杯ではないだろうか。それをどう実現するかは、まさに中国政府、日本政府の責任というべきだろう。誰も戦争を望まない。日本の一県知事の立場で、可能な限り「平和構築」を要請をしたものと受け止めたい。


東アジア「軍縮」論理構築を
 副知事の韓国訪問、知事訪中を総括し、7月9日琉球新報が小松寛氏(成蹊大)の論評を載せている。小松氏は次のように述べている。小松氏は台湾有事を回避する「台湾対話プロジェクトのメンバーでもある。
 「沖縄の基地問題は一義的には日本の国内のどこに米軍基地を置くかという問題であり、日米間で協議すべき問題だ。他国に『沖縄の基地問題をなんとかしてほしい』と訴えても、相手側は戸惑うだけだろう」。「今回の訪中で知事は李首相、メディアのインタビューで『対話による平和が重要』であることを地方政府の長として強調した。沖縄から明確なメッセージを発信した意義は大きい」とする。
 その上で小松氏は「今後は軍縮が沖縄だけでなく東アジア全体にとってメリットがあるとの論理を構築・強化する必要がある」と指摘している。
 日米政府は琉球列島だけでなく、韓国やフィリピンも「中国軍事包囲網」に巻き込もうと圧力を強めている。NATO、オーストラリアも陣容に加わり、インドも巻き込もうとしている。中国敵視の軍事包囲は、「抑止」が破綻すれば東アジアを戦火に巻き込むことになるだろう。小松氏が提起する「軍拡でなく軍縮を」の論理構築は、東アジアの平和のために各国が直面し、考えるべき喫緊の課題だ。沖縄県政、玉城知事に「軍拡でなく軍縮を」の論理構築と発信を求めたい。
 玉城デニー県政は韓国済州島訪問に続いて中国を訪問、台湾訪問も予定し、無益な「台湾有事」軍事対決から戦争回避の道筋を探る自治体外交を本格始動した。米国が扇動し日本が追随する「軍備強化」一辺倒から、沖縄県が「軍縮」「国際対話」、「戦争回避」の橋渡しを担うことを期待する。
 照屋義実副知事が6月3日に韓国済州島を訪問。そのお返しにとばかり、済州島からの訪問一行が6月23日から24日に沖縄を訪れた。交流会では「米海軍基地と第二空港建設に反対」がアピールされ、韓国国内でも米軍や韓国軍の軍備増強に済州島ほかの市民が反対の声を上げていることが分かった。沖縄と韓国、済州島は軍備強化の同じ重圧を背負っていることを新聞が報道した意義が大きい。
 玉城デニー知事が7月6日から7日、中国を訪問した。李強首相らと会談し、ビザ手続きの簡素化、経済交流の活発化を確認した。2022年度の中国から沖縄への観光客数は9千人。直行便の再開により中国から多くの観光客が来県し、沖縄の観光経済に寄与することを期待する。

新垣邦雄(当会発起人)

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