今回のメルマガは当会オブザーバー小西誠さんからの第6回目の寄稿です。自衛隊の南西シフトを考える上で、小西さんがもっとも重要な文書だと指摘する、2012年7月に策定された「日米の『動的防衛協力』について」(統合幕僚監部防衛計画部作成)の解説です。この文書を通じて現在の日米共同作戦や在沖米軍基地の自衛隊との共同使用など沖縄が直面する課題について具体的分析を加えていただきました。ぜひお読みください。
後半は南西諸島軍事強化トピック、9月25日に開催された「台湾有事・日米共同作戦の正体~メディアはどう闘うか」の報告です。こちらもぜひお読みください。
★新しく賛同人、呼びかけ人になられた方々へ
過去のメルマガ、沖縄「戦前新聞」のアーカイブをホームページで公開していますので、こちらをクリックして、ぜひご覧ください。
沖縄「戦前新聞」https://nomore-okinawasen.org/category/prewar/
メルマガ https://nomore-okinawasen.org/category/mail/
⑥「日米の『動的防衛協力』」による南西シフト
●隠蔽された「日米の『動的防衛協力』について」
前項のような、日米制服組による内密の南西シフトとして策定された計画が、公然として始まるのは、2010年の「防衛計画の大綱」の改訂であり、2012年の統合幕僚監部による「日米の『動的防衛協力』について」(部外秘文書で非公開)においてである。
しかし、2000年代初頭に計画された南西シフトが、なぜこのように遅れてしまったのか。この理由はシンプルだ。頼みの米軍が、アフガン、イラク戦争の泥沼から抜け出せなかったからだ。
すでに明記してきたように、アメリカのイラク戦争などへの一定のメドがたった2010年の米国防総省のQDR、そして、それと連動した同年の「防衛計画の大綱」での策定を経て、自衛隊の南西シフトは公開され、始動する。
ただし、ここで公開されたのは、「離島の防衛」の必要性ということだけであり、南西シフトの具体的態勢――その部隊編成・規模・配備場所・時期などについては、一向に公開されることはなかったのだ(筆者は、2016年、防衛省に「南西シフトに関する全文書」の情報開示を求めたが、なんと提出されたのは、「1点13頁」の文書だけである!それ以後、琉球列島の基地建設が進むにつれて、なんと数百点の文書が公開!)。
さて、この この統合幕僚監部の文書は、「動的防衛協力」と「別紙第2」の、「沖縄本島における恒常的な共同使用に係る新たな陸上部隊の配置」という2つの文書からなる(全文19頁)。
なお、これら統幕文書は、筆書への情報開示では、全文がほとんど黒塗りであったが、2018年3月、日本共産党の国会質問で、「一市民への開示において同文書の改竄がある」と質問され、問題になった。その後、全文が同党によって公開された(「一市民」とは筆者のこと)。
まず、「動的防衛力」文書の重大さは、公開された文書の図を見れば一見して明らかである。文書は、正面から「対中防衛の考え方」を明記している。
「平時の抑止」においては、「米軍との緊密な連携により、中国の影響力拡大を抑制」し、「中国の東シナ海の海洋権益を抑止」する。また、「中国のA2・AD能力に対抗し西太平洋での日米の活動を活発化する」。さらに、「有事の対処」としては、「日本の主体的行動及び米軍との共同作戦をもってこれを阻止」し、「米軍の来援基盤の確立を推進し米軍との共同対処」をする、と。
この文書は、明らかなように「対中防衛」をはっきり宣言するとともに、公然と対中の日米共同作戦(戦略的にはA2/AD戦略)を策定した文書である。
「動的防衛力」文書のもう1つの重要性は、別紙「沖縄本島における恒常的な共同使用に係る新たな陸上部隊の配置――南西地域における陸上部隊の配置の考え方」にあるように、東シナ海での日米の「戦略的プレゼンスの発揮」を謳った文書であることだ。
ここには、自衛隊の南西諸島配備によって「緊急展開能力」「基盤防衛能力」「兵站基盤」「水陸両用戦能力」を確保することともに、有事に一旦、グアム以遠に撤退した米空母機動部隊が、戦闘の推移によって自衛隊の作戦に参戦する図が描かれている。
そしてまた、ここには、与那国島・石垣島・宮古島には「初動対処」部隊が配備され、沖縄本島からはこの初動対処部隊を支援する「緊急展開」部隊が配備されるとともに、「緊急展開および奪回」部隊として「西部方面普通科隊連隊」と「海兵隊ⅢMEF」「31MEU」が明記されている。つまり、日米の海兵隊による緊急展開と島嶼奪回作戦が策定されているということだ。
●在沖米軍基地の自衛隊との共同使用
また、強調すべきは「戦略的対中プレゼンス」を強化するために、沖縄の全米軍基地の日米共同使用が明確に打ち出されたことだ。具体的には、「訓練場としての共同使用」として「沖大東島射爆場・鳥島射爆場・伊江島補助飛行場」「北部・中部の訓練場」(いずれも米軍専用)。「部隊としての共同使用」として、「嘉手納基地・グアム基地」。「部隊配置としての共同使用」として、「陸海空自衛隊の弾薬支処として嘉手納弾薬庫」。「陸自兵站部隊としての共同使用」として、「キャンプ・ハンセン」などなどが、列挙されている。
こうして見ると、新設されようとしている辺野古新基地の、日米共同基地化は必至ということだ(水陸機動団の辺野古新基地への配備の密約が報じられた!)。
つまり、沖縄本島・離島・沖縄水域の、全米軍基地・訓練場・射爆場の、自衛隊との共同使用を通して「対中の戦略的プレゼンス」を高める、というわけだ。
これは、言うまでもなく、東シナ海での日本と中国の「島嶼戦争」態勢において、沖縄本島に駐留する米軍を巻き込む、戦争態勢に組み入れるということを意味する。いわば、この「島嶼戦争」の戦端が一旦開かれたら、先島――石垣島、宮古島などの先島のみならず、沖縄本島の米軍まで「自動的に参戦」する戦争態勢づくりが「動的防衛力」文書の、もう1つの狙いである、ということだ。
●「日米の『動的防衛協力』」による琉球列島の部隊配備
見てきたように、この「動的防衛協力」と「別紙第2」の「沖縄本島における恒常的な共同使用に係る新たな陸上部隊の配置」において、自衛隊は初めて南西シフトでの部隊配備計画を示した。もちろん、これは非公開である。
文書の「沖縄本島における共同使用の必要性」という図では、「本地域の主力戦闘部隊は、沖縄本島に所在する第15旅団の第51普通科連隊のみであり、事態にシームレスに対応するためには、先島諸島に1個連隊規模、沖縄本島に1個連隊規模の平素配置部隊に加え、尖閣や先島にて事態が生起した場合に緊急展開し初動対処部隊として増援ができる最低1個連隊規模の勢力が必要」と明記し図示している。
また、同じ統合幕僚監部「沖縄本島における恒常的な共同使用の構想」という文書には、「キャンプ・シュワブ[案 普通科中隊]」、「キャンプ・ハンセン[案 普通科連隊等]」とあり、趣旨として「31MEUとの連携を重視」するとわざわざ明記されている。
つまり、自衛隊の南西シフトは、2012年というこの段階で、米海兵隊との共同作戦を前提としており、そのためにキャンプ・シュワブ、キャンプ・ハンセンへの配備が秘密裡に計画されていたということである
●宮古島などのミサイル配備はいつ決定されたのか?
統合幕僚監部の「動的防衛協力」文書を詳細に分析すると、いくつかの重要な問題が浮かび上がってくる。
1つは、この文書は、奄美大島への自衛隊配備について、全く明記していないということだ。奄美大島については、ミサイル部隊だけでなく、「警備部隊」についても、一言も触れられていない。つまり、2012年段階で策定された南西シフト態勢は、奄美大島の部隊配備については全くの「想定外」であったということだ。
これは、どういうことか。おそらく奄美大島の場合、後述するが、制服組は南西シフト態勢下の兵站・機動展開拠点の確保の重要性について、未だ考慮していなかったということだ。いわば、南西シフト態勢は、初めから自衛隊の「長期の戦略プラン」に基づいて策定されたというのではなく、米軍戦略下で、その後押しで、なし崩しに作成されたということの証左でもある。
もう1つの重要な問題は、この統合幕僚監部の文書は、南西シフトの初めての策定文書であるにも関わらず、宮古島・石垣島・奄美大島、そして沖縄本島への対艦・対空ミサイル部隊の配備については、全く言及していないということだ。つまり、2012年の段階では、「初動対処部隊」の配備として、普通科連隊などの配備は計画されていたが、ミサイル部隊の配備は、全く予定されていなかったのである。
この時期は、民主党が政権を掌握しており、「動的防衛協力」文書も、民主党政権下で作成されたのだが、2018年5月、宮古島にタウンミーティングに訪れた枝野幸男は、「自分は宮古島などの部隊配備を進めたが、ミサイル部隊の配備については全く知らなかった」という、驚くべき発言を行った。
つまり、この時期の先島・奄美大島などへのミサイル部隊配備は、常駐配備ではなく、「有事機動展開」としての配備であったということだ。
実際、陸自は、宮古島、奄美大島などへの有事の機動展開のための訓練・演習を度々行っている。例えば、西部方面隊の「鎮西演習」では、2011年9月、奄美大島の宇検村に地対艦ミサイル連隊が集結し訓練を行った。また、2016年10月、11月の「平成28年度鎮西演習」では、全国の全てのミサイル連隊が種子島に集結して演習を行うという、かつてない大規模なミサイル部隊の機動展開演習であった。
この陸自の地対艦・地対空ミサイル部隊の機動展開演習は、宮古島においても、石垣島においても、繰り返し行われている(宮古島では、空自の地対空ミサイルPAC3の機動展開演習も行われている)。
この点では、私たちは、重要な教訓を認識すべきだ。つまり、防衛省・自衛隊は、初めて沖縄(先島など)への新基地・ミサイル基地建設を行うという困難性を徹底して自覚し、執拗な準備、工作を行った結果、琉球列島へのミサイル配備を決定したということだ。
戦後自衛隊が、新たに基地を建設すること自体が困難な中(例えば、長沼・百里違憲裁判)、いわんや沖縄へのミサイル基地建設という状況は、一段と厳しさを自覚していたということだ。1970年代、「能勢ミサイル基地闘争」も闘われたが(ナイキ・ミサイル基地建設の中止)、このミサイル基地建設を阻止した勝利の教訓に学ぶべきである。
小西 誠(軍事ジャーナリスト・ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会オブザーバー)
戦争前夜・危機突破シンポジウム
「台湾有事・日米共同作戦の正体~県民・メディアはどう闘うか」
ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会は9月25日、宜野湾市民会館で、戦争前夜・危機突破シンポジウム「台湾有事・日米共同作戦の正体~県民・メディアはどう闘うか」を開催しました。石井暁共同通信専任編集委員から、台湾有事に対処する南西諸島の「共同作戦」戦争シナリオの詳細な報告と、「台湾有事に米軍が参戦するのを止めなければならない。自衛隊が参戦することは絶対にあってはならない」との提起を受け、戦争を回避するためメディア、県民はどう取り組むかを活発に議論しました。会場参加者のアンケートと「日米共同作戦」の中止などを訴える決議を紹介します。石井暁氏の講演と討議の内容は後日、ホームページで報告します。
当日会場や同時配信にご参加できなかった方も以下をクリックいただきたい思います。
https://youtu.be/Tz-kSJpZLGE
南西諸島の戦場化に反対する決議
日米両政府は「台湾有事」対処を名目に、日米安保を対中軍事同盟に変質させ、南西諸島の軍備強化を急ピッチで進めている。今や中国と日米の関係は一触即発の状況にあり、南西諸島は極度の軍事緊張のただなかに立たされている。
私たちは「台湾有事」の勃発によって南西諸島の島々が戦場とされることに断じて反対する。「中国脅威論」、「台湾有事」を言い立て、南西諸島のミサイル攻撃基地化を進める日米両政府に断固たる抗議を表明し、以下の事項を決議し、要求する。
宛先 内閣総理大臣 防衛大臣 外務大臣 在日米大使館
ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 2022年 9月25日
記
1、「南西諸島を攻撃拠点」とする「日米共同作戦計画」の中止を強く要求し、防衛省、防衛大臣には「日米共同作戦」の情報開示を要求する。
2、中国に届く射程1000キロ超、1500発超のミサイルの南西諸島配備を計画する防衛省の「戦時予算」(小西誠・沖縄タイムス)に反対する。
3、米軍の極超音速ミサイル、核搭載可能な中距離ミサイル等の配備計画、自衛隊と合わせた南西諸島の対中国「攻撃ミサイル基地化」に反対する。
4、「台湾有事は日本有事」ではない。沖縄を戦場に巻き込む在沖米軍の嘉手納、普天間など在沖基地からの出動、自衛隊の後方支援、陸自基地からの出動、運用に反対する。
5、安倍晋三元首相が「米国の戦争に巻き込まれることは絶対ない」と国民をだまし成立させた安保法制の廃止、安保法制に基づく自衛隊の「台湾有事」関与に反対する。
6、政府、防衛省は軍拡、住民保護計画、避難訓練、避難シェルターの前に、戦争を回避する中国、台湾、米国との対話外交による平和解決に最大の努力を尽くすよう要求する。
(アンケートの一部です)
◆日米共同作戦から日本の参戦可能性の道筋について整理できました。ありがとうございました。
◆講演会の内容はとても充実し、危機感がますますつのりましたが、私達が、今後考え動かねばならないことを決意新たにしました!問題意識の共有、大切!!全国に広げる世論喚起に向けて、全国の新聞各社の連帯集会開催を求めます。
◆石井さんの詳しい話をパネリストの方々が(司会の山城さんも)かみ砕いて、盛り上げて下さった講演会。もっとたくさんの参加があったらよかったと思います。安保法制が「台湾有事」にアメリカが動くと自動的に日本も参戦できる状況にもうなっている。ということ、考えたこともありませんでした。シェルターの件、もやもやしていましたので。(かみ砕いてお話いただき)自信をもって反対と言えます。
◆台湾有事の件について、沖縄のシェルターを作るということがいかにも戦争ありきであると思う。絶対シェルターを作ってほしくないです。沖縄に何もなければ、外から攻めてこない。
◆戦争をはじめない。国の外交努力。日本の防衛の愚策を正したい。日本の政治家は何のために政治家になったのか。戦争をやらないことを掲げる努力、日本が参戦しないことが大事。
◆「今そこにある危機」を改めて考える機会となりました。ありがとうございました。
◆ありがとうございます。戦争できない、持たないが一番の抑止力。アメリカのシナリオを終わらせましょう。
◆石井さん、新垣さん、阿部さん、三上さん、山城さんの話を聞けて非常に学びになりました。問題見えていない部分が多かった。おろかなウチナーンチュにならないよう、考えますし、、まちがった方向へ行かないよう、勇気をもって行動していく決意です。ありがとう、共にガンバロー!
今週の南西諸島軍事強化トピック (9月19日~25日)
◇日米防衛相会談 台湾視野に防衛費増確約 米軍一体化 反対論も (沖縄タイムス 2022.9.19)
◇防衛費5年で40兆超 政府検討、1.5倍に強化(琉球新報 2022.9.25)
「国防費5年で40兆円超」。「消費税2%分必要」(琉球新報)。政府が年末に改定する次期「中期防衛力整備計画」(2023年度から5年間)が、現計画(19~23年度)の1.5倍の大幅増を検討、「消費税2%分の予算が必要」とされ、国民の税負担、国民生活を圧迫する。「増額分は敵基地攻撃能力に転用可能な長射程ミサイル、ドローンなど無人機、ミサイル弾薬の備蓄、生産体制も強化」する。つまり日米の台湾有事対処に向けて大規模な軍備を南西諸島に投入するというのである。
オースティン米国防長官と面談した浜田靖一防衛省は「台湾情勢を名目に敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を前提にした防衛費の大幅増を確約」し、オースティン国防長官から「強い支持」を取り付けた、と共同通信の記事にある。政府が年末に策定する中期防、防衛大綱など3文書は「敵基地攻撃能力保有」を焦点に大軍拡予算の是非など、国会、世論の強い批判は必至だ。浜田防衛相はそうした国会、国民合意を抜きに中国に対する「敵基地攻撃能力保有」と軍拡予算を米国防長官に約束し、方向付けたのに等しい。南西諸島のミサイル攻撃基地化がさらに加速する。
共同通信記事には「『平和の党』を掲げる公明党や財務省はこうした動きに懐疑的」とある。「公明党幹部は『防衛費増額ありきで物事が進んでいる。大幅増が持論だった安倍晋三元首相の遺志を受けた人がそうした流れを作ろうと画策している』と警戒」しているとする。日本が戦争をする国になることへの国民的議論、中国との「戦争回避」の対話もないまま、「抑止力」を名目にミサイル軍拡に奔走し、「中国との戦争ありき」が既定の方向性となりつつある。
◇シンポジウム 日米共同作戦の正体に寄せて 小西誠 (沖縄タイムス 2022.9.20)
◇進む戦争シナリオ 台湾有事と沖縄 日米台軍事同盟急ぐ 派遣維持目的に中国挑発(琉球新報 2022.9.23)
◇安保法成立 日米、進む運用一体化 有事で最前線に立つ懸念も(沖縄タイムス 2022.9.20)
◇米大統領 台湾防衛を明言 中国反発「強烈な不満」 「曖昧戦略」を逸脱 (沖縄タイムス 2022.9.20)
◇防衛相 与那国陸自を視察 「南西諸島の防衛を強化」(沖縄タイムス 2022.9.22)
ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会は25日、戦争前夜・危機突破シンポジウム「台湾有事・日米共同作戦の正体~県民・メディアはどう闘うか」を開いた。
シンポを前に沖縄タイムスに寄稿した小西誠氏(軍事ジャーナリスト)は「際限ない軍事費膨張は『戦時予算』編成に等しい」と指摘する。防衛予算の中心は敵領域外からの「スタンド・オフ防衛能力」長射程ミサイルの開発と量産化、南西諸島への大量配備、戦争の長期化に備える「継戦能力」であるとする。米軍も「米海兵隊・陸軍も地対艦ミサイルの琉球列島配備」、「中距離ミサイル(射程5500㌔)の琉球列島から九州配備」を計画。「琉球列島は『台湾有事』下の対中戦争態勢のために、文字通りミサイル要塞化」される。
特に「中距離ミサイルは中国に10分前後で着弾。防御不可能な中距離ミサイルは抑止力が全く効かず、相互に戦争を誘発」しかねない。琉球列島が「対中国戦争の『攻撃ミサイル発射基地』」に位置づけられ、中国との軍備競争に拍車をかけ戦争の危機を高めることは確実だ。
琉球新報に寄稿した前田佐和子氏(宇宙科学者)は防衛省、JAXA、大学(岡山、東海)がエンジンを共同研究する極超音速ミサイルの開発などを報告。特に以下の事項は重要であり紹介したい。
住民混在
「2009年4月、プラハでオバマ米大統領が『核なき世界を目指す』と演説したとき、副大統領だったバイデン氏が、超音速兵器の開発を進めていた」「日米両政府は5月23日、米国が核を含む抑止力を行使すると確認した。安倍元首相が『核共有』という言葉で、それを言い表した。世界は超音速兵器の脅威に加えて核兵器にも脅かされている」
「2012年、陸上自衛隊富士学校の隊内誌に転載された記事には、島嶼防衛戦は『敵に離島を占領させた後、強襲上陸し奪還するものである』とある。占領などの際は『領域保全を優先』するため『住民混在の国土防衛戦を行う』と書かれている」
「住民を盾にした『国土防衛戦』を沖縄の地に再来させることは、二度とあってはならない」。
「住民混在の国土防衛戦」とは、沖縄戦で日本軍が首里城地下壕から南部に転進、「住民混在」の戦闘に県民が巻き込まれ多数が犠牲となった事態の再現にほかならない。県民を巻き込んだ沖縄戦を反省するどころか、沖縄戦に学び「住民混在の国土防衛戦」を繰り返そうというのである。
25日開催した「台湾有事・日米共同作戦の正体~」シンポで石井暁共同通信専任編集委員は、米国から防衛省に「共同作戦」策定の強い圧力があり、防衛省幹部が「米軍は南西諸島住民のこと、住民の命など何も考えていない」と語っていたことを明らかにした。米軍も自衛隊も沖縄を「軍事の要衝」「国土防衛の最前線」としか考えていないのだ。
◇大弦小弦 (沖縄タイムス 2022.9.19)
◇先島シェルターに抗議 市民団体 きょう那覇で集会(沖縄タイムス 2022.9.21)
◇シェルター整備 許すな ノーモア沖縄戦の会 政府検討に抗議(琉球新報 2022.9.21)
◇わったー島 戦場にさせない 有事前提 政府に不信 市民「県は国際世論に訴えて」 シェルター抗議集会(琉球新報 2022.9.22)
◇シェルター阻止へ団結 県庁前 抗議集会 「先島で戦争準備 許さない」(沖縄タイムス 2022.9.22)
「先島に避難シェルター 政府検討 有事を想定」(9月16日)共同通信配信記事が県民に反発と波紋を広げている。台湾有事を想定、「内閣官房が来年度予算概算要求でシェルター仕様の調査費を計上」、「自治体の意向を踏まえ数年で設置の可否、時期を検討」とされる。石垣市長が県にジェルター設置を要請した経緯の記事もあった。
ノーモア沖縄戦の会は県庁前広場で「避難シェルターいらない! ミサイル基地いらない!」緊急集会を開いた。南西諸島に射程1000㌔以上のミサイルを1500発超も配備する「戦争準備」軍拡予算の関連で、「避難シェルター」予算が組まれようとしている。地元がこれを容認することは「戦争準備」を受け入れることにならないか。
沖縄タイムスの1面コラム「大弦小弦」で阿部岳記者は、「シェルターは普天間第二小学校の校庭にもある」と書いた。隣接する普天間基地からオスプレイが児童の頭上を飛び交っている。シェルターは「学校上空の飛行を見過ごし続けるための免罪符になった」。避難シェルターは「対峙する中国には戦争準備の一環と映るだろう」。「戦争が始まってしまえば保護など存在しない」とする。「台湾有事・日米共同作戦の正体」シンポで阿部記者は、「シェルターは住民保護のアリバイでしかない」と指摘した。
台湾有事下の沖縄戦は核戦争すら懸念されている(琉球新報社説)。「住民混在の国土防衛戦」で「避難シェルター」を戦争準備の免罪符とすることを看過することはできない。
9月19日(月)https://nomore-okinawasen.org/2860/
日米防衛相会談 台湾視野に防衛費増確約 米軍一体化 反対論も (沖縄タイムス 2022.9.19)
大弦小弦 (沖縄タイムス 2022.9.19)
社説 土地規制法全面施行「根拠なき悪法は認めない」(琉球新報 2022.9.19)
9月20日(火)https://nomore-okinawasen.org/2871/
シンポジウム 日米共同作戦の正体に寄せて 小西誠 (沖縄タイムス 2022.9.20)
論壇 沖縄の戦場化防ぐため 県知事が国連で要請して(沖縄タイムス 2022.9.20)
土地規制法 全面施行 政府、年内に区域指定(沖縄タイムス 2022.9.20)
安保法成立 日米、進む運用一体化 有事で最前線に立つ懸念も(沖縄タイムス 2022.9.20)
米大統領 台湾防衛を明言 中国反発「強烈な不満」 「曖昧戦略」を逸脱 (沖縄タイムス 2022.9.20)
9月21日(水)https://nomore-okinawasen.org/2885/
先島シェルターに抗議 市民団体 きょう那覇で集会(沖縄タイムス 2022.9.21)
シェルター整備 許すな ノーモア沖縄戦の会 政府検討に抗議(琉球新報 2022.9.21)
土地利用規制法廃止求め意見書 有志の会、国に(琉球新報 2022.9.21)
40%の土地 届け出対象 特別注視区域で国見通し (沖縄タイムス 2022.9.21)
社説 土地規制法施行 恣意的な運用ゆるさない(沖縄タイムス 2022.9.21)
防衛相・知事初会談へ 28~29日で最終調整(沖縄タイムス 2022.9.21)
9月22日(木)https://nomore-okinawasen.org/2915/
わったー島 戦場にさせない 有事前提 政府に不信 市民「県は国際世論に訴えて」 シェルター抗議集会(琉球新報 2022.9.22)
シェルター阻止へ団結 県庁前 抗議集会 「先島で戦争準備 許さない」(沖縄タイムス 2022.9.22)
防衛相 与那国陸自を視察 「南西諸島の防衛を強化」(沖縄タイムス 2022.9.22)
自衛隊配備「抑止高める」 防衛相が与那国駐屯視察 有事懸念「丁寧に説明」(琉球新報 2022.9.22)
9月23日(金)https://nomore-okinawasen.org/2929/
進む戦争シナリオ 台湾有事と沖縄 日米台軍事同盟急ぐ 派遣維持目的に中国挑発(琉球新報 2022.9.23)
9月24日(土)https://nomore-okinawasen.org/2941/
進む戦争シナリオ 台湾有事と沖縄 日米台軍事同盟急ぐ 派遣維持目的に中国挑発(琉球新報 2022.9.23)
「日中関係悪くなる」89% 国交50年世論調査 首脳会談必要80%(沖縄タイムス 2022.9.24)
9月25日(日)https://nomore-okinawasen.org/2952/
防衛費5年で40兆円超 政府1.5倍強化検討(沖縄タイムス 2022.9.25)
防衛費5年で40兆超 政府検討、1.5倍に強化(琉球新報 2022.9.25)
財政運営の規律維持を 防衛費増額(沖縄タイムス 2022.9.25)
土地利用規制法 国防施設周辺調査可能に 国民の不安払しょく 両立課題(沖縄タイムス 2022.9.25)
中国が一線超えないよう準備 米軍の事件根絶不可能でない 米空軍第18航空団司令官 エグリン准将インタビュー(沖縄タイムス 2022.9.25)
「住民の代弁者に」 本紙。JCJ特別賞受賞(琉球新報 2022.9.25)
復帰50年の報道評価 本紙JCJ特別賞(沖縄タイムス 2022.9.25)
中国「台湾妥協せず」 外相会談 米は海峡安定要求(琉球新報 2022.9.25)
日中交流行事が盛況 国交50年 ウルトラマンは中止(沖縄タイムス 2022.9.25)
北朝鮮SLBM 発射兆候と韓国 大統領府 異例の発表(沖縄タイムス 2022.9.25)
新垣邦雄(ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 発起人)