メルマガ88号

「復帰50年」は南西諸島軍事強化が急速に進み、「第二沖縄戦」を危惧する声が高まり、体験者からも戦争への不安の声をこれまでになく多く聞かれる年になってしまいました。「軍隊は住民を守らない」「軍隊は住民を利用する」、この沖縄戦からの大きな教訓をあらためて肝に銘じ、戦争への警鐘をならし「島々を戦場にしない」ために声を上げ、動いていきましょう。2023年も引き続きご支援のほどお願いいたします。 

 今回は「南西諸島軍事強化トピック」です。毎日更新している沖縄「戦前新聞」の情報を当会発起人の新垣邦雄さんに解説していただいています。年初から「中国と長期戦想定」、「軍拡、県民しわ寄せ」「進む南西防衛強化 「台湾有事」 沖縄も巻き込まれる恐れ」「部隊配備も続々 安保政策の大転換」と軍事強化記事が並び、さらに戦争へ突き進む状況を感じさせます。政府のフェイクに惑わされず、あらためて今何が起きているのかをつかんでいくために、ぜひ解説と、記事をお読みください。

南西諸島軍事強化トピック(2022年12月26日~2023年1月1日)

◆中国と長期戦想定 「残存兵力で海上阻止」 防衛研提言 沖縄攻撃を前提 安保3文書先取り(琉球新報 2023.1.1)
◆自衛隊拡大 最終局面に(琉球新報 2023.1.1)
◆軍拡 県民しわ寄せ 県内の自衛隊配備と米軍基地 空港・港湾の軍事利用も(琉球新報 2023.1.1)
◆進む南西防衛強化 「台湾有事」 沖縄も巻き込まれる恐れ 安保関連3文書 自衛隊 ◆部隊配備も続々 安保政策の大転換(沖縄タイムス 2023.1.1)
◆2023年度以降に配備予定の自衛隊部隊など(沖縄タイムス 2023.1.1)
◆ルポ 与那国日米演習 「安心」「挑発」 国境の島揺らぎ(琉球新報 2023.1.1)

「亡国の安保計画」
 元旦号の琉球新報、沖縄タイムス両紙が、台湾有事・沖縄戦場化の懸念を特集報道した。軍事(安保)3文書決定を踏まえ、沖縄の戦争が迫りつつあるという危機感が伝わる。台湾有事で「米国が介入した場合、同盟関係にあり在沖米軍基地が集中する沖縄は標的となり『巻き込まれ』の懸念が高まっている」(タイムス)、前泊博盛沖縄国際大学教授は3文書を「沖縄が戦場として想定され(略)沖縄戦を戦った日本軍『32軍』の再来を想起させる布陣、増派」「なぜ沖縄が戦場にならねばならないのか」、「亡国の安保計画」(新報)と切り捨てた。「防衛」の名の下に「日本全体の防衛のしわ寄せが県民へと向かう」(新報)と県民は受け止めている。

防衛省シンクタンク「中国と長期戦」
 政府、防衛省は「抑止力、防衛強化で敵国の攻撃を思いとどまらせる」との公式見解を崩していない。新報は元旦号で、防衛省のシンクタンク・防衛研究所が「中国との長期戦」を想定する提言を行なっていることを特報した。「中国からのミサイル攻撃を受けることを前提に、残存兵力で中国を海上で封鎖する戦略を提言」したという。

 インタビューに応じた高橋杉雄・防衛研究所防衛政策研究室長の説明をそのまま引こう。高橋氏は、台湾有事で中国が米軍の介入を阻止するために南西諸島の飛行場や港湾をミサイルで攻撃することを想定した上で、
「中国のミサイル攻撃をそのものを阻止するのは難しい」。「攻撃を受ける地域の一つとして南西諸島が想定される」。懸念される住民への被害については「中国は非常に精密な攻撃能力がある。被害は米軍や港湾に収まり、沖縄戦のように民間人が巻き込まれることはほとんどないだろう」とのたまわれる。

 新報記事は「攻撃を受けながらも対艦攻撃などで海上で足止めし、台湾や尖閣へ上陸を防ぐことで日米側の『現状維持』という目的を達成するという考え方に立つ」。また「半年~1年『時間を稼ぐ』ことができれば他地域に展開している米軍が駆け付け、中国の行動を阻止できるとの算段」と解説している。

沖縄の戦場化を想定
 いくつか重要な点を整理しておきたい。①米軍が台湾有事に介入するのを阻止するため中国が南西諸島をミサイル攻撃する②ミサイル攻撃そのものを阻止するのは困難③中国軍を海上で半年~1年足止めする④その間に米軍が応援に駆けつけてくれる④中国軍攻撃(ミサイル)は精密に港湾、空港を攻撃するので住民の被害は少ないーとの認識である。

 くどいようだが防衛省シンクタンクが沖縄南西諸島の陸上、海域が戦場となることを想定していることは極めて重大だ。しかも些少としながら住民被害を想定している。さらに戦争は少なくとも半年~1年、あるいはそれ以上の長期戦を想定している。中国軍の攻撃を想定、それに応戦することを既定の方向性と考えている。高杉室長は「長期戦のリスク」を認め「日本だけでなく台湾を含めた地域全体が(ロシアに侵攻されて戦闘が続く)ウクライナのような破壊を受ける可能性がある」と述べている。沖縄だけでなく日本本土を巻き込む戦争の泥沼化、甚大化をも想定していると読み取れる。

 新報・明真南斗記者は同提言と安保3文書の関連についても切り込んだ。確かに重なる点が多い。高杉室長は、3文書との直接的な関与は否定した、という。とはいえ防衛省シンクタンクの提言が無関係なはずはない。

中国の攻撃能力は精密-住民被害少ない
 沖縄側からの問題点、異議申し立ては「沖縄を戦場に想定する戦争計画は受け入れられない」こと。「中国の攻撃能力は精密だから住民被害は少ない」という詭弁は通用しないこと。そもそも住民の犠牲を前提とする安保計画は論理矛盾であり言語道断であること。前泊教授が指摘するように「亡国の安保計画」にほかならない。

 日米中の戦闘が半年~1年も続くと想定するが、防御不能、敵国の首都にも届く長射程弾を撃ち合うミサイル戦争は相互破滅、核戦争にすらエスカレートする懸念はないのか。
 防衛省は石垣市議らが「攻撃を受ける事態を想定しているのか」と質したのに対し、「仮定の質問には答えられない」と回答を拒否した。防衛省、シンクタンクは県民、国民の懸念に正面から向き合い答える責任がある。

◆安保3文書 県選出議員に聞く 国場幸之助 赤嶺政賢(琉球新報 2022.12.27)

自民党国防部会長は国場幸之助氏
 自民党の国防部会長・国場幸之助衆院議員のインタビューが地元2紙に載った。沖縄選挙区の議員(選挙区衆院選挙で連敗、比例復活)である。「自民党の国防部会長として3文書策定の与党実務者協議に携わった」(タイムス・12月25日)。インタビューの内容より先に自民党国防部会長に国場氏が就任していたことに驚いた。

 国場氏は「二度と沖縄が戦争に巻き込まれないため、防衛力整備は不可欠。県民の命を守るため対処能力の向上は必要」「中国は沖縄などを射程に入れる弾道・巡航ミサイルを2千発以上配備。日本と在日米軍は配備していない。不均衡こそリスク。防衛力整備が沖縄を標的にさせない抑止力になる」「自衛隊配備は地元の合意形成が極めて重要」(タイムス)などと述べられている。

 失礼ながら国場氏が軍事・防衛の専門家とは知らなかった。軍事専門家の小西誠氏に意見をうかがうと「沖縄の第2段階の凄まじい軍事化―住民避難態勢―シェルターづくり、これらの『県民合意づくりの先兵』」との見方である。筆者は「防衛強化は沖縄を守るために必要」と県民を説得し、国民向けには「沖縄の国会議員が自民国防部会長として沖縄防衛強化を唱導、県民も納得している」という宣伝のための抜擢ではと疑っている。
 ともかくも政権与党の国防部会長の責任ある公的な立場であり、「地元の合意形成が重要」との認識に基づき地元への説明の責任を果たしてもらいたい。

◆自衛隊強化「評価せず」52% 本紙ウェブアンケート(沖縄タイムス 2022.12.29)
◆防衛力強化 評価に違い 若い世代 支持の傾向 本紙ウェブアンケート(沖縄タイムス 2022.12.29)
◆防衛実態 十分認識されず 佐藤学沖縄国際大学教授(沖縄タイムス 2022.12.29)
◆追う 南西防衛強化 避難 見えぬ実効性 国民保護 市町村調査 自衛隊の協力は限定的 市町村、情報不足訴え(琉球新報 2022.12.31)

「防衛強化か基地反対」か公開討論を
 県内の自衛隊強化を「評価しない」、「どちらかといえば評価しない」52・1%。「評価する」、「どちらかと言えば評価する」46.8%。反撃能力保有に「賛成(どちらかといえば含め)」47%、「反対(同)」51.9%と拮抗している。沖縄タイムス読者対象のウェブアンケートの回答結果である。かろうじて「評価しない」「反対」が過半数だが、社会面記事には「年代別では20代、30代で防衛力強化『評価』、反撃能力に『賛成』が上回っている」とある。「戦争を知らない世代」が防衛強化を支持する傾向にある。佐藤学沖国大教授は「防衛実態 十分認識されず」の見出しの通りに、若者世代の関心の低さ、知識不足を要因に分析している。

 新報「国民保護 戸惑う自治体」は「避難に必要な運航事業者の輸送能力を把握していない」が63%。「市町村 情報不足訴え」の見出し。市町村の回答では「有事にならない外交努力を」(宜野湾市ほか)の意見が目立った。
 「抑止力・防衛強化」か「ミサイル基地反対」かで県民が割れている。事は沖縄が戦争になるのか県民の生き死にに関わる問題であり、事実を見極めることが大事だ。

 ノーモア沖縄戦の会が年末に開いた集会で、この問題の討論会を開いてほしい、若者が関心を抱く「沖縄の将来ビジョン」も併せて提示してほしい、という声が上がった。

 「抑止力・防衛強化かミサイル基地反対か」の公開討論会を提起したい。自民党国防部会長の国場氏にぜひ参加し「ミサイル基地は沖縄を守るために必要」という持論を開陳していただきたい。防衛3文書を「備えあれば憂いなし」と賛同する西銘恒三郎前沖縄担当相には、自衛隊・米軍と共存共生する沖縄の将来ビジョンを語っていただきたい。
 ミサイル要塞化を憂える側からは、基地なき沖縄の将来ビジョンを提唱される前泊沖国大教授、沖縄のミサイル要塞化を危惧する小西誠さんらにご参加を呼びかけたい。
 

12月26日(月)https://nomore-okinawasen.org/4682/

◆防衛予算強化 省庁またぎ インフラ費、自衛隊使用条件か(琉球新報 2022.12.26)
◆振興予算頼らぬ制度を 基地問題で抵抗できない 沖国大 佐藤学氏に聞く(琉球新報 2022.12.26)

12月27日(火) https://nomore-okinawasen.org/4692/

◆新たな自衛隊配備「反対」 県、政府へ要請検討(沖縄タイムス 2022.12.27)
◆空港使用「制限は困難」米軍・自衛隊に許可 県、団体に回答(琉球新報 2022.12.27)
◆ニュース回顧2022 南西シフト要塞化進む 日米演習 「キーンソード」(琉球新報 2022.12.27)
◆陸自の補給拠点 年明けに説明へ 防衛省、沖縄市に / 「配備ありきは不安広がる」(琉球新報 2022.12.27)
◆沖縄戦の再来を拒否する(琉球新報 2022.12.27)
◆ドローンの禁止 米軍4施設追加(沖縄タイムス 2022.12.27)
◆安保3文書 県選出議員に聞く 国場幸之助 赤嶺政賢(琉球新報 2022.12.27)

12月28日(水)https://nomore-okinawasen.org/4704/

◆国、ミサイル計画認める 与那国 住民説明予定なし 知事、配備容認せず(沖縄タイムス 2022.12.28)
◆住民への説明会「自治体と調整」 自衛隊増強で防衛省(琉球新報 2022.12.28)
◆「防衛増税前に解散」 首相、具体的時期触れず(琉球新報 2022.12.28)
◆軍備増強に徹底論議を 年末回顧2022 思潮 高良沙哉(沖縄タイムス 2022.12.28)

12月29日(木)https://nomore-okinawasen.org/4717/
◆自衛隊強化「評価せず」52% 本紙ウェブアンケート(沖縄タイムス 2022.12.29)
◆防衛力強化 評価に違い 若い世代 支持の傾向 本紙ウェブアンケート(沖縄タイムス 2022.12.29)
◆防衛実態 十分認識されず 佐藤学沖縄国際大学教授(沖縄タイムス 2022.12.29)
◆県、米須鉱山採掘を許可 業者、来月4日にも着手 戦没者遺骨土砂問題(沖縄タイムス 2022.12.29)
◆激戦地土砂 3月にも採掘 糸満 県、業者再届け受理(琉球新報 2022.12.29)
12月30日(金)https://nomore-okinawasen.org/4734/

◆復帰50年 課題なお 2022年県政回顧 基地問題解決 政府に要求 県と政府が記念式典 / 日米一体化鮮明に 南西諸島の自衛隊強化(沖縄タイムス 2022.12.30)
◆専守防衛は人類の叡智 <寄稿>安保関連3文書決定と憲法 小林節(沖縄タイムス 2022.12.30)

12月31日(土)https://nomore-okinawasen.org/4747/

◆意外と知らない「有事」の話<プロローグ> 最前線の島 均衡重視「同じ民族」住民危機否定中国福建省近く 台湾金門島 (沖縄タイムス 2022.12.31)
◆意外と知らない「有事」の話<プロローグ> 中国からの砲弾 包丁に 「負の遺産」観光支える 忠告福建省近く 台湾金門島(沖縄タイムス 2022.12.31)
◆追う 南西防衛強化 避難 見えぬ実効性 国民保護 市町村調査 自衛隊の協力は限定的 市町村、情報不足訴え(琉球新報 2022.12.31)

2023年1月1日(日)https://nomore-okinawasen.org/4759/

◆中国と長期戦想定 「残存兵力で海上阻止」 防衛研提言 沖縄攻撃を前提 安保3文書先取り(琉球新報 2023.1.1)
◆自衛隊拡大 最終局面に(琉球新報 2023.1.1)
◆軍拡 県民しわ寄せ 県内の自衛隊配備と米軍基地 空港・港湾の軍事利用も(琉球新報 2023.1.1)
◆沖縄の自衛隊関連の出来事(琉球新報 2023.1.1)
◆進む南西防衛強化 「台湾有事」 沖縄も巻き込まれる恐れ 安保関連3文書 自衛隊 ◆部隊配備も続々 安保政策の大転換(沖縄タイムス 2023.1.1)
◆2023年度以降に配備予定の自衛隊部隊など(沖縄タイムス 2023.1.1)
◆ルポ 与那国日米演習 「安心」「挑発」 国境の島揺らぎ(琉球新報 2023.1.1)
◆記者ノート 増強する自衛隊問い直す(琉球新報 2023.1.1)
◆県面積8.5%が軍施設 全国一 本島では15%(琉球新報 2023.1.1)
◆県に「地域外交室」 23年度 アジアと交流促進(沖縄タイムス 2023.1.1)
◆沖縄を平和の拠点に 玉城デ二―知事に聞く 自衛隊増強を懸念■中台韓の訪問へ意欲(琉球新報 2023.1.1)
文責:新垣邦雄(ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 発起人)

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