メルマガ255号

今回のメルマガは沖縄YWCAの糸洲のぶ子さんから寄せられたドキュメンタリー映画「金福童」の告知です。日本軍による性奴隷被害者である金福童さんの生涯を描いたこの映画は、歴史修正の動きが顕在化している日本社会を大きく問う内容となっています。ぜひお読みいただき、上映会に足をお運びください。

映画「金福童」上映にあたって

金福童(キム・ボクトン)さんが韓国から招かれ、旧日本軍の慰安婦問題を考える「ハルモニとの交流集会」(同実行委員会、沖縄キリスト教平和研究所共催)が沖縄キリスト教学院で開催されたのは、2013年5月18日のことです。多くの学生たちを前にして、金福童さんは、「戦争というものがどれほど怖いものか。戦場の前線に連れて行かれ、8年という歳月を軍人に踏みつけられ、血の涙を流す心の痛みがみなさんに分かりますか。今もって謝罪を受けることができないこの悔しさが分かりますか。過去の歴史を変えることはできません。真実を学んでください。」と訴えられました。当時、橋本大阪市長の日本軍「慰安婦」の強制連行否定、そして、この集会の数日前に「慰安婦制度が必要なのは誰だってわかる」「風俗業を活用してほしい」などの発言があり、金福童さんは怒りをあらわにされ、「証拠はないというが、この私が、何よりの証拠だ。私は苦しみながらも、いま生きて、ここにいる。これ以上の証拠がどこにあるのか!」と反論されました。
1926年生まれの金福童さんは、1940年(14歳)頃、慶尚南道梁山で、軍服を作る工場に行かねばならないとだまされ、男二人の引率で約30人の女性と一緒に、台湾経由で中国広東の「慰安所」に連れて行かれました。直ちに性病検査され、軍医にレイプされました。以後、香港、シンガポール、スマトラ、ジャワと移動、朝鮮に戻ったのは、1947年頃でした。日本軍「慰安婦」であったことを名乗り出たのは、金学順(キム・ハクスン)さんが名乗り出た翌年の1992年でした。
戦時下の沖縄においては、140数か所の慰安所が造られ、住宅を慰安所に提供させられました。渡嘉敷島の慰安所に連れて来られた裴奉奇(ぺ・ポンギ)さんは、日本復帰後の1975年に特別在留許可取得の際に、日本軍「慰安婦」であったことが新聞に報じられ、存在が明らかになりましたが、戦後も朝鮮に帰国することなく沖縄で生涯を閉じました(1991年)。晩年の裴奉奇さんに寄り添って、面倒をみておられた金賢玉(キム・ヒョノク)さんを上映後のトークゲストとしてお迎えします。
1992年に始まった沖縄の慰安所マップの調査、「慰安婦」被害者・李玉善(イ・オクソン)さんの証言、2008年の宮古島「アリランの碑」「女たちへ」建立など、高里鈴代さんを始めとする「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」や女性史研究家などによって浮かび上がってきた日本軍「慰安婦」の実相は、2012年6月に開催された「沖縄戦と日本軍『慰安婦』展において県民にも広く知られるようになりました。
「慰安婦」にされた沖縄や九州の女性たちは、前歴が「公娼」とされて沈黙を強いられており、第32軍司令部壕にいた辻の女性たちのことも知られていますが、2012年に設置された首里城下の説明版からは県の判断で「慰安婦」と「住民の虐殺」に関する記述が削除されています。
また、ここ数年、歴史教科書から「慰安婦」の記述が消え、一方で2025年度から使用される中学校教科書の検定で合格となった令和書籍は、「日本軍が朝鮮の女性を強制連行した事実はなく、『従軍』させ戦場を連れまわした事実は無かった」として書いています。軍隊と性暴力の実態、歴史をどうしたら正しく伝えていけるのでしょうか。
金福童さんの「私が何よりの証拠です!」ということばが胸に突き刺さってきます。日本軍の性奴隷被害に屈することなく立ち上がり、世界各地に出向き、人々に平和と希望の尊さを訴え続けた金福童さん。2011年の第1000回の水曜デモで除幕式が行われた「平和の少女像」はその後各地に、米国にも設置されました。慈しむように少女像を撫でる金福童さん、その思いは多くの若者たちの共感を呼び、支援されています。特に日本の朝鮮学校の生徒たちに向けるまなざしには、二度と同じような思いを彼女たちにさせないという金福童さんの祈りが込められています。
「私は希望を掴みとって生きている」―この映画は、性奴隷被害を乗り越え、女性人権運動家として歩む金福童さんの生涯を描いています。

【ドキュメンタリー映画『金福童』上映会】
上映日時:2024年6月1日(土)14:00~(開場13:30) 上映時間101分
アフタートーク : ゲスト 金賢玉(キム・ヒョノク)さん  16:00~17:00
ファシリテーター 仲里和花(沖縄キリスト教学院大学 准教授)
場  所:沖縄キリスト教学院 シャローム会館 1-1室(定員100名)
入場料:一般 1,000円、学生 無料 *予約が必要です
主  催:沖縄YWCA  共催:沖縄キリスト教学院
問合せ先:沖縄YWCA 090-5085-0765(糸洲) 又は、Mail:kazuka@ocjc.ac.jp

糸洲のぶ子(沖縄YWCA代表) 

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