メルマガ281号

今回のメルマガは、8月11日の当会の全国報告集会で登壇いただく池田年宏さんからの寄稿です。池田さんは大分敷戸ミサイル弾薬庫問題を考える市民の会運営委員として精力的に活動され、急速にすすむ軍事強化に警鐘をならし、「文化交流を行い、対話と友好を積み重ねていく努力と、戦争をしない叡智を結集させ、今の流れを止めていきたい」と訴えます。ぜひお読みいただき、11日に行われる企画にご参加ください。

住宅地に弾薬庫増設 軍民分離原則に逆行

1945年の今日、アメリカが投下した一発の原子爆弾は、その年の末までに即死を含め14万人の市民を殺した。ジェノサイドである。ただ、戦争が持つのは被害の側面だけではない。日本は3000万人ともいわれるアジアの人々の命を奪い、数々の加害行為も行った。戦前・戦中、軍国教育がなされ、戦場で心を病み、家族を失い、生活を奪われた市民は、戦争を明確に否定した日本国憲法を心から歓迎した。しかし今、その憲法は踏みにじられ、全国、特に九州大分は戦争準備の中心的な役割を担わされようとしている。
 集団的自衛権の行使容認や安保三文書によって、自衛隊はもはや専守防衛のための組織ではなく、米国の先兵としての攻撃型軍隊となっている。現在、陸上自衛隊と米軍による共同訓練「レゾリュート・ドラゴン24」が過去最大規模で行われている。米日合わせて約9000人、その内、実に4000人が陸上自衛隊日出生台演習場での訓練に参加している。オスプレイ10機の飛行訓練も含まれる。昨年は、大分と沖縄・鹿児島を結ぶ輸送訓練が行われた。今回は九州沖縄を統括するため湯布院駐屯地に配備された第2特科団の指示により、九州沖縄のミサイル連隊が発射操作をする。うるま市勝連の部隊も含まれる。これには、先月27日に日出生台演習場ゲート前で訓練の中止を求める抗議集会を行った。同日、うるま市勝連でも同様の集会が行われたと聞いている。思いを同じくする市民がそれぞれの場所で行動を起こしている。
 
軍事優先
 陸上自衛隊大分分屯地(敷戸弾薬庫)で大型弾薬庫9棟の建設が始まった。ここは周辺に大分大学や小中学校、保育園、幼稚園、病院、介護施設、商業施設などがあり、周囲3㌔に4万人が生活する住宅密集地だ。JR大分駅、大分県庁や市役所までわずか6㌔、半径10㌔の範囲には大分市の大部分が入る。
 戦争の際の民間人被害を避けるため、国際人道法は弾薬庫などの軍事目標を人口密集地やその周辺に設けないようにする軍民分離を締約国に求めている。しかし、防衛省は、攻撃対象になるかどうかは有事になってからでなければわからないと、軍民分離原則の趣旨に逆行する説明を続けている。
 さらに政府は、琉球弧の島々に住む市民の避難先として、九州・山口各県への協力を要請している。しかし、住民を守るとして進めている南西諸島の軍事要塞化・ミサイル配備と避難は矛盾する。住民の安全を守るのは、ミサイルではなく、軍民分離・非武装だ。
 防衛省が依拠する火薬類取締法は、火薬貯蔵量40㌧の場合、保安距離を550㍍以上と定めている。敷戸弾薬庫の場合、保安距離が守られているとは到底思えない。
 さらに、防衛装備庁による通達によると、弾薬庫が火災を起こした場合、「爆薬等が爆発している場合には、自衛隊員や消防隊員であっても600メートル以内に近づいてはならない」。しかし、その範囲にはすでに多くの住民が生活している。ただでさえ危険なのに、この上ミサイル弾薬庫九棟もの増設など受け入れられるものではない。
 軍事優先体制づくりは大分だけにとどまらない。既存の施設を含め弾薬庫建設やミサイル部隊他新たな部隊に関しては、宮崎陸自えびの駐屯地の弾薬庫増設、鹿児島さつま町の弾薬庫建設を伴う自衛隊誘致問題、長崎佐世保や大分玖珠駐屯地の水陸機動部隊、長崎対馬駐屯地での電子戦部隊配備、熊本健軍駐屯地の対艦ミサイル連隊、福岡の空自築城基地での滑走路延長と米軍使用の日常化、宮崎の空自新田原基地でのF35B飛行隊配備などがある。また、民間施設の軍事使用についても、九州の長崎、福江、宮崎、北九州の各空港と博多港、近隣では、四国の高松、高知、須崎、宿毛の各港湾が平素から軍事に使用される「特定利用空港・港湾」に指定されている。佐賀では空港にオスプレイの配備が計画されており、隣接地にはあらたに大規模な陸自駐屯地の建設が行われている。大分空港の指定はないが、昨年の自衛隊統合演習において軍用機の発着訓練が行われた経緯もあり、指定如何にかかわらず、軍事が優先される事態となっている。

対話と友好
 憲法はもとより、今ある平和の資源を生かし、さらに意義あるものにしていくべきだ。日中平和友好条約もある。大分市は1979年に武漢市と平和友好都市となり、平和のための活動を積み重ねてきている。また、湯布院は各国からの観光客を迎える温泉地でもある。戦争に加担する野蛮な保養地で良いはずがない。文化交流を行い、対話と友好を積み重ねていく努力と、戦争をしない叡智を結集させ、今の流れを止めていきたい。
戦争とは人間同士の殺し合いである。ミサイルや弾薬庫は命を生かすものではない。奪うものだ。そのための施設や訓練を許すわけにはいかない。沖縄では長年に渡り平和運動が続けられている。戦争に進む状況の下、今さらながらではあるが、沖縄・琉球弧での運動に学びながら、各地で進められる戦争体制づくりの情報を共有し、全国のつながりをつくっていきたい。8月には沖縄で、九月には広島で、そして12月には大分で、次々と全国共同行動が計画されている。私たちの行動こそが、次の世代に残す平和資源となる。

池田年宏(大分敷戸ミサイル弾薬庫問題を考える市民の会運営委員)

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