メルマガ254号

糸数健一与那国町長は憲法記念日に東京で開かれた憲法改正発議を目指す「憲法フォーラム」で、自衛隊誘致活動による自衛隊配備の経緯、「旧宗主国の責任」で「台湾を守ることが日本を守る」、そのために憲法に「自衛隊明記、緊急事態条項が必用」、9条2項を「国の交戦権を認める」に改定、「台湾は日本の生命線」であり、中国を念頭に「超法規的措置を取ってでも」「一戦を交える覚悟」を鼓舞しました。「台湾を守るために戦う」決意を促しながら、町民の犠牲を顧みない無責任な暴言です。エマニュエル駐日大使が17日、与那国町自衛隊駐屯地を視察し同町長と面談します。日米政府と与那国町長が結託する戦争準備を許すわけにはいきません。糸数町長の講話の全文を紹介します。あわせてこのフォーラムに寄せられた岸田首相のメッセージも紹介します。

糸数健一与那国町長の「憲法フォーラム」での講演発言

沖縄2紙「戦争に抗う」
 新聞は社会を映す鏡だ。沖縄の2紙は再び沖縄が戦場となる県民の不安に向き合っている。琉球新報は3月22日の1面に「戦争止める報道 県民とともに」と告知した。1944年3月22日、大本営は沖縄戦の部隊・32軍を創設。新報はこの日から「新しい戦前にしない 沖縄戦79ー80年」のキャンペーン報道を開始した。
 この日の社会面に「ミサイル 戦争つながる」の記事。うるま市の陸自勝連分屯地の地対艦ミサイル部隊・連隊本部の結成式に市民が抗議した。奄美、宮古、石垣、そして沖縄島うるま市に地対艦・地対空ミサイル部隊が配備され、南西諸島のミサイル要塞化がほぼ完成形となった。新報社説は「第32軍創設80年 「新しい戦前」沖縄で抗う」の見出しで、沖縄を再び戦場にしない決意を示した。

 沖縄タイムスは5月2日に社説「1944年の全島要塞化 本土防衛の「防波堤」に」を掲載した。沖縄は32軍創設の翌年、灰燼に帰した。社説は「沖縄の軍事要塞化には三つの波がある」という。「一つ目は、日本軍による1944年の軍事要塞化」、「二つ目は、米軍による1950年代の要塞化」。そして三つ目が、「台湾有事を想定して現に進められる」「日米合作の要塞化」である、という。タイムスはこの日を皮切りに、「社説企画 沖縄戦80年」をスタートした。5月5日は、子ども向けに易しく漢字にルビをふった社説「こどもの日と平和」を載せた。うるま市の陸自訓練場計画を断念させた反対運動を取り上げ、「平和であるためには常日頃からの国民の努力が重要」と訴えた。

 沖縄2紙は「二度と戦争のためにペンを握らない」ことを社是に掲げる。沖縄戦の継承と不戦の決意を記事や社説に織り込んでいる。5月3日、琉球新報の「きょうの歴史」に「米軍統治下の沖縄で初の憲法記念日(1965年)」とある。本土復帰の7年前に、「平和憲法への復帰」の願いを込め、立法院が「憲法記念日」を祝日と決めた。「憲法記念日」は県民が沖縄を二度と戦場にしないと誓う特別な日だ。

県民の分断
 新しい戦前の中で、しかし県民は分断され引き裂かれている。地元2紙は「憲法」アンケートを憲法記念日の紙面に掲載した。県議選立候補予定者を対象としたタイムスは「改憲・加憲」33人が「護憲」32人を上回った。国会議員を対象にした新報では、自民党5氏が「9条改定」、「緊急事態条項」「特定利用空港・港湾指定」「地方自治法改正」全てに賛成。国政野党6氏は全てに反対した。公明1氏は「9条改定」に反対し、「緊急事態条項」の賛否を保留した。憲法を変え、戦争準備に向かう勢力と反対する勢力が拮抗、相半ばする政治情勢にある。

ナチス誕生前に酷似
 県民の分断を象徴するのが「憲法記念日」の二つの勢力の催し記事だ。憲法普及協議会が主催する講演会に向けて小説家・逢坂冬馬氏は、中国脅威論の高まりに「ナチス誕生前と似ている。ファシズムの形成過程で権力に迎合する市民層が必ず存在した」と戦争への傾斜に警鐘を鳴らした。県内各地で護憲、反戦の集会が開かれた。

 一方、日本会議、神道政治連盟が主催、自民党県連が後援する憲法シンポジウムでは自衛隊のトップだった河野克俊・元統合幕僚長が「台湾有事は沖縄有事」と題して講演。「戦力不保持や交戦権を認めないとする憲法9条2項」について「自衛隊の手足を縛っている」とし、台湾有事に備える軍備強化を「沖縄を守るために必用」と言ってのけた。

一戦を交える覚悟
 沖縄の軍事要塞化は与那国島の地対空ミサイル配備も計画する。空港や港の軍事化や全島避難、シェルターの「全島要塞化」を先導する糸数健一町長は、東京で憲法改正発議を目指す「憲法フォーラム」に登壇し、「旧宗主国として台湾に対する責任を放棄してはならない」、「国の交戦権を『認める』に改める」、「平和を脅かす国家に対して一戦を交える覚悟を」と放言を連ねた。要約すれば、「台湾を守るために憲法で交戦権を認め、中国と戦う覚悟を」ということだろう。

 日米の軍事強化・一体化の推進役を任ずるエマニュエル駐日米大使が17日にも与那国、石垣の陸自駐屯地を視察し、両首長と面談する。エマニュエル氏は沖縄の基地負担は「インド太平洋を守るための責任」と述べている。町民の犠牲を厭わず「戦う覚悟」を鼓舞する糸数町長との応答が注目される。

新垣邦雄(当会事務局長)

  ◇    ◇    ◇
 5月3日「憲法フォーラム」での糸数健一与那国町長の講演発言は以下の通り。

司会(弁護士内田智) 続きまして中国の軍事的圧力の高まる沖縄、尖閣諸島の周辺地域に接します国交の島、その自治体のトップとしてご苦労を重ねている与那国町長の糸数健一先生に、憲法への自衛隊明記と関連法制の整備の必要性をご提言頂きます。

糸数健一町長 日本列島の最西端、国防最前線の与那国島から参りました糸数でございます。どうぞよろしくお願いします。本日は錚々たる先生方お揃いのなか、私を末席に加えさせていただきありがとうございます。さて私は30年前、当時住んでいた東京を離れ与那国島に戻りました。その時感じた素朴な疑問が、なぜ沖縄本島から与那国島まで509キロのその間に、自衛隊も、それから米軍もないのか。なにゆえに日本国であるはずのこの与那国島の真上に、外国であるはずの台湾の防空識別圏が敷かれているのか。そのことは当時、私たち与那国町民にしてみれば非常に屈辱的なことでありました。
 そういうことで1980年の初めころから、精力的に中国の軍事動向とか、それからいろんなことに研究を続けられ警鐘を鳴らし続けてこられた平松茂雄先生を初めとする方々が、南シナ海や中台間の問題を憂えられて警鐘を鳴らし続けてこられたんですね。そういうこともあって私どもはとにかく急がないといけないということで仲間を募りまして、国家の責任において、この与那国島に、あるいは沖縄島から与那国島にいたる509キロを埋めるように、国家の責任において自衛隊を配備してください、もう一点はこの防空識別圏を取っ払ってくれ、と訴えて自衛隊誘致活動を続けてきたわけであります。
 全国からも多くの方々のご支援を頂いて、そのおかげさまで8年前の2016年、与那国島に陸上自衛隊の与那国駐屯地が新設されまして、それから2019年には宮古島、それから奄美大島、そして昨年の3月には石垣島にも陸上自衛隊の駐屯地が開設されております。これらの駐屯地の開設によって十分ではないんですけれども、十分ではないにしろ、最低限の日本国家としての他の国に対して先島を断固として守り抜くんだという日本政府としての明確な意思表示は発信できたものかと、少しは安堵しているところです。
 しかしこれまでの活動を通して、また尖閣諸島や台湾有事のことを考えた場合に、さまざまなことが浮き彫りになってきております。それはすべて突き詰めると、現憲法に突き当たってしまうのではないでしょうか。私は憲法や法律を学んできた学者ではありませんけれども、だれが読んでもおかしな日本語で書かれた現憲法前文からして、現憲法は先の大戦における大和民族の命を惜しまぬ勇猛果敢さに恐れをなしたマッカーサーを初めとするGHQにかすめ取られた一部の馬鹿な日本人も加担して作成された代物ではないでしょうか。(会場から拍手)
 さて台湾は一番大切な隣国です。日本は旧宗主国として、台湾に対する責任を放棄してはなりません。台湾が中国共産党1党支配の中国に武力行使であれ、名ばかりの平和統一であろうと、併合されてしまうということは、台湾海峡問題が、実は与那国海峡問題になってしまうということであります。なんとしてでもそうならないようにする必用があります。そのためには最低でも新しい憲法には、最低でもですよ、自衛隊の明記と緊急事態条項を盛り込む必要があります。
 またできれば現憲法9条第二項、「国の交戦権はこれを認めない」この「認めない」の部分を「認める」に改める必要があると思います。併せて自衛隊法の改正と海上保安庁(法)の改正、両方の法の改正、両組織のシームレスな運営、連携、および作戦展開の上からも急ぐ必要があると思います。尖閣諸島守備、台湾有事の対応、それから地震、津波、台風等の自然災害対応にも即応可能な、強くしなやかで美しい憲法の制定を提言させていただきます。
 この日本が自縄自縛的な現憲法のくびきから脱却を図るためにも、私たち日本国民は憲法改正に向け邁進する、今がその時であります。岸田総理はじめ、国会議員の先生方におかれましては、一日も早く国会において憲法改正に向けての審議を進め、発議をしていただきたいと思います。自由民主主義、法の支配、日本と同じ普遍的価値観を共有する台湾を守るということは、戦略的に50年先、100年先を見据えた「日本を守る」ということであります。今まさに日本は、エコノミックアニマルと堕して、中国人10億人の市場に目がくらんで、将来中国の属国に甘んじるのか、はたまた台湾という日本の生命線を死守できるかという瀬戸際にあると思います。
 このような国家存亡の危機に瀕しては、超法規的措置を取ってでも、国家の命運を賭け、岸田総理はじめ国家議員の先生方はもちろん、全国民がいつでも、日本国の平和を脅かす国家に対しては一戦を交える覚悟が今問われているのではないでしょうか。
ともに新しい憲法の制定に向けて頑張って参りましょう(拍手)。

司会 ありがとうございました。国防最前線、まさに国境の島からの貴重なご提言だと思います。ありがとうございます。

・ビデオメッセージ 岸田文雄自由民主党総裁
憲法は「あるべき国の姿」を示す国家の基本法であり、社会が大きく変化する中で、現行憲法が今の時代にふさわしいものであり続けているかを考えることは大変、重要だ。現行憲法が施行から77年の間、一度も改正されていない中にあって、時代にそぐわない部分、不足している部分については果断に見直しを行なっていかねばならない。
自民党は責任政党として改憲論議をリードしてきた。平成30年には憲法改正のたたき台素案として、今国民に問うふさわしいテーマとして、
①安全保障に関わる「自衛隊」
②統治機構の在り方に関する「緊急事態」
③一票の格差と地域の民意反映が問われる「合区解消」
④国家百年の計たる「教育充実」
この4つを取り上げ議論を促してきた。ここ数年、衆参の憲法審査会の頻度が高まり、
特に緊急事態条項については各党の考えを含めて、論点整理が進むなど、与野党の枠を超えて活発な議論なされたと認識する。国会の発議を見据えた議論をしなければならない。
昨年12月に衆参の憲法審査会の我が党の幹事に、党派を超えた連携を目指す「改正項目」について我が党の考えをまとめるよう指示した。本年の党の運営方針に「緊急事態や自衛隊の明記などに関する条文起草の機関を設置し、憲法改正原案を作成し、国会の発議を経て、国民投票における過半数の賛成に向けて全力を傾注する」と明記した。国民に選択肢を示すことは政治の責任だ。

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