メルマガ246号

昨年11月に屋久島で墜落事故を起こしたオスプレイですが約4か月後、事故の具体的原因、詳細を示さないまま、今また沖縄の空を飛び交っています。今回のメルマガは当会の共同代表であるダグラス・ラミスさんに、オスプレイの欠陥、構造上の問題、歴史的経過についてお寄せいただいたものです。ぜひご覧ください。

オスプレイ飛行再開を問う

昨年11月29日、米空軍のCV-22オスプレイが九州南方の海に墜落し、乗員8人全員が死亡した。詳細な原因を公表しないまま、3月14日に飛行を再開した。この墜落事故は、オスプレイには「未亡人製造機」というニックネームがついた数十年にわたる墜落事故の連続の続きである。

クラッチ問題
 オスプレイは、墜落しないときは戦争に便利な道具であるため、軍のスポークスマンはパイロットのミス、つまり「被害者が悪い」と、責任を押し付ける傾向があった。しかし、最近、その言い方が少し変わった。5人が死亡した2022年6月のカリフォルニアでの墜落事故の原因はクラッチの問題だと断定された。
オスプレイには複雑なクラッチ・システムがある。エンジンの中が可動部品だけではなく、エンジンも、そしてそのエンジンを持っている翼も,可動部品である。そして片方のエンジンが故障した場合、故障していないエンジンで両方のプロペラを動かすことができる。それらをつなぐ複雑なクラッチ・システムが必要となるが、複雑になる割に誤作動の可能性が多くなる。
カリフォルニアの墜落事故の原因となった「ハード・クラッチ・エンゲージメント」という誤作動によって、クラッチは一時繋がなくなり、そして突然つながると、片方のプロペラの回転速度が異なる事になる。その場合、オスプレイは逆さまにひっくり返ることがあるという。確かに、パイロットが逆さまになったヘリコプターの真下への落下を防ぐことはなかなかできないだろう。軍は、カリフォルニアの墜落事故以前に、全て墜落事故になったわけではないが、クラッチの誤作動が16件あったことを認めている。

原因明かさず

 直近の墜落事故では、爆発して海に落ちる前に、オスプレイが逆さまになって燃えているのを見た方がいるらしい。それはハード・クラッチ・エンゲージメント事故の模様だが、まだわからない。本紙記事では「防衛省などは、事故原因は特定の部品の不具合としたが、詳細は公表しなかった。一方、事故機固有の不具合ではなく、他の機体でも起こり得ると明らかにした」という。確かにハード・クラッチ・エンゲージメント以外の誤作動になりやすい複雑な部品が多くある
オスプレイの設計は素晴らしく賢い。ヘリコプターのように離着陸し、飛行機のように飛ぶことができる。しかし、飛行機のような離着陸はあまり得意ではない。エンジンを前方に回転させた飛行機モードで地上にいるときは、プロペラの羽根が長すぎて地面にぶつかる。飛行機モードで着陸または離陸するには、パイロットはエンジンを斜め後ろに回転させなければならない。そうすると、プロペラの推力が弱くなる。可能なようだが、危険である。
また、ヘリコプターの場合、エンジンが故障したら、オートローテーション状態にはいり、降下速度をある程度落とすことができる(折り紙のヘリコプターを思い浮かべてほしい)。オスプレイもオートローテーションモードに入ることができるが、プロペラの真下に翼があるため、地面に衝突したときの損傷を防ぐには十分な減速にはならないそうだ。

操縦マニュアル

 2016年12月に名護沖で起きたオスプレイ墜落事故の後、オスプレイの操縦マニュアルと乗組員のヘルメットが近くに漂着し、地元の住民が発見した。彼はマニュアルを乾燥させ、コピーを取った。オスプレイのパイロットが置かれている状況を垣間見ることができた。緊急手順と題されたそのマニュアルは、起こりうる事故や故障のリストであり、それぞれに対してパイロットが何をすべきかが書かれている。エンジンの故障、燃料タンクの漏れなど、どの航空機にも見られるものもあるが、オスプレイに特有のものもある。
オスプレイには巧妙な仕掛けが満載されており、その仕掛けのひとつひとつが誤作動の可能性がある。ポンプは、エンジンや翼を動かすためだけでなく、より小さく繊細な可動部品を作動させるためにも、油圧流体をホースに送り込む(そのどれもが漏れる可能性がある。コンピュータ化された飛行制御システムがある(これが原因でパイロットの同意なしにオスプレイが離陸したケースもある)。デリケートなギアボックスがある(オスプレイの激しい振動でバラバラになる可能性がある)。パイロットに指示を与える音声がある。巧妙な機能には必ず誤作動がある。
マニュアルには、予定外の着陸を必要とする120の緊急事態が列挙されている。それらは(1)”Land when practical;(実用的な場合に着陸する)が80件(この言い方はハッキリしないが、おそらく、畑や駐車場のような安全に着陸できそうな所を探せ、という意味だろう),(2) ”Land when possible”;(可能な場合に着陸する)が39件(たとえダメージを受けることになっても、地上に着陸させる)、(3) ”Land immediately”(直ちに着陸する)が5件(下に何が見えても、とにかく今すぐそこに着陸させる!)、(4) (マニュアルには対策としての提案がない)(2件)となっている。
このマニュアルは、実際に起こった不具合の記録としても読むことができる。その多くは、起こるまで予測できなかったものだろう(振動によって油圧ホースが隣の配線と擦れて漏れ出し、4人の乗組員全員が死亡した2000年12月の墜落事故が起きると、誰が想像できただろうか)。オスプレイの開発は試行錯誤の歴史だ。墜落したら調査し、新たな安全機能を追加し、緊急時対応マニュアルに新たな指示を追加し、また飛ばす。この過程で、50人の若い海兵隊員や航空兵が命を落とした。

代替機

 このようなプロセスを経て、オスプレイは徐々に安全性を高めていくものと思われる。しかし最近、その安全記録は悪化の一途をたどっている。過去2年間に4件の墜落事故が発生し、20人が死亡している。
米軍は、オスプレイを2050年までに段階的に廃止すると発表した。しかし、それでティルト・ローター(ヘリコプターと飛行機のモード切り替えのある航空機)を諦めたわけではない。ベル産業が今テストしているV280ヴァロールはそうである。オスプレイより小さく、役割は違うが、ティルト・ローターの「次の世代」だと言われている。そしてそのデザインがさらに巧妙なので、さらに誤作用も多いだろう。オスプレイは無くなっても、安全性を求める戦いは終わらない。
とは言っても、「安全な戦闘機」はあり得ないということを忘れないでおこう。

ダグラス・ラミス(当会共同代表、平和を求める元軍事の会琉球・沖縄支部=VFP-ROCK=代表)

※今回の寄稿は、ラミスさんのご承諾を得て、琉球新報の4月3日文化欄に掲載されたものを転載配信したものです。

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