メルマガ174号

今回のメルマガは当会共同代表であり、「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」事務局長である山城博治さんからの投稿です。南西諸島軍事強化の現状と、そこにどう向き合い、「沖縄を再び戦場にしない」ために、何をすべきなのかについて山城さんに書いていただきました。2回にわたって配信します。
第1回目は、米国の呪縛に囚われた「台湾有事」、その呪縛を前提とした、これまでとは異次元の軍事強化―安保三文書、最前線にされようとしている自治体首長の動きについてです。ぜひお読みください。

沖縄を再び『地獄の戦場(いくさば)』にさせないために

Ⅰ.戦場(いくさば)にしようとするのは誰か

1.米国の呪縛―「台湾有事」

なぜ中国が台湾に武力侵攻するのか。なぜ中国が沖縄の島々に侵攻するのか。バイデン政権は根本的なところには一切触れず、ただ「攻めてくる」と脅し煽り、ついに「台湾有事は日本有事」と日本を政府挙げた戦争体制へと突入させた。日本は米国の呪縛から解放されなければならない。米国の対中国戦争のお先棒を担がされる限り、先の戦争と比較にならない地獄を避けることはできない。戦争へ向かう流れを止めよう。

2021年3月に、米インド太平洋軍デービッドソン司令官(当時)が「台湾有事」の「脅威は今後10年間ではっきり表れるだろう。実際のところ6年だ」と述べた。なぜそうなるかについては一切説明していないのに、以降日本政府までが「27年台湾有事」説を唱えた。

6月29日には、中山康秀防衛副大臣は「中台有事になった場合沖縄に直接関係する。沖縄県民は覚醒せよ」と言い放った。一番ひどい発言だ。腹が立って仕方がない。沖縄へのあからさまな恫喝。この発言が国会でなぜ問題にならないのだろうか。

22年1月の日米・外務防衛担当閣僚会議(2プラス2)と日米首脳会談で、敵基地攻撃能力の保有を含め防衛力を抜本的に強化し、防衛費GDP2%増額の方針が定まり、昨年末の「安保三文書」につながった。

しかし中国政府は「台湾が独立すると言わなければ軍事侵攻はない」と再三明言しており、他方で台湾の世論も圧倒的に「現状維持」を望んでいる。そのことからすれば、近々に台湾海峡をはさんで「有事」が勃発するとは考えにくい。戦争は、米国政権が強引に台湾蔡英文総統をして独立志向に追い立てるか、あるいは台湾への武器供与を強めて中国政府が看過できない緊迫した事態を作り出すかしないかぎりおきない。

2.安保関連三文書(沖縄・南西諸島戦争遂行作戦文書)の既成事実化

安保関連三文書とは、沖縄を中心とする「南西諸島」が戦場になることを大前提に、中国とどう戦うかを明文化した作戦計画書である。沖縄・南西諸島に直接かかわる箇所をいくつか紹介する。

「わが国への侵攻が生起した場合は、主たる責任をもって対処し、同盟国などの支援を受けつつ、阻止・排除する」。「自衛隊の海上・航空輸送能力を強化するとともに、民間輸送力を最大限活用する。特に南西地域の空港・港湾施設などを整備・強化し、利用可能な範囲を拡大する」。「10年後までに火薬庫の増設を完了する。主要な司令部の地下化を進める」。

すでに自衛隊は南西諸島へ重点配備されつつある。「主たる責任」は米軍ではなく自衛隊にあり自衛隊が戦い、その兵站として「南西地域の空港・港湾施設」「火薬庫」などを整備し、相手の攻撃目標となることから、「司令部の地下化」を進める。出撃と兵站の拠点となる南西諸島はじめ日本が戦火に覆われることを想定し既成事実化されている

「スタンド・オフ防衛能力」強化として「12式地対艦誘導弾能力向上型を開発。地上発射型は25年度まで、艦艇発射型は26年度まで、航空機発射型は28年度までの開発完了を目指す」。「米国製巡航ミサイル『トマホーク』など外国製スタンド・オフ・ミサイルを導入する」。「地対空誘導弾パトリオット・システムを改修し…能力向上型迎撃ミサイルによる極超音速滑空兵器への対処能力を向上させる」などと明記されている。日本から中国を攻撃するためのミサイル配備先こそ、沖縄・南西諸島だ。

「琉球新報」(23・6・23)によれば2016年以降の自衛隊の新編・移設部隊は以下のようになっている

与那国駐屯地には、与那国沿岸監視隊(16年)第53警戒隊(一部・22年)が配属。石垣駐屯地には、八重山警備隊(23年)、地対艦誘導弾部隊(熊本の建軍駐屯地から移設)、地対空誘導弾部隊(長崎の竹松駐屯地から移駐)。23年3月16日には石垣駐屯地が開設され、同18日には対艦ミサイル、対空ミサイルを駐屯地へ搬入。宮古島駐屯地には、宮古警備隊、第7高射特化群、第302地対艦ミサイル中隊が20年までに移駐し、保良訓練場内弾薬庫一部供用開始(21年)に加え新たな弾薬庫建設計画が公表された。那覇駐屯地には22年に陸自電子戦部隊、知念分屯地―陸自電子戦部隊が配属された。

今年度以降の計画で判明しているのは、陸上自衛隊勝連分屯地に地対艦ミサイル部隊配備予定(23年)、陸上自衛隊沖縄訓練場内への弾薬・燃料集積補給拠点設営予定(23年)、陸上自衛隊宮古島駐屯地に新たな弾薬庫建設公表、北大東島に移動式レーダー配備(24年以降)などである。

3.政府に取り込まれる市町村自治体

しかし該当する自治体首長は政府にとり込まれている。特に軍事基地化が強行されている与那国、石垣、宮古がそうだ。

与那国町の糸数健一町長は、今年2月に有事を防ぐには「抑止力が一番大切」と言い、7月に来島した松野博一官房長官に、住民の避難シェルター機能を備えた町役場庁舎の建設や、町内に5つある公民館へのシェルター設置を要望した。

石垣市の中山義隆市長は、敵基地攻撃能力を行使できる装備の配備の可能性について「仮に配備となっても大きな懸念はなく基本的には容認だ」と2月に述べた。松野官房長官に対して市長は「離島住民の避難には空路と海路以外にない」と述べ、市民や観光客の避難に向けた空港や港湾施設の機能強化、避難完了まで安全を確保するシェルター設置を求めた。空港や港湾施設整備は「有事」の際自衛隊が使用するためで、まやかしだ。

宮古島市の座喜味一幸市長は、陸上自衛隊保良訓練場(保良弾薬庫)への弾薬搬入に関連して昨年11月平良港の使用を許可した。また北大東島へのレーダー基地建設について、北大東村宮城光正村長は7月に「自衛隊を配備することで村民も安心して暮らす環境整備ができる。災害時の復旧のほか自衛隊が担う急患搬送もスムーズにいき時間短縮も期待」と述べた。(次回へ続く)

山城博治(当会共同代表、「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」事務局長)

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