メルマガ72号

今回は南西諸島軍事強化トピックです。毎日更新している沖縄「戦前新聞」の情報を当会発起人の新垣邦雄さんに解説していただいています。先週は「高速滑空弾射程1000キロ 政府、ミサイル多様化検討」「トマホーク取得検討」など、「専守防衛」ということばすら死語になるくらいのミサイル戦争の準備を着々とすすめようとする動きが顕著になってきました。着々とすすめられる軍事強化の動きをつかむために、日毎のURLをクリックしていただき、記事もあわせてご覧ください。

南西諸島軍事強化トピック(10月31日~11月6日)

◇高速滑空弾射程1000キロ 政府、ミサイル多様化検討/トマホーク導入 自民新藤氏賛意「日本防衛に必要」(沖縄タイムス 2022.10.31)
◇防衛装備に新技術転用 政府、研究機関創設へ(沖縄タイムス 2022.11.5)
◇新領域管理 海自に新部隊 宇宙・サイバー・電磁波 情報一元化(琉球新報 2022.11.3)
◇防衛力強化「民間活力も」 首相が方針、装備開発で(琉球新報 2022.11.3)
◇トマホーク取得検討 専守防衛 かすむ理念 反撃能力保有 結論出ぬまま(琉球新報 2022.11.6)
◇社説 専守防衛の逸脱許さない(琉球新報 2022.11.5)

ミサイル開発に狂奔
 目を疑うような最新ミサイル開発、導入の報道が続いている。軍事大国路線をひた走るこの国はどこに向かおうとしているのか。行き着くのは破滅的な中国との戦争でしかないのに、反対する国民世論の声を聞かない。「どうせ犠牲になるのは沖縄」という慢心に覆われてはいまいか。沖縄は他人ごとではない。
 10月下旬からわずか一週間で以下の報道があった。10月28日読売「米巡航ミサイル購入打診 トマホーク 反撃能力を確保」。10月31日琉球新報「島嶼防衛弾 射程1000㌔超 敵基地攻撃多様化」。11月3日日経「極超音速ミサイルで抑止 迎撃困難な反撃手段に 防衛省30年配備目標」。さらに驚くべきことは10月29日読売「長射程ミサイル実験艦 潜水艦保有へ検証 トマホーク視野」防衛計画大綱に開発方針を盛り込む、という。
 トマホークは米軍がイラク戦争で先制攻撃に用いた映像の記憶が鮮烈だ。「射程1250㌔超」と読売記事にある。中国に届くトマホークを「反撃能力」の名の下に、沖縄・南西諸島に持ち込もうというのだ。イラク戦争の映像が沖縄の近未来の戦争にかぶさる。

「迎撃不能ミサイル」相互破滅戦争に
 「島嶼防衛用高速滑空弾」は、その名の通り南西諸島(沖縄ー奄美)に開発配備を予定する。「超音速でグライダーのように滑空し目標を攻撃、迎撃困難」なミサイルと記事にある。その射程を「千数百キロ程度に延伸する」という。従来、奪われた島(沖縄)を奪い返す「離島奪還作戦」が目的とされた。敵に占拠された沖縄の島を奪い返すため友軍(日本軍)のミサイルが撃ち込まれる。島の住民は二度、ミサイル攻撃にさらされ、二度目は友軍(自衛隊)ミサイルの標的となる。それ自体、不条理、非人道的な作戦だが、その「高速滑空弾」を中国に届く千数百キロに射程を延ばすというのである。
 「極超音速ミサイル」は音速の5倍以上。「巡航ミサイル(トマホーク)より早く飛行し軌道が複雑なため迎撃が難しい」と日経記事にある。「迎撃不能」ゆえに「ゲーム・チェンジャー」と呼ばれる代物だ。陸自12式地対艦ミサイルを1000㌔超に射程延長したのに加え、「トマホークや12式に比べ迎撃されにくい抑止力の向上を期待できる」と日経記事は解説している。
 本当だろうか。中国は先駆けて「20年から極超音速の運用を始めた可能性」とも記事にはある。迎撃不能な極超音速ミサイル、高速滑空弾を携えて中国の迎撃不能ミサイルと向き合い互いにけん制し合う。「抑止力」が効果を発揮し、双方が理性的に使用を抑制し、平和の均衡が保たれるというのだろうか。中国、北朝鮮が念頭にあることが記事に記されている。中国、北朝鮮首脳の理性的な判断に「抑止力」の効果を期待するということだろうか。甘くはないか。かえって過剰反応を誘発するだけではないか。行きつく「最悪の事態」は、双方が「迎撃不能ミサイル」を撃ち合う相互破滅の戦争ではないのか。

 破綻した「抑止論」
 ウクライナでロシア・プーチン大統領に米欧が期待した「理性的な判断」は裏切られた。その結果が終わりの見えない戦争である。「抑止論」はウクライナで破綻した。現実を見据えるべきだ。
 バイデン米大統領は「中国は安全保障、経済など唯一の競争相手」と宣言している。世界覇権を争う戦略的敵対国に中国を名指している。米中の対決は数十年続くと言われている。際限ない軍拡競争、迎撃不能ミサイルの開発配備競争はいつか破綻する。安倍元首相が「アメリカの戦争に巻き込まれることは絶対にない」と国民を騙して成立させた安保法制は「自衛隊の自動参戦装置」(石井暁共同通信専任編集委員)であり、米軍が中国との戦争の戦端を切れば、「日本は断ることができず自衛隊は参戦せざるをえない」(同)。
 イニシアティブは米国が握り、「台湾有事=日本有事」の自動参戦システムにより、日本防衛の名の下に自衛隊が戦う。主戦場は射程1000キロ超ミサイルを1500発超配備するとされる沖縄・南西諸島だが、本土を巻き込み核戦争にすら陥りかねないことを本土の方々は自覚すべきだ。米欧、NATOにとって沖縄、日本ははるか遠い極東(ファーイースト)でしかない。米中の「代理戦争」に身を置くべきか、国民、政府は自分事として考えるべきだ。

ありえない「戦争の選択肢」
 自衛隊トップを務めた河野克俊元前統合陸幕長がテレビで「最悪の事態に備えるのが防衛の役割」と語っていた。「最悪の事態」とは中国との戦争ということだろう。抑止が効かず中国との戦争に陥った場合に日本はどうなるか。破滅的な危機を迎えることにならないか。国民にとって「戦争の選択肢はありえない」こと。戦争に陥らないための手立てを尽くすこと。軍事で軍事に対抗する軍隊の論理では解決しない。軍事大国、戦争準備に奔走する軍人にこの国の未来を託するわけにはいかない。
 
10月31日(月)https://nomore-okinawasen.org/3477/

◆高速滑空弾射程1000キロ 政府、ミサイル多様化検討/トマホーク導入 自民新藤氏賛意「日本防衛に必要」(沖縄タイムス 2022.10.31)
◆米 空自F15で穴埋めも嘉手納機退役 後継機削減が影響(沖縄タイムス 2022.10.31)
◆空自那覇のF15 米軍と戦術訓練 沖縄周辺(琉球新報 2022.10.31)

11月1日(火)https://nomore-okinawasen.org/3483/

◆空自戦闘機と米爆撃機訓練 日本海上空(2022.11.1)

11月2日(水)https://nomore-okinawasen.org/3495/

◆日米演習「キーン・ソード23」一体的訓練 準備進む 港湾・空港使用 県、陸自に自粛求めず(琉球新報 2022.11.2)
◆米軍機の陸域空中給油 防衛相「運用上問題ない」 16年墜落後の解釈変更 米軍山梨給油 追認に/ 嘉手納  F15更新米側は「検討中」防衛相が説明(琉球新報 2022.11.2)
◆先島の機能強化「追求」 安保戦略改定 有識者会議で防衛相(沖縄タイムス 2022.11.2)
◆日独の首脳会談 協力強化を確認 ロシア制裁でも一致(沖縄タイムス 2022.11.2)
◆屋良覚書 佐藤氏「変な覚書」(沖縄タイムス 2022.11.2)
◆F22十数機 近く配備 嘉手納基地 退役F15と重複も 騒音負担 増す恐れ(沖縄タイムス 2022.11.2)

11月3日(木)https://nomore-okinawasen.org/3506/

◆新領域管理 海自に新部隊 宇宙・サイバー・電磁波 情報一元化(琉球新報 2022.11.3)
◆防衛力強化「民間活力も」 首相が方針、装備開発で(琉球新報 2022.11.3)
◆有事の避難 実効性課題 3市町の国民保護計画 輸送手段や住民訓練が鍵(沖縄タイムス 2022.11.3)
◆インド海軍に海自艦が給油 沖縄東方で共同訓練(琉球新報 2022.11.3)
◆宮古島周辺で捜索救難訓練 日米共同 先月27日(沖縄タイムス 2022.11.3)
◆普天間移設に330億円 第2次補正予算案 自民部会了承(沖縄タイムス 2022.11.3)

11月4日(金)https://nomore-okinawasen.org/3518/

◆ノーモア沖縄戦シンポに寄せて 島の日常が迷彩色に 「戦争作りだす」法整備も (琉球新報 2022.11.4)
◆連日の威嚇強まる 米非核化、行き詰まり/米韓の訓練 期間延長を決定 北朝鮮は反発/日独、防衛協力深化 2プラス2 物品協定締結調整(琉球新報 2022.11.4)
◆F22きょうにも暫定配備 嘉手納基地に12機程度(沖縄タイムス 2022.11.4)
◆巡回整備計画を批判 米有力議員 「能力低下招く」(沖縄タイムス 2022.11.4)

11月5日(土) https://nomore-okinawasen.org/3530/

◆与那国空港使用 県に申請 防衛相 日米演習の戦闘車空輸 県、7日にも可否判断(琉球新報 2022.11.5)
◆与那国空港使用届け出 日米演習へ自衛隊 中城湾港岸壁も(沖縄タイムス 2022.11.5)
◆陸自と米軍 指揮所演習 最大規模、28日から(琉球新報 2022.11.5)
◆防衛装備に新技術転用 政府、研究機関創設へ(沖縄タイムス 2022.11.5)
◆防衛相、協力求める 先島の施設に「有用性」(沖縄タイムス 2022.11.5)
◆社説 専守防衛の逸脱許さない(琉球新報 2022.11.5)
◆嘉手納にF22暫定配備 4機飛来 F15帰還始まらず(2022.11.5)
◆響くごう音 危機感 「訓練増えるのでは」住民、説明ない政府批判(沖縄タイムス 2022.11.5)
◆日米韓首脳 会談へ 今月中旬 対北朝鮮で結束(沖縄タイムス 2022.11.5)
◆戦時中と重なる現在の沖縄(沖縄タイムス 2022.11.5)

11月6日(日)https://nomore-okinawasen.org/3554/

◆空港・港湾巡る会議創設へ 南西諸島想定 自衛隊の活用視野(沖縄タイムス 2022.11.6)
◆トマホーク取得検討 専守防衛 かすむ理念 反撃能力保有 結論出ぬまま(琉球新報 2022.11.6)
◆F 22 2日連続4機飛来 嘉手納 F 15退役で巡回配備/津堅訓練水域で8日からパラ訓 10日まで(琉球新報 2022.11.6)
◆九州北西海上で 日米が共同訓練 爆撃機も参加(琉球新報 2022.11.6)
◆「島の要塞化」に懸念 辺野古 県民大行動に766人(琉球新報 2022.11.6)
◆「新基地ノー」766人団結 辺野古 抗議やゆ受け高校生も(沖縄タイムス 2022.11.6)

文責:新垣邦雄(ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 発起人)

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