今回は「南西諸島軍事強化トピック」です。毎日更新している沖縄「戦前新聞」の情報を当会発揮人の新垣邦雄さんに解説していただいています。年初から軍事強化、軍拡の記事が毎日、洪水のようにあふれかえり、毎朝の記事を確認するのが憂鬱になります。しかし、この状況をしっかりとつかみ、何が起きているのか、この解説で頭の整理をし、今私たちが何をすべきかを考えていければと思います。ぜひご覧ください。
こちらをクリックしてご覧ください。
https://nomore-okinawasen.org/category/prewar/
南西諸島軍事強化トピック(2月27日~3月5日)
◇平和外交求め結集 軍備強化反対 1600人訴え 今夏 県民大会目指す(沖縄タイムス 2023.2.27)
◇ミサイルよりピースパワーを 県内配備 抗議集会 那覇、デモ行進も(琉球新報 2023.2.27)
◇世代超え 願う平和 戦争への道許さない 2・26緊急集会 沖縄戦体験者も参加(琉球新報 2023.2.27)
◇島々連携平和願う 「逃れる安全な場所ない」 先島から参加(沖縄タイムス 2023.2.27)
戦争反対 思い貫く 軍備増強よりも対話探って 那覇で2・26緊急集会(沖縄タイムス 2023.2.27)
ミサイルよりピースパワー
沖縄の戦場化に反対する「2・26県民緊急集会」を地元2紙が1面から社会面へと大々的に報じた。「ミサイルよりピースパワーを」「争うより愛しなさい」のスローガン、」新聞見出しに、戦争を恐れ平和を希求する県民の切実な思いがにじむ。戦場化に反対する「全県組織化」の取り組みの一環としての「緊急集会」は、各団体、県民各層への広がりを獲得しながら4月にも第二の集会、さらに大規模な県民集会の開催を目指す。戦争回避を願う県民の思いを踏みにじり、「防衛の空白地帯」だった石垣への陸自駐屯地の開設に向けた作業が急速に進んだ。
◇石垣陸自 きょう車両搬入 ミサイル発射機 など200台 石垣港から公道通過(琉球新報 2023.3.5)
◇車載式ミサイル配備 「八重山警備隊」も新編(琉球新報 2023.3.5)
賛否割れる中、部隊配備推進(琉球新報 2023.3.5)
◇反撃能力配置で含み 国、ミサイル長射程化へ(琉球新報 2023.3.5)
◇ミサイル配備「説明会を」 うるま市民の会 防衛局へ要求(沖縄タイムス 2023.2.28)
◇長射程弾 石垣配備に含み 参院委 防衛相「今後は分からぬ」(沖縄タイムス 2023.3.3)
◇核、生物兵器の攻撃想定 全国自衛隊施設で強化検討 24年度から工事実施(琉球新報 2023.3.3)
3月6日、陸自は建設を進めた石垣駐屯地にミサイル発射機を含む車両200台余を搬入した。5日の地元両紙に報道によると警備部隊と地対空、地対艦ミサイル部隊の約570人が配備され16日に発足、即座にミサイル弾薬を搬入するという。安倍政権以降に強硬に進められた「南西諸島の空白地帯を埋める」自衛隊配備が完成する。搬入される地対艦ミサイルは現在の百数十キロの射程を1000キロに延長する改良に着手し、中国にも届く敵基地攻撃ミサイルとなって石垣、宮古、沖縄島(本島)への配備が確実視されている。中国との戦争に備える沖縄列島(南西諸島)の「ミサイル攻撃基地化」(小西誠氏)の態勢が完成することになる。
長射程ミサイル配備を隠す
住民(国民)に事実を隠し、知らせない、有無を言わせない強硬手法は安倍政権以来続いている。地対艦ミサイルの長射程化は「そのような説明は聞いていない」「話が違う」と受け入れを容認していた保守層を含めた反発を生んでいる。この期に及んで政府、防衛省は地対艦ほか長射程の敵基地攻撃ミサイルを沖縄の島々に配備するのか否か、説明を拒んでいる。「沖縄防衛局長は石垣市長との面談で『相手の基地を攻撃できるようなミサイル配備の話は、今のところ全く予定はない』と回答。3月2日参院予算委で浜田防衛相は『(長射程ミサイルの)配備先は決まっていない』と説明した」(琉球新報)。
短射程の地対艦ミサイルを配備し、それを地ならしに長射程ミサイル配備に踏み込む政府防衛省の思惑は明白だ。台湾有事に備え「南西諸島の防衛(軍備)強化」を打ち出しながら実戦に向けた長射程、敵危機攻撃ミサイルを配備しないことはありえない。反対運動の高揚を避けようとぎりぎりまで配備計画を隠す算段だろう。防衛省はこれまで、「ミサイル配備により相手国が攻撃する事態を想定しているか」との地元側からの問いにも答えようとしていない。その一方で沖縄の自衛隊基地、司令部の地下化を進める計画だ。敵ミサイルの攻撃に耐えて継戦能力を維持する狙いは明らかだ。
核・生物・化学兵器に耐える自衛隊強靭化
沖縄だけではない。琉球新報は、「防衛省が全国約300地区の自衛隊施設で核や生物・化学兵器による攻撃を受けることを想定した施設強化を検討」(3月3日付)も報じている。
最初に報じたしんぶん赤旗によると「5年間で4兆円かけ、10年間で約300の自衛隊基地の2万3千棟」を「強靭化」する計画であるという。国会で追及した共産党小池晃氏は「日本全土の戦場化を想定するもの」と追及し、岸田首相は「国民の命や暮らしを守る一環」と答弁した。国会では先に同党の穀田恵二衆院議員が自衛隊による敵基地攻撃への報復攻撃についてただし、浜田防衛相が「(日本に)大規模な被害が生じる可能性がある」と答弁した経緯がある。岸田首相がどのように言い逃れようと、中国との戦争の事態となれば日本全土で大規模な被害が生じかねないと見ていることは間違いない。
◇弾薬庫 全国130棟整備へ(沖縄タイムス 2023.3.3)
◇米打撃力「完全依存せず」 首相 安保役割変化に言及(沖縄タイムス 2023.3.2)
◇盾から矛へ変容に「矛盾」 専守防衛形骸化の危うさ(沖縄タイムス 2023.3.2)
◇米打撃力に完全依存なく 首相 安保役割変化に言及(琉球新報 2023.3.2)
トマホーク400発
「弾薬庫 全国に130棟整備」も報じられ、防衛省は「継戦能力」確保に余念がない。岸田首相は「敵基地攻撃(反撃)力行使の事例」について説明を拒みながら、米国製巡航ミサイル・トマホークを「400発」購入する方針を表明した。どのような事態で敵基地攻撃に踏み切るのかを明らかにせず、報復による「大規模被害」(浜田防衛相)を想定しながら、なし崩しに長射程ミサイルの導入に突き進む。国民に説明せず、国会にも明らかにせず、戦争準備にのめり込む岸田政権は国民をどこに連れていこうとしているのか。政府が隠す戦争シナリオを知らないまま、ある日突然、戦争が始まり未曾有の戦禍に陥るのではという疑念、恐怖心を覚える。
あらためて日本の安保政策の大転換となった軍事(安保)3文書を読み返そう。「国家安保戦略」には「中国の軍事動向は我が国と国際社会の深刻な懸念事項であり(略)最大の戦略的な挑戦」と名指して敵視し、「同盟国の米国や同志国と共に、我が国及び周辺の有事、一方的な現状変更をの試みを抑止する」とある。「一方的な現状変更」とは中国による「台湾侵攻」、台湾有事を指していることは疑いを入れない。これを米国、同盟国と「抑止する」と宣言した。続けて「万が一、我が国に脅威が及べば排除し、被害を最小化させつつ、国益を守る有利な形で終結させる」という。日米軍を中心に「台湾有事」を抑止し「台湾を守る」。抑止が破綻し、中台の武力紛争となり、日本に危難が及べば日米軍が対抗し、撃退する。「被害を最小化」とはどういう意味か。「南西諸島の防衛を強化」し長射程ミサイルを配備して敵基地攻撃をも辞さず、沖縄・南西諸島に「被害を最小化」し乗り切ろうという軍事戦略ではないのか。
国民の犠牲前提の台湾有事シミュレーション
防衛政策研究所の提言、同防衛政策研究室・高橋杉雄氏のインタビュー、米シンクタンク・CSISの台湾有事シミュレーションは共通点がある。日米・中がもし戦わばの台湾有事対処をシミュレーションするが、いずれも日米軍の甚大な被害を想定し、高橋室長は「長期戦のリスク」、「地域全体が台湾を含めウクライナのような破壊を受ける可能性が高い」と見る。甚大な被害を被りながら「日米が協力することで勝利する」という見方も同一だ。
一方で米CSIS報告は戦場と想定する沖縄の民間被害に一言も触れず、高橋室長は「中国ミサイルは米軍、自衛隊を狙い正確だから民間人被害はほとんど出ない」と言い放っている。
台湾有事への日米共同対処の目的が「台湾防衛」であって沖縄県民の命を守ることが目的ではないことは明瞭に読み取れる。
国民(県民)の犠牲を前提とする有事シミュレーション、日米共同作戦計画は「国家安全保障戦略」の名に値しない。国民を犠牲にする「安保戦略」がありうるだろうか。「亡国の安保戦略」(前泊博盛沖縄国際大学教授)にほかならない。
さらに問題は軍事(安保)3文書が国民への説明や国会での論議もなく閣議決定されたことだ。台湾有事に米軍が介入し、安保法制で自衛隊が「自動参戦」(石井暁共同通信専任編集委員)し、日本が米中戦争に巻き込まれ、沖縄のみならず「日本に大規模被害」(浜田防衛相)が起こりかねない。このような「戦争シナリオ」を国民は了解しているだろうか。
合意なく説明すらない「台湾防衛」
国民に説明しない政治のありようそのものが間違っている。岸田政権は無謀な戦争計画と同時に民主主義政治を破壊しようとしている。安倍元首相以降の自民党政権は「中国脅威論」を煽り、「台湾有事は日本有事」と国民を誘導しながら、「台湾を守るために日本と米国が一緒になって中国と戦う」安保戦略の内実を国民に明らかにしてきただろうか。ジャーナリスト布施裕仁氏は安保3文書閣議決定で「岸田首相は日本に大量のミサイルが降ってくる事態となっても、米国と一緒に台湾を防衛するべきだと考えているかもしれない。しかしそのような国民的合意は存在していないし、説明すらなされていない」(琉球新報)と指摘している。全く同感だ。「台湾を守るために日米が中国と戦う」ことは説明されていない。説明も合意もない「安保戦略」に正当性はない。
敵基地攻撃能力が専守防衛に反し憲法9条に反するとの指摘がある。筆者(新垣)は、国民に説明も合意もなく日本を戦争に導く安保法制は、憲法前文に反すると考える。憲法前文には「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民にあることを宣言し、この憲法を確定する」とある。国民を戦争の危機に陥らせる岸田政権の誤った安保戦略は、主権者たる国民の正当な権利行使で破棄するしかない。
今週の南西諸島軍事強化トピック(2月27日~3月5日)
2月27日(月) https://nomore-okinawasen.org/6064/
平和外交求める結集 軍備強化反対 1600人訴え 今夏 県民大会目指す(沖縄タイムス 2023.2.27)
ミサイルよりピースパワーを 県内配備 抗議集会 那覇、デモ行進も(琉球新報 2023.2.27)
世代超え 願う平和 戦争への道許さない 2・26緊急集会 沖縄戦体験者も参加(琉球新報 2023.2.27)
島々連携平和願う 「逃れる安全な場所ない」 先島から参加(沖縄タイムス 2023.2.27)
戦争反対 思い貫く 軍備増強よりも対話探って 那覇で2・26緊急集会(沖縄タイムス 2023.2.27)
「連帯の輪 広げたい」宮古島から参加・下地茜さん(琉球新報 2023.2.27)
「世界にもっと目を向けて」 教職員OB 仲宗根藤子さん(86) 若者へ訴え(琉球新報 2023.2.27)
「無関心なくしたい」 滋賀から参加・ブリガム純枝さん(琉球新報 2023.2.27)
「争うより愛を」 世代超え思いつなぐ 反戦より「平和集会」 平和ガイドの平良さん(沖縄タイムス 2023.2.27)
自衛隊南西シフトを問う 安保「最前線」の現場から 政府、海底整備も検討 民間港湾への視線 管理者自治体の判断焦点(琉球新報 2023.2.27)
意外と知らない「有事」の話 ■15 台湾と沖縄 どう連携する? 日米目線でない報道必要(沖縄タイムス 2023.2.27)
2月28日(火) https://nomore-okinawasen.org/6094/
弾薬搬入中止と説明要求 陸自石垣駐屯地 市民団体が抗議(沖縄タイムス 2023.2.28)
ミサイル配備「説明会を」 うるま市民の会 防衛局へ要求(沖縄タイムス 2023.2.28)
意外と知らない「有事」の話 ■16 住民避難は自衛隊の役割? 国際人道法上の課題も(沖縄タイムス 2023.2.28)
自衛隊 南西シフトを問う 安保「最前線」の現場から 「軍民分離」の原則 国際法違反の可能性も(沖縄タイムス 2023.2.28)
3月1日(水)https://nomore-okinawasen.org/6132/
陸自.石垣に車両15台搬入 陸自駐屯地へ準備着々(沖縄タイムス 2023.3.1)
3月2日(木)https://nomore-okinawasen.org/6145/
戦争回避する議論必要 識者 外交の重要性訴え 北谷でシンポジウム(沖縄タイムス 2023.3.2)
保安林「違法に伐採」 市民団体指摘 県調査へ 陸自勝連分屯地 国は否定(沖縄タイムス 2023.3.2)
石垣駐屯地開設へ着々 港に車両、幹部隊員到着 (琉球新報 2023.3.2)
米打撃力「完全依存せず」 首相 安保役割変化に言及(沖縄タイムス 2023.3.2)
盾から矛へ変容に「矛盾」 専守防衛形骸化の危うさ(沖縄タイムス 2023.3.2)
米打撃力に完全依存なく 首相 安保役割変化に言及(琉球新報 2023.3.2)
式典中にも米軍機騒音 普天間、嘉手納周辺(琉球新報 2023.3.2)
3月3日(金)https://nomore-okinawasen.org/6168/
長射程弾 石垣配備に含み 参院委 防衛相「今後は分からぬ」(沖縄タイムス 2023.3.3)
弾薬庫 全国130棟整備へ(沖縄タイムス 2023.3.3)
「緊急条項の議論を」衆院憲法審 自民が意向示す(沖縄タイムス 2023.3.3)
核、生物兵器の攻撃想定 全国自衛隊施設で強化検討 24年度から工事実施(琉球新報 2023.3.3)
保安林伐採 県調査へ 勝連分屯地「防衛局と調整」(琉球新報 2023.3.3)
ASEAN会議誘致へ 知事「独自外交へ全霊」 (沖縄タイムス 2023.3.3)
3月4日(土)https://nomore-okinawasen.org/6188/
知事 6日から訪米 台湾巡り緊張緩和訴え 政府や議会関係者に(沖縄タイムス 2023.2.3.4)
石垣陸自の説明検討 駐屯地開設 防衛相「丁寧に」(沖縄タイムス 2023.3.4)
保管地元への説明難色 防衛省、長射程ミサイル(琉球新報 2023.3.4)
配備先未定で場所言及困難 防衛相、長射程ミサイル(琉球新報 2023.3.4)
徳之島訓練で連携強調 陸自と海兵隊 公開、オスプレイも(琉球新報 2023.3.4)
3月5日(日) https://nomore-okinawasen.org/6210/
石垣陸自 きょう車両搬入 ミサイル発射機 など200台 石垣港から公道通過(琉球新報 2023.3.5)
車載式ミサイル配備 「八重山警備隊」も新編(琉球新報 2023.3.5)
賛否割れる中、部隊配備推進(琉球新報 2023.3.5)
反撃能力配置で含み 国、ミサイル長射程化へ(琉球新報 2023.3.5)
意外と知らない「有事」の話 ■17 早期の事態認定鍵に 住民避難の課題は? 軍民の混在 回避が必要(沖縄タイムス 2023.3.5)
新垣邦雄(ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 発起人)