今回は当会発起人の与那覇恵子さんから非暴力運動の調査で来沖したスウェーデンの大学教授の通訳を通じて感じたことを寄せていただきました。ぜひお読みください。
沖縄の平和運動を考える
非暴力の市民運動調査に来沖したスウェーデンの大学教授達の通訳アテンドをする機会があったが、それは沖縄の平和運動を考える機会ともなった。沖縄の平和運動には過去の沖縄戦の記憶を継承しようとするものと現在の政治社会問題に対処しようとするものとがある。後者では、全国の米軍施設の70%が集中する状況下、殆ど全て基地問題への対処とならざるを得ない。辺野古新基地やPFAS、騒音など環境や人権問題が主だが2021年末、台湾有事で沖縄が戦場になるとの日米共同作戦計画が発表されて以降、沖縄の要塞化、戦争準備への反対運動が加わった。殆ど全てが沖縄独自の問題では無く日本政府がもたらす問題であるため政府と対峙するものとなること、非暴力であることがその特徴と言える。
インドネシアで政府と闘う少数民族が来沖し沖縄の市民活動家達と交流した際のやり取りを思い出す。武器で闘う彼等の運動は日々死者が出る過酷さで、沖縄の非暴力の運動の弱さを疑問視する声が上がった。が、「沖縄の運動は忍耐強く長年継続されている」との沖縄側の返答は自信に満ちていた。歌あり挨拶ありの新基地建設反対の座り込みは、スウェーデンの教授達には繰り返される儀式のようで疑問だったようだが、15人の聞き取り調査を終えた彼等の理解は「運動の息の長さ、忍耐強さに感銘した」との言葉に表われていた。20年や40年の継続にも感嘆するが平和の勝利への揺るがぬ信念にも感服する。それは沖縄の基地問題が日常の問題で日本政府には解決する意志も力も無いこと、運動が長期に継続されるがゆえに非暴力にならざるを得ないことを示すが、非暴力は沖縄の民族性に根ざすものでもあることは、400年の武器無き平和を享受した歴史や一人の死者も負傷者も出さなかったコザ暴動にも示されている。「沖縄住民はおとなしく占領に適す」とのコメントを米軍資料に読んだ記憶もあるが、「チムグリサン」という琉球言語に表われる人の痛みを我が痛みとして受け止める人達の選択肢には非暴力しかないのだろう。
非暴力の闘いの忍耐強さと共にスウェーデンの彼等が感銘を受けたことは「県(知事)が沖縄の民意を受け日本政府と対峙している」ことであった。右翼政権が誕生しNATOに加盟、平和が脅かされていると懸念する彼等は、それが沖縄にとっての幸運だと言う。が、その幸運は沖縄の私たちが選挙で招いたものだ。最終的に社会や国を変えるのは選挙で、投票こそ私たち市民のもつ力であることを再認識し、そこにも希望を見た。
与那覇恵子(当会発起人)※今回の寄稿は与那覇さんの承諾を得て、琉球新報の3月4日の論壇から転載したものです。