今回のメルマガは広島県呉市で9月21日、22日に開催された「沖縄―西日本連帯交流会」のリポートです。前回は沖縄での交流集会に県内外から100人が集まり、各地での取り組みを知り、つながり、どんな軍事強化も許さない、戦争準備の根を断ち、芽を摘んでいくことを目指し、全国に広げていくことを確認しました。今回は呉で開催し、さらなる軍事強化の動きを共有し、当該地域の問題ではなく、西日本、ひいては全国の問題として拡散していくことが確認されました。現在、これまでにない戦争をなんとしても止めるという動きが広がり始めています。ぜひ読者のみなさんも、各地ですすむ軍事強化に、声をあげてほしいと思います。リポートをぜひお読みください。
広島呉集会報告
9月21日、22日、広島県呉市で「知り、つながり、止めるー戦争止めよう 沖縄西日本連帯交流会」が開かれた。共催した「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」から具志堅隆松共同代表と新垣邦雄事務局長(筆者)が参加した。
戦争準備に抗う運動が大きく動き出そうとしている-。広島呉集会の各地の報告は切実な危機感と同時に、この動きを何としても止めるという決意、「次は大分。鹿児島で」と連帯行動の熱意にあふれ、私たちの運動が大きく動き出す予感を抱いた。多くの参加者がそのように感じたことだろう。「知り、つながり、止める」をスローガンとする私たちの運動が、各地が一体となって戦争を止める「反転攻勢」へ大きな転換点を迎えつつある。
一年前を振り返る。ミサイル配備に反対する沖縄・うるま市民の会が抗議、阻止活動に奮闘する中で、大分で新たな大型弾薬庫計画が浮上し、「大分敷戸ミサイル弾薬庫建設問題を考える会」が昨年夏に発足した。11月の「沖縄を二度と戦場にしない」県民集会の「全国連帯集会」で、奈良の八木健彦さんが「京都の祝園弾薬庫も狙われのでは」と述べた懸念は、翌12月に祝園弾薬庫の長射程ミサイル弾薬庫計画が発覚し現実となった。年が明けて京都で、次いで奈良で祝園弾薬庫建設に反対する市民団体が発足。九州では福岡北九州、鹿児島県さつま町の弾薬庫計画、広島県呉の大規模な「防衛複合拠点」、「自衛隊海上輸送群」など軍事拠点化に反対する市民が声を上げ、運動団体が次々と立ち上がった。その中で軍備強化が急速な沖縄-九州-西日本の「戦争止めよう!西日本連帯」ネットワーク化が動き出した。
昨年11月の沖縄「全国連帯集会」の会場で、私は全国の登壇者が「沖縄を犠牲にするな」と訴えたことに強い違和感を覚えた。「沖縄だけじゃない。あなたの住む場所が危ない」、戦争準備は「沖縄問題ではなく全国問題だ」と。それから1年、「戦争、戦場となる危機感」は軍事化が急激な西日本を中心に、全国で共有されるようになった。それが今回の広島呉集会につながった。
うるま市の照屋寛之さんは「うるま市石川の自衛隊訓練場計画」の撤回運動を報告した。地元住民の結集は保守の市長、市議会を巻き込み、玉城デニー知事が「白紙撤回」を求め、県議会が反対決議する県民世論の奔流となって、防衛相の「計画断念」表明に追い込んだ。防衛省の軍備計画を地方が覆す画期的な運動の成果を今後にどう生かすか。防衛省は新たな訓練場建設を諦めてはいない。来年度には、島々への地対艦長射程ミサイルの配備が濃厚だ。これを食い止めるには「保革を越えた県民の結束。反対世論をいかに作り出すかだ」と照屋さんは力説した。
玉城知事は防衛省、外務省に「長射程ミサイルの沖縄配備に反対」を申し入れている。特定利用空港港湾の指定にも抗い、指定を「国管理の那覇空港」「石垣市管理の石垣港」の2つにとどめている。防衛省計画に、正面から反対を主張するのは全国の知事、市町村長の中で玉城知事一人だ。全国の知事、自治体首長は唯々諾々と承認している。市民が結束して反対の声を上げ、首長や議会を突き動かすことが大事だ。それは私たちがいかに市民に反対の声を広げるかにかかっている。
石垣の藤井幸子さんは石垣、与那国の軍備強化、宮古を含めた先島全住民の九州避難計画の非現実性、非人道性を訴えた。全住民避難は先島地区を軍事要塞化する目論みにほかならない。「全島避難は不可能」であり、住民は犠牲を免れない。藤井さんは南西諸島の島々の団体の「東京行動」、防衛省交渉や官邸前抗議行動を報告した。報告を受けた議論で、西日本・全国のネットワーク化を図って全国から東京に結集し、「防衛省に反対を突きつけ、住民説明会、情報開示を要求」など、「東京行動」の取り組みが提案された。
ミサイル弾薬庫8棟の工事が着手された大分の池田年宏さんは「周辺に4万人が住む住宅密集地への弾薬庫建設は、国際人道法の『軍民分離の原則』に反する」と訴えた。「軍民分離」の訴えは、沖縄、大分、佐賀、京都、広島など各地に共通している。軍事施設は「有事の標的になる」が共通の声だ。「国際人道法、ジュネーブ条約違反」の主張を国際法など有識者の知見を得て、日米政府、国連、国際社会に訴えることが課題になる。
防衛省は、鹿児島の山間にあるさつま町に弾薬庫建設を計画している。戦前生まれで、夫と農業を営む岩崎わかさんは、「まさかここに弾薬庫ができるなんて」と不安を語り、「全国の支援」を訴えた。〈防衛省は町や商工会を巻き込み弾薬庫計画を進めた。さらに「南九州は弾薬庫の空白地帯」(南日本新聞)と、鹿児島、奄美で弾薬庫の大規模な「拠点化」を狙っている。大分湯布院分屯地には九州・南西諸島の地対艦ミサイル部隊を指揮する「第二特科団」が置かれ、琉球新報社説は「九州、南西諸島は台湾有事の正面」と指摘している。〉
岩崎さんの報告を受け11月30日、12月1日に予定する大分集会に続いて「鹿児島で次の集会を開こう」の声が会場から相次いだ。山間の小さな、さつま町の皆さまに全てを託するわけにはいかない。フロアから「鹿児島集会を全国で支えよう」の声が上がった。
京都・祝園弾薬庫問題を考える奈良の会、八木健彦さんは「来年度の弾薬建設概算要求358億円の半分以上の192億円が祝園に投入される」と報告。「弾薬庫は36万人の学園都市の真ん中にある」。「長射程ミサイル、トマホーク、〝戦争の目〟になるXバンドレーダーが置かれ、日本の伝統文化を誇る京都が、大軍事拠点になる」と訴えた。「鹿児島も大変だが、その次はぜひ京都で全国集会を」の要望を込めた。
次の大分集会を成功させ、鹿児島や京都など各地で集会を開く。そして「東京行動」に全国から結集する。今回の呉集会の議論を通し、私たちの「統一行動」のシナリオが見えてきた。まとめの意見交換では、「東京行動」のほか、各地で進む軍事拠点化の情報を発信・共有する「共同のサイト・ホームページ」も提案された。集会には東京や神奈川からも参加。「戦争止めよう!沖縄・西日本ネットワーク」の正式結成と、西日本から全国へのネットワークの拡大、組織化がこれからの課題と確認した。
まとめの議論で私(新垣)は、「メディアとの連携」を提起した。全国で同時進行する軍事化の波を止めるには、「知る」こと、そのためのメディア、地方新聞との連携が不可欠だ。例えばミサイル部隊配備や弾薬庫建設など軍事拠点化が進む沖縄や大分、鹿児島、広島、京都ほか各地の地方紙が「合同取材」し、記事を交換する「合同連載」を実現できないか。来年は「戦後80年」。各地方紙が共通するテーマで来年の取材準備に取り掛かっている。
私は沖縄の新聞2社や沖縄マスコミ労協、日本新聞労連に、「地方紙の連携」を呼びかけている。戦争準備を「知り、つながり、止める」ために、「戦争のために二度とペンを握らない」ことを社是に掲げる地方新聞社との連携を目指していきたい。
新垣邦雄(当会事務局長)