メルマガ89号

今回は「南西諸島軍事強化トピック」です。毎日更新している沖縄「戦前新聞」の情報を当会発起人の新垣邦雄さんに解説していただいています。年初から二紙とも台湾金門島の特集が組まれ、南西諸島軍事強化関連の記事は毎日途切れることはありません。一方、県の新たなミサイル配備計画への反対の動きが報じられるという大きな動きが出てきました。毎日更新していますアーカイブと合わせてぜひ解説をお読みください。
 沖縄「戦前新聞」をどこでみたらいいかわからないという声をいただいています。今後先頭ページに最新の更新を掲載します。なお記事検察は現在パソコン画面でできます。過去アーカイブはこちらのURLをクリックしてください。
https://nomore-okinawasen.org/category/prewar/

(以下再掲です。ご確認ください)
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南西諸島軍事強化トピック(1月1日~1月8日)

◇追う南西防衛強化 防衛研「中国と長期戦想定」 抑止力 最悪シナリオ回避 防衛研究所防衛政策研究室長 高橋彬雄氏に聞く(琉球新報 2023.1.3)
◇戦況次第で民間人被害も(琉球新報 2023.1.3)
◇2000~3000キロ 長射程弾開発 防衛相調整、30年代目標(琉球新報 2023.1.3)

長期戦、ウクライナのように破壊
 琉球新報は元旦号で「防衛研究所 中国と長期戦想定」をスクープ。3日付で防衛省シンクタンク・防衛研究所防衛政策研究室長高橋杉雄氏のインタビューを詳報した。前回のトピックと重複するが重要なので再確認したい。防衛省は「防衛・抑止」が万全のごときに喧伝しているが「防衛・抑止」が破綻し「長期の戦争」となることを想定。住民被害、ウクライナのような惨状がありうるとの認識を示している。

飛行場、港湾がミサイル攻撃
 新報記者の質問Q「台湾有事で南西諸島にどのような影響があるか」
 高橋室長「中国が米軍の介入を阻止するため、南西諸島の飛行場や港湾をミサイルで攻撃すると考えられる。民間も含め、軍事的に使用できる施設が対象になる」
 Q「ミサイル攻撃を前提に戦い続ける戦略だが、住民の被害が生じるのではないか」
 室長「中国は米軍や自衛隊の飛行場や港湾をピンポイントで狙える」「民間人の巻き添え被害はほとんど出ない」「軍事目標施設の民間人が巻き込まれる可能性はある」
 Q「長期戦に持ち込むことを提言するのはなぜか」
 室長「ミサイル攻撃の能力で短期決戦は中国が有利。半年~1年時間を稼げば米軍が駆け付け日米が有利になる」
 Q「膠着状態に持ち込んでも戦闘は続くのではないか」
 室長「長期戦のリスクはある。勝利しても地域全体が、台湾を含めウクライナのような破壊を受ける可能性が高い。だから抑止が必要だ」
 Q「防衛体制強化が有事のリスク、地元負担を高めるのではないか」
 室長「準備するほど抑止力は高まる。最悪のシナリオが起こらない可能性が増える。その準備自体に負担やリスクが伴うのも確か。二つの難しい選択があり明確な答えはない」

巻き添え「ほとんど出ない」
 ポイント① 戦争はどのように始まるか⇒「中国が米軍の介入を阻止するため南西諸島をミサイル攻撃」⇒米軍の台湾有事への介入準備が戦争の発端になる。
 ポイント② 住民被害は⇒「中国ミサイルは正確なので民間巻き添えはほとんど出ない。軍事施設の民間人は巻き込まれる可能性」⇒ 民間人も被害に遭う。
 ポイント③ 長期戦⇒「短期戦は中国有利。半年~1年で米軍が駆け付ける」
 ポイント④ さらに戦闘続く⇒「長期戦のリスク。地域全体がウクライナのような破壊受ける可能性高い」⇒台湾、南西諸島がウクライナのような戦場になる。

住宅地に落ちる可能性
 なにをかいわんや、である。米軍の介入を阻止するために中国の攻撃が想定されるなら、米軍に「介入するな」と言えばよい。台湾と中国の内戦に日米が介入するから戦争に巻き込まれる、と自認するようなものだ。半年~1年、それ以上の長期戦で南西諸島がウクライナのような惨状になると想定している。「中国のミサイルはピンポイントだから(軍事施設以外の)住民被害は少ない」と言う。あまりに無責任だ。「文芸春秋」4月号で軍事専門家が「攻撃対象は沖縄の基地とは限らない。北海道、宮城、青森の自衛隊基地にもミサイルは飛んでくる。しかも、中国のミサイルはあまり精度が高くないので、軌道が逸れて近隣の住宅地に落ちる可能性がある」と指摘している。

リスク「明確な答えない」
 ポイント⑤ 防衛強化で有事のリスク高まる⇒「準備(防衛強化)自体にリスクが伴うのは確か。難しい選択で明確な答えない」⇒出たとこ勝負で行くしかない。
 「防衛・抑止強化で戦争になることはない」と言いきれていない。「抑止が破綻すれば長期戦覚悟。住民の多少の犠牲はやむを得ない」が高橋室長の本音ではないか。

 長期戦になればどうなるか。前記の「文芸春秋」4月号で専門家は日本中がミサイル攻撃にさらされ民間地に被害が及ぶと指摘している。防衛研提言は「長射程ミサイルの大量生産・大量配備」も具申している。「抑止」が破綻し、何年も続く核ミサイル大国中国との戦争に陥れば沖縄、日本はどうなるか。「リスクはあるが明確な回答はない」ではあまりに無責任ではないか。

 回答はある。「戦争の選択肢はない」ということだ。無謀な戦争準備をやめることだ。新報記者は解説で「万が一、抑止が崩れた場合沖縄が標的になる」と書いた。本土の方々は日本全体が火だるまになる心配を自分事として考えるべきだ。

◇2000~3000キロ 長射程弾開発 防衛相調整、30年代目標(琉球新報 2023.1.3)

 防衛省は「2千キロ、3千キロの長射程ミサイル開発」を考えている。歯止めなき軍拡暴走だ。復帰前の沖縄には米軍地対地メースB核ミサイルが配備されていた。メースBの威力は広島、長崎原爆の70倍。「ターゲットは中国の複合工業都市。例えば重慶、武漢、上海、北京など」と『沖縄と核』(NHKスペシャル完全書籍化)」に米空軍報告書を基に記されている。中国はどう反応するだろうか。

河野氏「反撃能力は威嚇」「安倍政治に問題」
 TBS「報道特集」で河野洋平自民党元総裁は痛烈に批判した。「反撃能力は明らかに武力による威嚇。外交努力を抜きに壁だけ建てる。壁ならいいが、壁の隙間から鉄砲を向けて狙うのは本当の安全とは思わない」。「やってはいけないことをはっきりさせるべき。戦争をやらないために何をすべきかを深刻に考えるべきだ」。
 河野氏は「70何年前の決心、決して誤りを繰り返さない。守り続けた政策の転換はありえない」。大転換の起点は安倍内閣。「安倍政治に大きな問題があった」と名指しで批判した。安倍ー菅ー岸田に引き継がれる「戦争をする国」への流れは止めようがないのか。

◇県、ミサイル反対伝達へ 自衛隊増強 軍転協は説明要求(琉球新報 2023.1.7)
◇県 ミサイル反対伝達へ 市町村と足並みそろわず 市部は政府との協調重視(琉球新報 2023.1.7)
◇陸自計画 説明会を要求 新補給拠点 防衛局に沖縄市長(琉球新報 2023.1.7)
◇拒否や容認する立場にない 桑江沖縄市長 一問一答(琉球新報 2023.1.7)
◇「火種の軍備削減必要」 対外問題研究会 日本政府へ提言(沖縄タイムス 2023.1.8)
◇衝突回避策の検証必要 対外問題研究会 提言発表の我部代表(沖縄タイムス 2023.1.8)
 
県、「新たなミサイル計画に反対」へ
 渦中の沖縄に大きな動きがあった。「県は安保関連3文書に関連し、敵基地攻撃能力につながる新たなミサイル計画に反対する方針を固めた」と琉球新報が報じた。月内にも国に要請する、という。玉城デニー知事はこれまで基本的に自衛隊を容認、陸自ミサイル部隊の配備にも反対してこなかった。政府が敵基地攻撃能力保有に転換、長射程ミサイルを配備する方針に「新たなミサイル計画に反対」を打ち出す模様だ。県内、国内に大きなインパクトを与えることになるだろう。併せて県は「自治体外交の司令塔となる『地域外交室』を設ける方針」(新報社説)だ。

 沖縄対外問題研究会は「軍備増強に歯止め」「自衛隊先島配備の中止」「米軍の軍縮」など「台湾有事」回避に向けた政府への提言を発表した(タイムス)。「軍拡」でなく「軍縮を」、「中国敵視でなく対話を」が提言のテーマだ。筆者は「防衛・抑止強化かミサイル基地反対か」公開討論会を新報論壇に投稿、掲載された。
 軍備強化に賛成か反対か、「軍拡」か「軍縮」か、が議論となろう。沖縄からの発信がカギを握るかもしれない。しかし県内の政治、県民世論は一枚岩ではない。

「安全保障は国の専権事項」ではない
 防衛省は沖縄市の自衛隊基地内にミサイル弾薬の備蓄・補給拠点の新設を計画している。桑江朝千夫市長は、計画の是非について「安全保障上、国の専権事項であり私が拒否や容認する立場にない」との見解だ。戦争になればミサイル基地やミサイル弾薬庫が攻撃のターゲットになることは素人にも分かる軍事の常識だ。市民の福祉を預かる首長として無責任のそしりを免れない。
 筆者は機会あるごとに識者に「防衛、安全保障は国の専権事項か」と質問してきた。「命の安全に関わる問題に国民は物を言う権利がある」というのが回答だ。憲法学者の高良鉄美参院議員は加えて「県知事、自治体首長は県民、住民の安全を守る立場から主張するべきは主張する責任がある」と述べられた。
 政府、防衛省は沖縄住民の犠牲を前提に戦争準備を進めている。県民が黙っていては止まらない。県知事、自治体首長、議員、政治家の責任は重い。

 1月3日(火) https://nomore-okinawasen.org/4787/

世代、党派超え戦争NO 命どぅ宝の会 全県組織向け議論 (琉球新報 2023.1.3)
自衛隊南西シフトを問う 安保「最前線」の現場から 配備増強「島が要塞化」 経済発展 実感なく 与那国の苦悩㊤(琉球新報 2023.1.3)
自衛隊南西シフトを問う 安保「最前線」の現場から 「実戦」部隊配備に困惑 与那国の苦悩㊤(琉球新報 2023.1.3)
追う南西防衛強化 防衛研「中国と長期戦想定」 抑止力 最悪シナリオ回避 防衛研究所防衛政策研究室長 高橋彬雄氏に聞く(琉球新報 2023.1.3)
台湾有事懸念95% 首長37人「危険高まっている」 県内市町村長アンケート 政府外交努力「不十分」80% (沖縄タイムス 2023.1.3)
再び戦場 7割が危機感 41市町村アンケート  南西諸島の軍備強化 有事へ「必要」70%  / 自治体交流への期待 県の独自外交「有効」69% (沖縄タイムス 2023.1.3)
住民説明 決定機 負担増押しつける政府 / 防衛力強化の影響 緊張を「高める」56% (沖縄タイムス 2023.1.3)
2000~3000キロ 長射程弾開発 防衛相調整、30年代目標(琉球新報 2023.1.3)
反撃力強化、なし崩し加速 / 米軍が連携強化検討 自衛隊・統合司令部受け(琉球新報 2023.1.3)
戦況次第で民間人被害も(琉球新報 2023.1.3)
避難要領策定、国・県も協力も 識者談話 国民保護県内自治体調査 中林啓修氏(琉球新報 2023.1.3)
社説 沖縄問題解決へ発信を 「ポスト復帰50年」に(沖縄タイムス 2023.1.3)

1月4日(水)https://nomore-okinawasen.org/4807/

自衛隊南西シフトを問う 安保「最前線」」の現場から② 台湾から響く演習音 募る不安、見えぬ安全策 与那国の苦悩㊦ (琉球新報 2023.1.4)
追う南西防衛強化 「南西シフト」糸数与那国町長に聞く 住民保護は行政の責務(琉球新報 2023.1.4)
社説 軍備増強の流れに対峙を(琉球新報 2023.1.4)
時事漫評 ミサイル外交しかないの?(沖縄タイムス 2023.1.4)

1月5日(木)https://nomore-okinawasen.org/4826/

自衛隊南西シフトを問う 安保「最前線」の現場から3 港周辺の軍事拠点化加速 奄美の危機感 「他国を刺激」住民葛藤(琉球新報 2023.1.15)
与那国司令部も地下化 陸自駐屯地 戦闘継続へ強化検討(琉球新報 2023.1.5)
台湾有事「リスクもどき」 今年の十大危機 米調査会社報告 米中の経済依存背景に(沖縄タイムス 2023.1.5)
冷静なリスク検証必要 台湾有事 高いハードル 米調査会社が報告書(沖縄タイムス 2023.1.5)
安保3文書に沖縄から抗議 ロシアの侵攻も批判(沖縄タイムス 2023.1.5)
安保3文書 100人が抗議 平和運動センター(琉球新報 2023.1.5)
台湾有事 対中圧力で難題 日米会談の課題 核廃絶訴えに矛盾(沖縄タイムス 2023.1.5)
西之表市長のリコール断念 署名足りず 馬毛島巡り(沖縄タイムス 2023.1.5)
社説 「持久戦」の再現許すな (琉球新報 2023.1.5)
日米首脳会談、13日に会談 新安保戦略で同盟強化(沖縄タイムス 2023.1.5)
「南シナ海問題 友好的に対処」 中比、開発交渉再開へ(琉球新報 2023.1.5)
南シナ海対話で合意 中比、14文書を締結(沖縄タイムス 2023.1.5)

1月6日(金)https://nomore-okinawasen.org/4848/

自衛隊南西シフトを問う 安保「最前線」の現場から 有事利用へ日米一体 地ならし進む徳之島(琉球新報 2023.1.6)
移転三原則 指針改定へ 防衛装備 殺傷武器輸出が焦点(琉球新報 2023.1.6)
台湾有事は喫緊の課題か(上) 内田雅敏 無責任な「有事」喧伝 日中間に四つの基本文書(琉球新報 2023.1.6)
馬毛島 遺跡で工事申請 防衛省 自衛隊基地建設 影響も(沖縄タイムス 2023.1.16)
論壇 これでいいのか沖縄予算 一括計上の悪循環脱却を 宮田裕 (琉球新報 2023.1.6)
中国 比に3兆円投資 南シナ海交渉再開へ 共同声明発表(沖縄タイムス 2023.1.6)

1月7日(土)https://nomore-okinawasen.org/4862/

県、ミサイル反対伝達へ 自衛隊増強 軍転協は説明要求(琉球新報 2023.1.7)
県 ミサイル反対伝達へ 市町村と足並みそろわず 市部は政府との協調重視(琉球新報 2023.1.7)
自衛隊南西シフト 安保「最前線」の現場から 事前説明ほご オスプレイ着陸(琉球新報 2023.1.7)
陸自計画 説明会を要求 新補給拠点 防衛局に沖縄市長(琉球新報 2023.1.7)
拒否や容認する立場にない 桑江沖縄市長 一問一答(琉球新報 2023.1.7)
台湾有事は喫緊の課題か 下 内田雅敏 棚上げ「政治の知恵」自民幹部の訪台は中国挑発(琉球新報 2023.1.7)

1月8日(日)https://nomore-okinawasen.org/4884/

論壇 防衛・抑止強化かミサイル基地反対か 公開討論会で徹底議論を 新垣邦雄 (琉球新報 2023.1.8)
「火種の軍備削減必要」 対外問題研究会 日本政府へ提言(沖縄タイムス 2023.1.8)
衝突回避策の検証必要 対外問題研究会 提言発表の我部代表(沖縄タイムス 2023.1.8)
社説 戦争させない施策展開を(琉球新報 2023.1.8)
金門島 中台のはざまで 軍事最前線 進む経済交流(琉球新報 2023.1.8)
金門島 中台のはざまで 砲弾で包丁 特産品に(琉球新報 2023.1.8)
意外と知らない「有事」の話 金門編 上  発展へ共存望む島 中国砲撃「過去の話」(沖縄タイムス 2023.1.8)
意外と知らない「有事」の話 台湾独立志向で来島減る 隣接の中国と往来開放(沖縄タイムス 2023.1.8)
台湾海峡を通過 過去4年で最少 米軍艦艇、22年9隻(琉球新報 2023.1.8)
国会で安保批判 共産アピールへ 統一選で反政権票狙う(沖縄タイムス 2023.1.8)
父とミサイル(琉球新報 2023.1.8)

文責:新垣邦雄(ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 発起人)

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