メルマガ47号

「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」 賛同者・呼びかけ人の皆さま
いつも活動をご支援いただき誠にありがとうございます。
今回の原稿は西尾慧吾さんからいただきました。西尾さんは当会の立ち上げの時から呼びかけ人で、具志堅隆松さんが中心となってすすめてきた「遺骨土砂問題」意見書運動に関わり、様々な場で発信されています。本稿では、具志堅さんたちが辺野古新基地埋め立てに沖縄県南部土砂を使わないように求めてきたことへ、これまでの防衛省の全く誠実に向き合わない対応とその姿勢、県内外からの遺骨土砂反対問題反対意見書を無視し続ける国の「地方自治を蹂躙」する現状に鋭い批判を加えています。また米中関係の悪化に悪乗りするかのように島々を戦場にしようとする自衛隊の軍事強化や、沖縄を狙い撃ちにした土地規制法の重大性を指摘しています。地元大阪で現在の軍拡についての抗議のスタンディングを実行している西尾さんの骨太の原稿をぜひお読みください。
また、発起人の新垣邦雄さんから琉球新報に掲載された論壇を紹介します。米中の軍事緊張が高まる中、今秋控える県知事選、市町村議員選挙へ立候補する候補者に沖縄の戦争の危機からどう住民の命と安全を守るのか、真剣な議論を求める内容です。ぜひご覧ください。

「遺骨土砂問題」意見書運動に関わって、今思うこと

8月5日、具志堅隆松さん・戦没者遺族の方々と厚労省・外務省・防衛省との意見交換会に参加しました。その酷さについては、様々な方が書いてあるとおりですが、昨年から1年間、沖縄県外における「遺骨土砂問題」意見書運動に関わった身として、思うところを書かせていただきたく思います。
最も問題なのは、防衛省の態度です。8ページにわたる回答書を出してきましたが、「御遺骨の問題は大変重要であると考えている」としつつ、「変更承認後の土砂の調達先は決まっておらず」「土砂の調達については、今後しっかりと検討してまいります」という一年以上前の答弁を繰り返すばかり。コピーペーストで済ませたと言わざるを得ない文面で、防衛省が戦没者遺族の思いをどれほど軽視しているか思い知らされました。
6月24日、沖縄県は総務省公害等調整委員会の提示した土砂採取業者との合意案を承諾し、いよいよ沖縄戦没者の遺骨が染み込んだ沖縄島南部土砂を用いた埋め立て工事も現実化するかも知れない状況に来ています。具志堅さんやご遺族も、相当の緊張感で意見交換会に臨んでいました。具志堅さんらは「そもそも沖縄島南部を土砂調達の候補地に入れたこと自体、人道上の過ちだ」と正し、ご遺族は「遺骨はゴミではない。国のものでもない。家族のものだ」と切実に訴えました。それでも、担当者は答弁書を読み上げるだけで、具志堅さんやご遺族と目を合わせようともしませんでした。
沖縄県内外、合計200を超える地方議会で遺骨土砂問題反対意見書が上がっていることへの認識を問うても、「承知しておりますが、地方議会における個々の取組について、防衛省としてコメントすることは差し控えます」としました。全国で上がる意見書は、大半が全会一致や圧倒的賛成多数で可決されたものです。自公維新といった、辺野古新基地建設賛成の政党に属する地方議員すら、遺骨土砂問題意見書には賛成しました。例えば、昨年12月議会で意見書を全会一致可決した京都府長岡京市では、祖父の弟が沖縄戦で戦死し、自分も京都の塔を訪れるなど先祖の慰霊を続けているという自民党議員の方が賛成演説して下さいました。多くの市民・地方議員の、「ご遺骨に手を付けるのは人として許せない」との思いが詰まった意見書なので、応答を「差し控え」られては困ります。
憲法第8章が定める地方自治の蹂躙という観点でも大問題です。地方が国の下請けになり、国政の軍事化を止められなかったという戦争体験の反省があるからこそ、日本国憲法は地方自治に相当の重みを置いています。その反省を忘れ、「市民も、地方議員も、完全無視する」というのが、防衛省の公式姿勢のようです。
唯一加えた新情報は、「沖縄県内外、日本国内外問わず、これまで遺族の声を防衛省として聞いたこともなければ、今後聞く予定もない」ということでした。「これから聞くことも検討する」という風にお茶を濁すのかと思いきや、堂々と「遺族無視宣言」をしたのには、心底怒りと悲しみを覚えました。安倍元首相の国葬を批判すれば「死者に鞭打つな」と言われますが、一番死者に鞭打つ行為を行っているのは現政権です。
最近の国の「安全保障」担当者の無責任発言は目に余ります。意見交換会でも、防衛省は現場の業者への責任転嫁に一辺倒。辺野古新基地建設は防衛省が計画を立て、土砂投入は既に強行されているにもかかわらず、土砂調達は業者任せ。「計画を決めれば後は下請け次第。下請けの業務で被害が出ても、管理監督もしない、被害者の声も聴かない」という、一般企業がやれば非難囂々の発言です。
7月19日、宮古島の海上保安庁巡視船が機関砲8発を陸地向けに誤射した問題については、「実弾は一つ間違えれば凶器になるという危機意識が欠如していた」との弁明をしました。住宅や道路さらには弾薬庫・給油施設がある陸地に機関砲を向けたこと自体、住民を犠牲に曝す大問題です。これだけ米中間の緊張が高まる中、万一海に向けて誤射し、他国の船を撃てば、武力衝突さえ引き起こしかねませんでした。自分で立てた計画の全体に責任を負う気もなく、「実弾は凶器だ」という基本的認識すら持たない人たちに、安全保障を語り、武器を持つ資格はありません。
米中関係の悪化に悪乗りし、軍事官僚の横暴が日増しにエスカレートしています。台湾有事を想定した図上演習をしたり、存立危機事態・集団的自衛権行使を想定した初めてのリムパックをしたり、まるで琉球弧の島々を戦場にしたいかのようです。装備品の予算請求に制服組が関与したとの報道もあり、航空自衛隊は8月4日に合計5機の日米戦闘機が参加した共同訓練を沖縄周辺空域で実施したと発表しました。
沖縄戦を繰り返すような行為を平気でやっているのに、国会すら開かれていません。シビリアンコントロールが完全崩壊、もう軍事国家です。他国と余計な対立を煽れば、真っ先に軍事施設が固められた琉球弧の島々が攻撃の対象にされてしまいます。8月5日の意見交換会の合間に具志堅さんは、「沖縄の住民に逃げるのを強いないで」「出て行くのは軍隊の方だ」と強調されていました。
統一教会や国葬問題を見ていても、今の政府・与党に自浄能力があるとは思えません。9月には安倍元首相の国葬が実施され、重要土地規制法も施行されてしまいます。「やれる内にやりたい放題しておこう」という魂胆で、過激なことを一気にされるのではないか、と危惧しています。その際、一番監視・弾圧の対象となるのは、沖縄での反基地運動ではないでしょうか。
だからこそ、日本全国、とりわけ沖縄県外で「琉球弧の島々を戦場にするな」「他国と余計な対立を煽るな」との運動を起こすことが必要です。朝日新聞が7月20日の一面で海上保安庁機関砲誤射問題より羽生選手の会見を優先させたように、大手メディアが沖縄で起きることを無視・隠蔽することも稀ではありません。そんな印象操作に対抗すべく、大阪在住の私も、街頭でのスタンディングで現在の国の軍拡を問題視して欲しい、と訴え続けています。
遺骨土砂問題については、具志堅さんが全国の遺族に声を上げて欲しいとおっしゃっているので、7月24日に南風原文化センターで行われた遺族公聴会のような場を県外でも開催出来れば、と思っています。具志堅さんは、昨年から一貫して「防衛省が間違っていることははっきりしている」「これは絶対に勝たなければいけない闘いだ」とおっしゃっているので、不屈の精神で運動を続けます。
今年は所謂沖縄「復帰」、及び日中国交正常化50年です。日本が沖縄とも中国とも対等・友好な関係を結べるように、草の根の運動に尽力し続けます。

西尾慧吾(ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 呼びかけ人)

現実味帯びる沖縄の戦争 立候補者は真剣な議論を

米中の軍事緊張が高まっている。米下院議長の訪台で中国空母2隻が出港、米空母も周辺海域に派遣され、嘉手納基地で戦闘機が離発着、外来の空中給油機20機、電子偵察機が待機し、有事即応の臨戦態勢をうかがわせた。
 野添文彬沖国大准教授は「米中関係は危険水域まで悪化」、米中双方が対抗措置を繰り返せば「偶発的な衝突の危険性」が高まり、有事に至れば「沖縄が真っ先に狙われる」と指摘した(3日付本紙)。同氏の懸念通り、中国は報復的な軍事演習を強行し、波照間島近海に中国ミサイルが飛来した。沖縄が戦争に巻き込まれるのではと、多くの県民が不安を募らせている。
 米下院議長の訪台を松野官房長官は「コメントする立場にない」と傍観した。中国のミサイル発射を岸防衛相は「強く非難」し、日米外相は「地域の平和と安定のため緊密に連携」と確認した。中国に対抗し、日米の軍備強化をさらに進めるということだろう。
 軍事に軍事で対抗する「抑止」論はウクライナで破綻した。ウクライナに米欧は膨大な軍事、武器援助を注いだが戦争を止めることはできなかった。
 ウクライナの人口は4100万人。沖縄は146万人。沖縄は肌の色も違いはるか遠い「極東」の小島でしかない。残念ながら沖縄県民の命に対する世界の関心は低いだろう。ウクライナで起きた戦争は、それ以上に沖縄で起こり得る。県民は厳しい現実を直視すべきだと思う。
 まして日米政府は「台湾」防衛強化に前のめりだ。2022年版防衛白書、23年度防衛概算要求は宮古、石垣、沖縄島に配備する陸自地対艦ミサイルの射程延長(900キロ~1500キロ)、その名の通り南西諸島に配備する「離島防衛用高速滑空弾」(射程400キロ以上)の開発予算を組んでいる。ミサイル射程延長は中国に届く敵基地・中枢攻撃能力にほかならない。
 一方、米軍は核搭載可能な中距離ミサイル、極超音速ミサイルの列島線配備を計画する。軍事ジャーナリストの小西誠氏は、中国ミサイルに日米のミサイル網が対抗する「ミサイル戦場化」を懸念している。
 高まる戦争の危機に県民はどう向き合うべきか。中国の台湾侵攻があり得るとして、台湾を守るため日米が軍事行使し、沖縄が戦場となることを県民は受け入れるのか。有事の住民保護計画、住民批判訓練も問われている。「台湾有事で住民避難は不可能」とする専門家の指摘もある。「住民避難が可能」であるかのように沖縄県、市町村が保護計画、住民避難訓練を進めていいのか。
 県知事選、市町村議員選挙を迎える。立候補する各氏は沖縄の戦争の危機を正面から見据え、県民の命を守る政策を議論してほしい。

新垣邦雄(ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 発起人)

「メルマガ47号」への1件の返信

  1. 「現実味帯びる沖縄の戦争 立候補者は真剣な議論を」新垣邦雄(ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 発起人)新垣邦雄(ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 発起人)
    について意見を述べます。私の意見はここに掲載されることはないでしょうが、おかしい事はおかしい事として物申したいと思います。

    結論の「県知事選、市町村議員選挙を迎える。立候補する各氏は沖縄の戦争の危機を正面から見据え、県民の命を守る政策を議論してほしい。」には同意します。しかし、そこに至る論理の展開においてウクライナの例を挙げているのは同意できません。あたかも、欧米がウクライナに軍事援助をしたことが戦争の原因をつくったかのように書かれていますが、これでは、ロシアが国際法と国連憲章を踏みにじってウクライナに侵攻したことが、免罪されかねません。執筆者が意図してなかったとしても偏った記述です。「ウクライナに米欧は膨大な軍事、武器援助を注いだ」という文の「膨大」という意味も不明です。「膨大」とはどういうことを言うのでしょうか?

    私たちは2003年のイラク戦争に反対しました、当初から「大量破壊兵器がある」というのは眉唾ものと思っていましたが、たとえ大量破壊兵器が存在したとしても反対したと思います。
    朝鮮(民主主義人民共和国)が国連決議などに違反してミサイルを発射しても、核実験をしてもそれ自体許されないことであっても、朝鮮領土を攻撃したり、攻め入ってよいという事はありません。たとえ隣国や周辺国が脅威を覚えたとしても、軍事増強を理由に他国の国境線を越えて領土に攻め入る事は許されることではありません。国連の場にその問題を持ち込むなどして平和的に粘り強く取り組むべきでしょう。

    ですから、ロシアの侵略を全く語らず、あたかもウクライナと欧米のことだけ述べて、現今の戦争の原因をつくったかの言いまわしの文は不適切と思います。

    新垣さんがウクライナの事情をどれだけご存知なのか知りませんが、抑止と軍拡の問題を論じたいのなら、古い事とはいえ、わが国の過去の過ち、日本がワシントン海軍軍縮条約を破棄して軍拡を推し進め、それが太平洋、アジア諸国のみならず1945年の沖縄の悲劇を生んだ事を自戒をこめて記述すべきではないでしょうか?

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