メルマガ30号

沖縄にもうこれ以上の軍事基地を置かせない、軍事強化を許さない運動が各方面で広がっています。その運動をけん引している平和市民連絡会の共同世話人であり、当会発起人の宮城恵美子さんから原稿をいただきました。

 今回の内容は今年2月28日付けで、平和市民連絡会から全沖縄市長村議会と沖縄県議会に提出された陳情文です。各議会でこの陳情書の案件が審議に入る予定です。この陳情書は各地域で「島々を戦場にしない」ために、議会で議論を深め、一人ひとりが関心をもつための大きな参考になります。ぜひお読みください。

沖縄を再び“いくさば(戦場)”にさせないためにー平和市民連絡会の議会への陳情書

私は「ノーモア沖縄戦の会」の設立呼びかけ人であると共に、1999年から沖縄平和市民連絡会の結成に参加し、沖縄にこれ以上の軍事基地を置かせない運動を取り組んで来て、2013年からは当会共同世話人として活動しています。
ところで、今年2月28日付けで、全沖縄市長村議会と沖縄県議会に陳情文を提出しました。その内容が今回のメルマガに掲載されている中味です。
各議会は6月定例議会に入り、陳情案件の審議に入るようです。そのために陳情文の説明を依頼されています。事務局長の城間勝氏、副事務局長の岡本由希子氏を筆頭に共同世話人も参加する予定です。6月9日は豊見城市議会に招かれ1時間15分の説明・質疑応答・意見交換を行ってまいりました。次回は糸満市議会(15日)と北谷町議会(17日)の予定です。陳情文討議の場を持つことで議会審議を深め行動に向かうことが期待されます。是非、それぞれの地域で「沖縄を再び“いくさば(戦場)”にさせない」思いを一つにし、ミサイル部隊撤去等、「南西シフト」政策破棄に向かうように各自の身近な議会に働きかけていくこともお願いしたいと思います。いろんなところに闘うチャンスはあります。頑張りましょう。

宮城恵美子 (ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会発起人)

【沖縄平和市民連絡会の陳情文】

沖縄を再び“いくさば(戦場)”にさせないための陳情
2022年2月28日
沖縄県議会議長 赤嶺 昇 様(あるいは、各市町村議会議長宛)

陳情人:〒902-0066 那覇市大道169-4 コーポ花城B102号
すぺーす結気付
沖縄から基地をなくし世界の平和を求める市民連絡会
(略称:沖縄平和市民連絡会)
代表世話人: 高里 鈴代   宮城 恵美子
真喜志 好一  松田 寛

<陳情名称>沖縄を再び“いくさば(戦場)”にさせないための陳情
<陳情事項>
 沖縄県議会が以下のことを決議し、その実現に奮闘されることを心から願い陳情します。
1.台湾有事が絶対に惹起しないように日本政府が日本国憲法の精神に則って平和外交を誠心誠意展開されることを要請決議し、その成果が出るように全力を尽くすこと。
2.沖縄が再びいくさば(戦場)なるような政策、特に「日米共同作戦計画」策定作業などを中断し、出来上がったものは直ちに破棄するよう決議し、県議会としてその実現のために総力で行動をすること(沖縄の命運がかかっている)。
3.アジアの緊張を高めて戦争の引きがねをひく琉球弧・沖縄の島々への「ミサイル配備」を直ちにやめるよう決議し、日米両政府に求めること。同時に、配備済みの「ミサイル」を直ちに撤去させるべく行動を起こすこと。
4.現在国会で議論となっている「敵基地攻撃能力」兵器の琉球弧・沖縄の島々への配備を絶対に行わないよう決議し、日本政府に強く要請すること。
5.「復帰」から50年を経た今年、沖縄の全ての軍事基地の整理・縮小・撤去の緒に就き、基地のない平和な島を取り戻すことを決議し、その先頭に県議会が立つこと。
<陳情理由>
私たち沖縄県民は、『沖縄21世紀ビジョン』において「心豊かで、安心・安全に暮らせる島」、「世界に開かれた交流と共生の島」という沖縄の将来像を描き、「平和を愛する」「沖縄の心」で日本とアジアの発展に貢献し、世界の平和につながっていくことを目指しています。
ところが、こうした沖縄の将来像に相反する政策、特に軍事の計画が、日米両政府によって、沖縄県民を犠牲にするかたちで、進行しています。いわゆる「台湾有事は日本の有事、日米同盟の有事」ということを安倍元首相などがマスコミなどで明らかにしたり、2021年3月に米議会公聴会で、米インド太平洋軍デービッドソン司令官が中国が「6年以内」に台湾に軍事侵攻する可能性があると証言したり、また、同年4月の日米首脳会談の共同声明には、約半世紀ぶりに台湾海峡の「平和と安定の重要性」が強調されたことにより、多くの沖縄県民は「台湾有事」に巻き込まれて沖縄が戦場になるのではとの危機感を抱くようになっています。去る1月7日に開催された日米外務・防衛担当閣僚による「2プラス2」はその共同文書で「中国の行動について、必要なら共同で対処する決意を示した」と「共同対処」に踏みこんだ発言をしています。そして、「緊急事態に関する共同計画作業とは『日米共同作戦計画』作業のことですが、その確固とした進展を歓迎」との表現は、「台湾有事」を黙示するものであることは明らかです。
ところで、この共同作戦計画の原案は、昨年11月に米インド太平洋軍司令官が来日して「日米共同作戦計画」原案の策定を強行させたものです。この原案では、「南西諸島」に有人・無人合わせて200弱ある島々のうち、米軍の軍事拠点化の可能性がある島として約40の島を選定しており、その大半は有人島で、水が自給できることが選定の条件とされていると言われ、この中には、陸上自衛隊が地対艦ミサイル部隊、地対空ミサイル部隊および警備部隊を配置している奄美大島、宮古島、そして今後配置される予定の石垣島も含まれているとのことです。
米軍は中台紛争への軍事介入を視野に、対艦攻撃が可能な海兵隊の「高機動ロケット砲システム」(HIMARS)を拠点に配備し、自衛隊に後方支援を担わせ、空母を中心とする打撃群などが展開できるよう中国軍艦艇の排除に当たるとのこと。海兵隊は相手の反撃をかわすため、攻撃拠点とする島を次々と変えながら攻撃を続けていくことを明らかにしています。この日米共同作戦計画原案は、米インド太平洋軍が中国軍への対処を念頭に、部隊の小規模・分散展開を骨格とする海兵隊の新たな運用指針「遠征前方基地作戦」(EABO)にもとづき自衛隊に提案したもので、EABOは2016年に海兵隊司令官ネラー大将が発表した「海兵隊作戦構想」の主柱の一つでした。米海兵隊が高性能なミサイルを保有する中国海空軍に対抗し、島しょ部を拠点に闘うために考え出された運用方針がEABOです。この運用方針に基づいて、2021年12月7日から2週間にわたって、陸上自衛隊(1400人)と米海兵隊(約2650人)は、北海道や東北地方で共同訓練「レゾーリュート・ドラゴン」(不屈の竜の意)を行ったとのことです。この時の、敵の艦艇に対処するミサイル部隊を指揮するための日米間の調整場面は報道公開もされています。
ここで大切なことは、日米は台湾有事で琉球弧の沖縄の島々で日米共同作戦計画を策定し、戦争のための共同作戦訓練をも具体的に行っていること、しかし、沖縄県民にはこのことを全く知らされていないということです。
安倍政権のもとでは安全保障関連法が多くの国民の疑問の声や反対の声を押し切って制定されましたが、同関連法制定の際は「米国の戦争に巻き込まれることは絶対にない」と断言していた安倍元首相は、今、「台湾有事は日本の有事であり、日米同盟の有事である」と東アジアの緊張を高め危機を煽る発言を繰り返しています。
私たち沖縄県民にとっての最大の問題は、策定された日米共同作戦計画原案が「有事」の初期段階で、米海兵隊が「南西諸島」に臨時の攻撃用軍事拠点を置くと言っていることです。既に多くの軍事基地によって日常的に脅かされている私たちの島に、さらに新たな海兵隊の攻撃用軍事拠点が造られることを、この原案は意味しています。このような計画のもとでは攻撃用軍事拠点とされた沖縄の島々は全てが「敵」のミサイルの攻撃目標になるということです。
沖縄県民は78年前の沖縄戦で約4人に1人が殺戮される塗炭の苦しみを味わわされました。どうにか生き残った人々は “艦砲ぬ喰ぇぬくさー(艦砲射撃の喰い残し)”であり、今生きている私たち沖縄県民はその子や孫たちなのです。しかし、艦砲射撃と桁違いの破壊力を持った現在の“ミサイル戦”では、逃げる暇も隠れる場所も与えられずに、沖縄県民はまるごとミサイルの犠牲になるしかありません。
私たち沖縄県民にとって、「台湾有事は日本の有事、日米同盟の有事」などと嘯いて敵愾心を煽るような日本の政治家や右派の態度や論調はとても正気の沙汰とは思えません。県民総立ち上がりで日米両政府に詰め寄り、沖縄県民の犠牲を前提とした軍事計画がその根底に孕んでいる沖縄への偏見と差別を全国民、アジアの人々、全世界の人々に訴え、計画を止めるよう、今こそが行動すべき時であると訴えます。
現在の沖縄は有史以来沖縄に生きてきた人々が積み上げてきた生きた証=宝物です。沖縄に生きる私たちは、子々孫々にこの沖縄を引き継いでいく役割を負っています。沖縄県議会は沖縄の人々の先頭に立ち、その役割を果たすため、上記事項を決議し実践されることを心から訴えます。

                                    以上。

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