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9月24日に開催される、沖縄を再び戦場にしない県民の会のキックオフ集会にむけて、県内二紙で鋭い論稿が掲載されました。もっと多くの方にお読みいただけるよう、ご本人のご了解をいただき配信します。今回は当会発起人の与那覇さん、新垣邦雄さんからいただきました。ぜひご覧ください。
「なぜ、沖縄は声をあげるのか?」~9月24日沖縄を戦場にさせない「県民大会」キックオフ集会に向けて~
4月から月までの「114回ピースボート世界一周の旅」で得たものは多い。その1つに、沖縄と日本本土の平和を求める思いのギャップ、現状認識のギャップを実感した体験がある。平和をキーワードにするピースボートは平和についての学びを真髄とし、それを求めての乗船者も多いが、最近は観光や娯楽重視の人が増え、船上での前者と後者のギャップは日本社会の現状を示してもいた。防衛費増額の賛成55%(NHK世論調査2022年)今や、前者はマイノリティーなのでは? ギャップは言葉の端々に出現した。辺野古新基地建設の不条理を訴える講演に「変なこと言うなぁ」戦争準備の日本政府を批判すると「中国が好きなの?」戦争前夜の日本、沖縄の危機を訴えた私の講演に「中国脅威がわかっていない」安倍政権以降のメディアコントロール下、多くの新聞が政権に忖度、政権批判のテレビ番組が消えた日本で、どのような市民が生み出されるか?
「台湾有事」で台湾人より「中国脅威」を言い立て騒ぐ日本国民の背後には、台湾政府より「中国脅威」を言い立て騒ぐ日本政府が在る。「ナチス政権と日本の政権は似ている」アウシュビッツ強制収容所の見学で、私達は危機感で一杯だった。ナチス政権は、沖縄の私達には現在の自分達に迫るものだったが、他県の参加者には他国の遠い過去のもののようだった。が、2013年麻生太郎財務相が放った「あの(ナチスの)手口に学んだらどうか」発言は、国会討議無し閣議による重大事項決定の数々となって日本に生かされ、土地規制法や安保三文書など戦争準備法が沖縄でより大きく影響する。日本政府は、安倍政権の「集団的自衛権」容認で米国の戦争への参加に道を開いた。憲法の専守防衛を捨て先制攻撃となる「敵基地攻撃能力」を保有し、今、ナチス「全権委任法」に学ぶ「緊急事態条項」で戦争突入の機会をうかがう。
そもそも「台湾有事」を言い出したのは米国インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン前司令官で、2021年5月「中国による台湾への脅威(台湾有事)は6年以内に出現すると考える」と米国議会上院軍事委員会の公聴会で予告、10月には海軍トップが2024年前となる可能性に備えるべきと警告した。が、早くも2006年には、台湾近辺での紛争を予想「米軍は作戦遂行上、台湾と目と鼻の先の石垣島や与那国島の港を使用する必要が出る。」とケビン・メア沖縄総領事が述べている。日本の政治を支配するとされるアーミテージとナイの第三次レポート(2012)の要求に沿って実現したのが、2014年の安倍政権の“集団的自衛権”行使容認だった。米国国家防衛戦略(2022/10)から「『台湾有事』は米国の対中国への軍拡競争、覇権争いが目的」と軍事評論家の小西誠氏は述べており、そうなると、日本政府の「台湾有事は日本有事」との姿勢は、「米国の対中国への軍拡競争、覇権争いを目的とする戦争は日本の戦争だ」との姿勢になる。
つまり、戦場にされる沖縄の危機の根本に米国隷属の日本がある。先日、辺野古新基地建設の設計変更申請に対する県の不承認を国土交通省が是正指示した違法性を訴えた最高裁で、県が敗訴した。沖縄が取り戻そうするものは、自決権・自治権・自治体の尊厳だ。日本が取り戻すべきは自決権・自治権・国家の尊厳であろう。が、戦後は米軍占領で沖縄を切り離し、復帰後も基地を過剰に負担させ続け、今再び、自ら積極介入する戦争の犠牲を沖縄に強いる日本だ。
短期間とされたウクライナ戦争は1年半を過ぎ、両国の死者数は増え続け、経済は疲弊し、和平の道も見えない。ウクライナ戦争以降、防衛力で戦争を抑止するとの抑止論者が増えたが、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡張やウクライナのNATO参加表明など防衛力強化こそがロシア侵攻を招いたことを忘れている。防衛力最強の国ほど戦争漬けである実例も米国が示す。米軍や自衛隊の基地が集中する沖縄が攻撃対象となる現状もそれを示すものだ。防衛力強化は戦争を前提とする時点で、すでに非戦に逆行している。
「沖縄・台湾対話シンポジウム」で台湾の対話者が言った。「沖縄には台湾に無い非戦、平和の土壌がある。沖縄戦や米軍占領の体験が生んだその土壌に学びたい。」中国の話者は言った。「台湾で何かが起こるという理論は架空の前提に基づくもので、中国は台湾が独立を求めない限り武力統一を選択肢としていない。」「読谷のチビチリガマの集団自決の現場を見て、非常にショックを受けた。あの残酷な戦争を二度と起こさせないため、最善を尽くしていきたい。」
与那国では九州避難の話も出る昨今だが、避難させれば良いのか?人々が脈々と築いてきた生活や文化はどうなるのか?沖縄は再び戦場となることを断固拒否する。非武装で400年余の平和を築いた歴史を誇る、沖縄戦の地獄を体験し「基地無き平和な島」を求め闘ってきた。沖縄の私達には、戦を拒む力、平和を築く力がある。歴史的に深く繋がる中国との戦争にノーを叫ぶのは、他県や他国とのギャップを埋め、「ぬちどぅ宝」の心でマイノリティーの声をマジョリティーにできるのは沖縄の私達だ。声をあげよう。
与那覇恵子(当会発起人)
「人間の住んでいる島」の軍事要塞化 生きる権利、命の尊厳を訴える
国は強権で辺野古新基地建設に突き進む。多数与党の国会が支え、沖縄県、県民の異議申し立てを司法が踏みにじる。戦没遺骨を拾い残したまま、次の沖縄戦へ島々のミサイル要塞化が進む。
辺野古新基地の耐用年数は200年。未来永劫、県民は「基地との共存共生」を強いられる。日米軍が中国と対峙し、最新鋭ミサイルを撃ち合う次の沖縄戦は、去る大戦以上の激戦、犠牲を免れないだろう。生き残った県民は新たな遺骨を拾い続けるのか。
沖縄県民の命の尊厳は踏みにじられ続けている。「基地の島」の住民に「生きる権利」はないのか。麻生太郎自民党副総裁は「戦う覚悟を」と言い放った。戦場となるのは沖縄だ。県民に向かって「戦場になる覚悟。死ぬ覚悟を」と宣言したのに等しい。
沖縄は「人間の住んでいる島」だ。人の住まない「基地の島」ではない。私たちには生きる権利がある。麻生氏、岸田政権、背後から差配するアメリカに、県民の生きる権利を無視し、島々を軍事要塞化する権利はない。
日本も批准するジュネーブ条約追加議定書は、「軍民分離」「住民保護」を義務づける。「人口の集中する地域、付近に軍事目標の設置を避ける」と規定する。沖縄諸島の陸自ミサイル基地は民家から近距離にある。ミサイル基地、弾薬庫は戦時に攻撃目標となる。小さな島の住民は、地続きのウクライナのように自力で逃げる術もいとまもない。国際法の専門家は、沖縄のありようを「ジュネーブ議定書に反する」と指摘している。
沖縄に配備される各種ミサイルは全て車載式だ。戦時となればまっ先に狙われる基地を出て島中を走り回る。軍事専門家は「島中が攻撃目標となる」と指摘する。日米の「離島奪還訓練」は、「奪われた島を奪い返す」作戦訓練だ。防衛省は離島防衛用高速滑空弾を開発中だ。島の住民は、最初は敵のミサイルに、二度目は日米の「離島奪還」ミサイルに見舞われることになる。防衛省は石垣島で、兵力の「残存率30%」を想定する離島奪還作戦を想定している。島の住民は生き残れるだろうか。
このような非人道的な戦争準備を受け入れるわけにはいかない。「台湾を守る」ために日本が中国と戦い、沖縄が戦場となり県民が犠牲となる不条理を拒否する。
沖縄を戦場にしない「県民の会」が結成された。県民の生きる権利、命の尊厳を訴える。
新垣邦雄(当会事務局長)