メルマガ218号

2024年の通常国会が始まりましたが、首相の施政方針演説よりも先に、政治資金パーティ裏金問題の集中審議から始まるという異例の展開となっています。今回の岸田首相の施政方針演説の中での外交・防衛に関する部分については看過できない重大な問題をはらんでいます。本稿で指摘されているように、際限のない軍事大国化の政策は、国民生活を守り能登地震の復興を最優先にするとは到底思えません。私たち一人ひとりが自らの生活を守るためにも政府の方向性をしっかりと見極め、声をあげるためにもぜひ本稿をお読みください。

岸田首相施政方針演説 「日米同盟を一層強化」「防衛力を抜本強化」-中国との戦争準備にひた走る岸田政権

通常国会が開会し、岸田首相が施政方針演説を行ないました。自民党の政治資金パーティー裏金問題への政治改革と能登半島震地震への対応を示しつつ、「台湾有事」に対処する「防衛力の抜本的強化」による〝戦争をする国づくり〟と、「同盟国と同志国」の連携、特に「日米(軍事)同盟」を「一層強化」すると打ち出しました。
 「日米安全保障体制を基軸とする日米同盟」は、「グローバルな安定と繁栄の『公共財』」とまで強調し、「台湾有事」を念頭に、近づく中国との戦争に向けて、「日米同盟の『抑止力・対処力』を一層強化する」と宣言しました。また「同志国」の中でも、「日米豪印」の連携を強調し、日本周辺、極東・東シナ海の地理的制限を越えて「南シナ海」や「自由で開かれたインド太平洋」での「各国の連携強化」と日本(自衛隊)の「貢献」が強調されました。
 安全保障体制の強化は軍事面にとどまらず「サプライチェーンや半導体の経済安全保障分野」にも踏み込み、ここでも「日米間の連携」が強調され、「経済安全保障の抜本強化、そのために特定秘密保護法の運用拡大へ、「特定秘密」に経済安保の機微情報を含める「セキュリティー・クリアランス」「サイバーセキュリティー強化」を挙げ、「関連法整備」の「法案を早期に」提出する考えを示しました。
 際限ない軍事大国化の継続・強化を首相施政方針は示しました。膨大な軍備強化の財源、増税は明言していません。一方でマヨネーズ状の海に土砂と国費を注ぎ込む辺野古新基地建設は「進める」と明言しました。膨大な国費を軍事に注ぎ込んでいては、能登地震の救援、国民の生活支援がおろそかになることは明らかです。中国排除の経済安保により日本経済は破綻しかねません。沖縄だけでなく全国の空港・港湾の軍事化、ミサイル弾薬庫建設を目論む岸田政権の施政方針に歯止めを掛けねばなりません。
岸田首相の施政方針演説(抜粋)と、沖縄選出国会議員の軍備強化に反対するコメント、軍備強化を支持するコメントを紹介します。
 国会野党の国会議員は「防衛力強化反対」で声をそろえました。自民党議員はほとんど防衛強化に触れず、「防衛力強化」支持を明言したのはただ1人。3年前に麻生太郎自民党副総裁が「米国と一緒に台湾を守ろう」「台湾の次は沖縄」「台湾有事は日本の存立危機自体」と中国脅威論をあおったのが、都内で開かれた沖縄選出自民党国会議員の選挙資金パーティーでの講演だったことを思い出しました。

◎岸田首相施政方針演説(抜粋)
【外交安全保障】
〈各国との連携強化〉
 ・同盟国、同志国との連携が重要。4月前半の訪米の機会に、わが国外交の基軸である日米関係をさらに拡大・深化させる。日米同盟を一層強化してわが国の安全保障を万全なものとし、地域の平和と安定に貢献する。
 ・さまざまなチャンネルを通し、サプライチェーン強靭化や半導体に関する協力など、経済安全保障分野における日米間の連携を強化する。
 ・日米豪印などを活用し、関係各国との連携を強化し、法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋の推進における協力を一層進める。
 ・国際的課題への対応で協力する重要な隣国の韓国とは、幅広い連携をさらに拡大・深化させ、日米韓3カ国の戦略的連携や、日中韓の枠組みも前進させる。
・中国に対しては「戦略的互恵関係」を包括的に推進。東シナ海や南シナ海における一方的な現状変更の試みに対するものを含め、わが国として主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、対話を行ない、共通の諸課題については協力する「建設的かつ安定敵な関係」を構築していく。

〈防衛力の抜本的強化〉
・わが国が戦後最も厳しい安全保障環境のただ中にあることを踏まえ、防衛力の抜本的強化を着実に具体化し、自衛隊員の生活・勤務環境、処遇の向上に務める。
・日米安全保障体制を基軸とする日米同盟は、グローバルな安定と繁栄の「公共財」として機能しており、同盟の「抑止力・対処力」を一層強化する。
・基地負担の軽減に取り組む・普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指し、辺野古への移設工事を進める。
・防衛力の抜本的強化に必用な財源確保についても、1昨年松の閣議決定の枠組みに基づいて方向性を明確化し、取り組む。
・防衛力の強化や外交・安全保障とともに経済安全保障の抜本的強化が急務。セキュリティークリアランス、サイバーセキュリティー強化に取り組む。
・サイバー対応能力の向上はますます急を要する課題であり、関連の法整備に関し、早期に法案を示す。

【憲法改正】
・憲法改正は衆参両院の憲法審査会で活発に議論している。国会の発議に向け、これまで以上の活発な議論に期待する。あえて自民党総裁として、自分の総裁任期中に改正を実現する思いに変わりない。今年は条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速する。

◎沖縄県選出・出身の国会議員コメント
防衛力強化に意欲
西銘恒三郎衆院議員(自民)
賃上げ好循環社会実現に向けた総理の力強い意志を感じた。歴史の転換点に先送りできない子育て支援や防衛力強化、エネルギー政策等、課題解決への強い意欲を感じる。『政治とカネ』心からおわびする。

防衛費3兆円増を止めよ
伊波洋一参院議員(沖縄の風)
能登半島地震対策に予備費1兆円、少子化対策に3・6兆円を必用としている。防衛費3兆円増を止め、日中首脳会談で合意した「建設的かつ安定的な日中関係」の構築により沖縄の基地負担をなくすべきだ。

防衛力強化より信頼構築
高良鉄美参院議員(沖縄の風)
基地負担に苦しむ沖縄に背を向けた演説。厳しい安全保障環境と煽り防衛力強化に邁進するが、重要なのは信頼構築だ。米国追従でなく分断・対立から協調に導くことだ。日中、日ロ、日朝の関係改善も不可能だ。

新垣邦雄(当会事務局長)

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