今回のメルマガは琉球大学名誉教授矢ケ崎克馬さんの「東電事故後13年に思う」のレポートと、2月10日オンライン学習会の案内です。矢ケ崎さんの事故後13年のご提起、今に引き続く福島原発被災問題を現在進行形の問題として整理し、たいへん分かり良く、政府の「核武装」構想にまで踏み込まれた内容となっています。ぜひお読みください。
東電福一事故後13年
皆々様 お元気でお過ごしでいらっしゃいますか? 私は不覚を取り1週間ほど伏せってしまいました。
未だ寒波が凄まじい折です。十分お気を付けください。
(1)つなごう命の会学習会(本番)
第61回 つなごう命の会定例学習会
2月10日(土)16:00~約2時間
(1) ICRP(国際放射線防護委員会)の諸原理は人々を欺すもの
① 「健康被害は実効線量に比例する」誰でも分かる常識を巧みに利用して嘘の世界(因果関係の否定)へ導入
② 生物学的等価線量組織加重係数:Svで何が破壊されたかー内部被曝の脅威
新たな「被曝防護原理」を打ち立てようとしています。
その原理を市民の皆さんが良く納得できるように解説いたします。
(2)事故後13年―自主避難者の苦闘歴
伊藤路子さん
福島県白河から2011年3月14日に娘さんと一緒に自主避難しました。チェルノブイリ流に内部被曝を入れて計算すると強制避難地域に匹敵する汚染地域です。「森のお茶会」という小洒落たカフェを開いていて、果樹園と畑に囲まれた、年中心楽しく過ごせるところでした。自主避難者に対しては、チェルノブイリと異なり何の人権的/経済的支援も国からはありません(現在)。過酷な避難生活の中で、帰るアテのないカフェの建て替えローンを3年ちょっと掛かって完済いたしました。福島に居れば楽隠居の心境でありましたでしょうが、現在はなりわいを確保するのに毎回「全力投球」です。「味噌教室」などミネラル/酵素たっぷりの無農薬・放射能フリーの安全食品教室を開いていますが、一人一人の参加者を大切にする教室と定評があります。そんな避難の苦労話を報告していただきます。
ZOOM URL パスワード等
https://us04web.zoom.us/j/7718813361?pwd=
UllnS21xQWRYOXRLNlZKNFRxN08xQT09
ミーティングID: 771 881 3361
パスコード: D8R2Lt
ご参加予定の方は必ず事前に
までご連絡ください。
(2) 「主権のない国は市民を守らない」
典型ー①辺野古米軍基地建設強行と②放射線被曝
<1>国に主権があるのならば、国は住民を守らねばならない
国がもし主権国であるならば、真っ先に人権が国によって守られるべきです。
これが露わに踏みにじられている象徴が
①『軟弱地盤』城に沖縄県民の民意を圧殺して建設が強行されている米軍基地建設です。もう一つは、
②東電事故に際して住民を被曝から保護することがほぼ完全に放棄されたことです。
③他の危害物質では決して適用しない「積極的危害物質摂取策(食べて応援)」は軟弱地盤を科学的に無視することと類似します。
被曝防護法を適用しないことは地方自治法を無視すると同等です。どちらも民意や人格権を完全に放棄させようとします。
<2>被曝防護法があるのに適用しなかった
「年間1ミリシーベルト」は国が住民(一般公衆)の被曝を守る基準。
炉規法(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律)などに規定される「周辺監視区域(外)」の汚染基準は「年間1ミリシーベルト」以下となっていますが、これは、一般公衆に対しては「年間1ミリシーベルト」を超えては被曝させてはならない』という住民に対する規制値が基準となって制定されました。
「年間1ミリシーベルト」は長年日本政府が基準としてきた実体法なのです。
「原子力の安全に関する国際条約」などの国際条約(国内法に優先する)には、日本政府は『日本の住民に対する保護基準は「年間1ミリシーベルト」である』と明言してきました(事故後政府はこれを隠そうとしています)。
国はこの基準を改悪しようとして曖昧にしようとしているのです(未だ変えられていません)。
『国が住民の被曝を守る義務』は「年間1ミリシーベルト」であることは実体法として日本に確立してきた法律です。
<3>20ミリシーベルト/年適用区域以外は1ミリシーベルト/年が基準
住民の被曝防護基準が20ミリシーベルト/年(外部被曝のみで)が適用されました。原子力災害特措法では汚染基準とその適用区域を明示することになっていますが、20ミリシーベルトは文科省通知として発せられ、国会の承認を経ることはもちろん、地域指定もなされませんでした。後に国会質問などで地域も明らかにされました。
ここで、20ミリシーベルト指定地以外は明確に1ミリシーベルトが法律上保持されているのです。しかし政府は勿論国会もその責任を果たそうとしませんでした。
法律があるのにそれを適用しようとしない、これが「先進国」日本の実態だったのです。
<4>チェルノブイリ法は「基本的人権」擁護、日本は全く違う
チェルノブイリ法で基本的人権擁護が謳われましたが、日本では全く適用されませんでした。「子ども被災者支援法」は何の具体的基準の指定もなく全て安倍内閣により反故にされました。
逆に日本政府は自主避難者を強制避難者と区別し極端な不当対応を行なっていきました(チェルノブイリでは全く同等でした)。
<5>主権のある国ならば、国は住民を守る。
しかし国は住民を守ろうとしなかった?
人権状況・社会や権力の保護状況は前回日本とチェルノブイリを比較して「唖然とする状態」をお伝えいたしました。
原発と核燃料の再処理は日本の潜在的核武装(安全保障)の不可欠要件と「原子力マフィア」が位置づけているからです。
「被害は無かった」、「事故はもう過去のこと」として、その上で、「汚染水海洋投棄」、「原発回帰」、原発発電量3倍化」等々が行われ、あるいは行われようとしています。
この無法状態を放っておけますか?
放射線被曝の歴史上、際だって、放射線被曝無権利状態にあることを日本の主権者として許してはなりません。
<6>大地の汚染状態は20%強減衰しただけー依然として放射能の強汚染は続く
図1には放射線管理区域相当汚染地域を示します。大きくは変わっていません
図1 2011年11月時点と2022年10月時点の放射線管理区域相当汚染地域
現場保存がされていると仮定すると当初のほぼ22%程面積が減少する。実際も概略的にそうなっている。4万ベクレル以上の面積は20%強減少したに過ぎない。
政府や福島県の公式発表は食品汚染はほとんど「NG」とされますが、福島沖の魚介類の放射能汚染の記録は現在なお、年々「過去最高値」を更新しています。山の珍味には依然としてク汚染が記録されています。
事故後13年。セシウム137の半減期が30年に対し、やっと13年経過しただけです。
日本在住者の放射線被爆状況は総合的に見て、依然危機状態にあるのです。
<7>日本の特殊事情
①チェルノブイリでは居住を禁止された汚染レベル内に日本では150万人近くが生産活動を継続するところとなりました。
1996年のIAEA会議決定は「永久に汚染された地域に住民を住み続けさせることを前提として放射線防護の「新体系」を作る」でした。
これが日本に適用されました。
このためにチェルノブイリではあり得なかった、汚染食品を食べて二次被曝をする深刻なメカニズムが日本特有の被害として全国に広がったのです。
<8>他の汚染源では絶対あり得ない「食べて応援(積極的被曝推進)」の大キャンペーン
原子力マフィアが関わる社会的倫理基準は、トンデモナイ「殺人基準」を事故被災者に対する支援の実施基準としました。
放射線被曝は厳然とした健康被害害悪です。
PFAS等の危険性物質を積極的に飲用に供すなどは是対にキャンペーンされません。
しかし原発事故による被曝に対しては「積極的被曝推進(食べて応援)」でした。心優しい沖縄県人は非常に積極的に「食べて応援」を継続して下さっております。しかしそれは本質的支援ではありません。自らのいのちを棄権に陥れているのです。例えば沖縄における「老衰」による死亡者は2010年以前の30倍に増えています。
どこかがおかしいと思いませんか?
<9>被曝による犠牲はとてつもなく大きい
小児甲状腺がん発生者は358人(2023年7月20日福島県民健康調査委員会)に上るが、国と福島県は「原発事故と関係ない」と言っています。彼らの論理的根拠とするUNSCEARはフクシマの甲状腺被曝線量を50分の1~100分の1に過少評価しているという科学的結果が確認されています(加藤聡子ら)。
厚労省の統計(性別年齢別死亡率)では全国で9年間(2011~2019年)で死亡者の異常増加が63万人(主として19才以下、60才以上)、死亡者の異常減少が57万人(主として20~59才)、合計で見かけの死亡者数は9年間で7万人という異常な数値でした。
死亡者の異常減少も原爆被爆者の例を辿れば、生涯として短命になっていますので、被曝悪影響を受けた人間の数は120万人に上ります。
専門機関もあり、福島県委員会もありますが、これらの健康影響が一切隠されようとしていることが重大です。政府は国民を守ろうとしてはいないのでは?
<10>一番大事なこと・戦後日本国民はどのように作られて来たのか?
「あなたの命と尊厳を守る祖国をあなたはお持ちですか?今、日本を変えなければなりません」
戦後サンフランシスコ講和条約と称してアメリカの反共防波堤(不沈空母)と日本を位置づけ、徹底したアメリカの傀儡政権として国際信義に反する卑屈な「日本国」が『講和条約』を結びました(1951年9月署名、1952年4月発効)。
日本の主権者を裏切る卑屈行為の極みは、吉田茂首相のみが認識し、他の全ての日本国民には秘密裏の内に「日米安保条約」が、吉田が単独署名を行なって『成立』させたことです。
米軍の治外法権を制度化しました(日米地位協定)。日本の国会の上に日米合同委員会があり、憲法の上に「日米地位協定」があるのです。
日本の戦後の「屈辱」の歴史の開幕で有りました。
当然、自民党などにとっては「平和憲法」は目の上のたんこぶでした。如何に換骨奪胎して「戦争の出来る美しい国」の実現に向かうか?平和憲法をどう処理するか?
この世界観は自民党「改憲草案」を見れば明瞭です。今や自民党は天皇を国家元首にして富国強兵を支えた明治憲法下の旧家族制度を根本に据えて、ジェンダーもLGBTQ:性的マイノリティーも「人権?なんだそれは?」です。 全て切り伏せて行く構えであるように思います。
彼ら戦略的目的意識の中で最も犠牲になってきたのが、「主権者の育成」です。
<11>日本国民は正当に主権者としての素養を教育されたか?
「主権を持った国の市民が民主的社会に生きる3要素」(主権者の主権者たる人格的要素)を次のように見ています。
①ありのままをきちんと見ることができる、
②自分で考えることができる(科学的かつ民主的判断根拠を持つ)、
③自分の考えに基づいて行動できる、 ことを要件とします。
そのためには自然と社会についてと民主主義のルールについてしっかり学習し基本的知識を身につけなければなりません。
きちんと見て、しっかり考えて、
自分なりに行動できる人。
これが主権者としての誇りを持つ人格内容です。
日本国憲法は基本的人権を土台に作られています。
憲法12条には次のように規定されています。
第12条〔個人の尊重と公共の福祉〕この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。
実は戦後この間、政府は「不断の努力」をもって主権者の自覚の破壊を制度化して参りました。
1958年に日の丸君が代の導入を手始めに、如何にして憲法に規定される人格内容を「主権者」に与えないようにするか?受験勉強と合せて、如何に上からの言うことを素直に聞く「従属者教育」を具体化するか?
公教育を通じて「国の主権者の素養が」が破壊され、「しつけ」が「教育」に取って代わったのでした。
彼らの近代的教育理念破壊は執拗で権力的に継続して押しつけられてきました。
その成果が今の日本を規定しています。
裏金を制度化する自民党。
日本資本主義の中枢等とも言われてきた自動車産業の腐敗:ダイハツやトヨタ自動織機の虚偽検査、ビッグオートの腐敗等々もこの一環の表れです。
もちろん裏金問題があからさまになった自民党をなおも支え続ける25%にも及ぶ岩盤支持は長年の従属者教育の重大成果です。
脱却しましょう。戦後の自民党政治を一切改めましょう。そうでないと誇りある日本・平和憲法を抱く日本は破壊されてしまいます。
我々はこれを承知して、「従属者教育」からの自らの脱却を図らなければなりません。
東電事故後13年に思う。
矢ヶ﨑克馬 (琉球大学名誉教授)
私に何が出来るのか。
ずっとそう感じてました。
チラシをダウロードして、数百枚ポスティングして誰か少しでも目を通してくれているのだろうか。
そして私は本当に地元の人達に心を寄せきれているのだろうか。
悩みながら、迷いながらのポスティングです。
222号の一部抜粋
「そのためには自然と社会についてと民主主義のルールについてしっかり学習し基本的知識を身につけなければなりません。
きちんと見て、しっかり考えて、
自分なりに行動できる人。
これが主権者としての誇りを持つ人格内容です」
この言葉に厳しさと共に諦めてはいけない。と感じ、チラシから伝わってくる危機感と共に、やはりポスティングして少しでも知っていただく人を増やしたい。と心新たに続けようと決めました。
今、4つのウソのチラシと三上監督のドキュメンタリー映画「戦雲」のチラシを重ねてポスティングしてます。
何とか一人でも気づく人がいて下さることを祈りながら続けようと思います。
ありがとうございます。