本日5月16日午前10時から、日本、韓国、米国を結ぶオンラインの
「北東アジアにおける新冷戦秩序に反対する国際平和会議」が催されました。
日本側の報告者として「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」発起人の新垣邦雄さんが議論に参加しました。報告の論考を紹介します。沖縄が台湾、朝鮮半島の有事に対処する米軍の前線基地に置かれ続け、米国が煽り立てる「新冷戦」「中国包囲網」の軍事拠点となっていることを報告し、「軍拡競争ではなく軍縮の国際対話を目指すべきだ」と提起する内容です。ぜひお読みください。
新冷戦国際平和会議沖縄からの報告
米国が扇動する「新冷戦」の罠
沖縄の朝鮮国連軍基地ー嘉手納・普天間・ホワイト・ビーチ
私は米空軍嘉手納基地のある沖縄本島中部、沖縄市に住んでます。近くには米海兵隊普天間飛行場、米海軍のホワイト・ビーチもあります。この3つの米軍基地は、朝鮮国連軍の基地です。朝鮮戦争では在沖米軍が朝鮮半島に出撃しました。休戦中の朝鮮戦争が再燃すれば、3つの国連軍基地が再び出撃基地となります。在沖米軍は朝鮮戦争の後、ベトナム戦争、中東の湾岸戦争、イラク、アフガン戦争に出動しました。米軍は1950年代の朝鮮戦争、台湾海峡の緊張時、またベトナム戦争でも核兵器の使用を検討しました。沖縄には1967年に1287発の核兵器が貯蔵され米軍のアジアにおける最大の核戦力拠点でした。同じ年、韓国に949発、台湾には56発の核兵器が貯蔵されていたことが米国関係資料で明らかになっています。60年代の沖縄の米軍メースB地対地核ミサイル基地は中国の北京、上海、武漢、重慶など主要工業都市に照準を向けていました。米軍の沖縄占領統治は1972年に施政権が日本に返還され、核兵器も沖縄から撤去することが日米間で約束されましたが、緊急時に再び沖縄に核兵器を持ち込む日米首脳(ニクソンー佐藤)の密約が明らかになりました。
朝鮮、台湾有事に直結する米軍戦略拠点
つまり沖縄は、朝鮮半島、台湾の戦争に対処する米軍の前線基地であり、米軍核戦略拠点であるということです。日米安保条約は日米の軍事ガイドラインの見直しにより対象領域を「極東」から無制限に拡大しました。日本本土の米軍基地も強化され、日米の軍事一体化が進んでいます。沖縄だけでなく日本全土が、米軍の世界軍事戦略拠点となりましたが、在日米軍専用施設の70%が集中する沖縄はその中心です。さらに2012年の安倍政権発足以降の10年間で沖縄の島々への自衛隊のミサイル基地建設が急激に進み、朝鮮半島、台湾の戦争に直結する沖縄の日米軍備強化が加速しています。
台湾有事に備える沖縄の日米「ミサイル要塞化」
沖縄の島々の日米のミサイル要塞化は、台湾有事(中国による台湾武力統一)に日米軍が共同対処する目的です。2021年12月に共同通信は沖縄の島々を米軍が軍事拠点とし、米軍ハイマース高機動ロケット砲システムを用いて中国軍に対処する「日米共同作戦計画」をスクープ報道しました。ハイマースは米国がウクライナに供与し活躍中のミサイルで、米軍は2016年から沖縄に配備しています。米軍は核の搭載も可能とされる中距離ミサイルのアジア、沖縄、日本への配備、極超音速ミサイルの列島線への配備も計画していると報道されています。日本の防衛省は沖縄の島々に、中国本土に届く長射程ミサイルの開発・大量配備を計画しています。沖縄県民は「日米の対中国ミサイル攻撃基地化」に強く反対する声を上げています。
北朝鮮ミサイル対処でPAC3配備
「基地の島沖縄」が、朝鮮半島と台湾の軍事情勢に直結していると述べました。朝鮮半島の軍事緊張の高まりにも無関心ではいられません。最近、日本政府防衛省は、北朝鮮ミサイルに対処する自衛隊のPAC3迎撃ミサイルを沖縄の島々に配備しました。沖縄は台湾有事(戦争)、朝鮮半島有事(戦争)で再び戦場となる危機に直面しています。
先日の米韓首脳会談は北朝鮮の核ミサイルに備える日米韓の協力、核を搭載する米原潜の韓国寄港、米戦略爆撃機の巡回など米拡大抑止力の強化を確認したと報道されました。韓国世論調査で「独自の核兵器保有」支持が過半数を超えたとの報道もありました。安倍元首相が遺言した「核共有論」が日本自民党政権内で高まる懸念もあります。米韓首脳声明には「台湾海峡の平和と安定の維持」も盛り込まれました。北朝鮮、中国を念頭に置く日米韓、台湾の軍備強化は対抗する北朝鮮、中国の軍備強化を招き、東アジアの軍事緊張をいっそう高めることは避けられません。
ノーモア沖縄戦ー戦場化に抗う県民運動
「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」は沖縄が再び戦場となる軍備強化に反対し結成されました。東アジア共同体研究所(理事長・鳩山由紀夫元首相)の協力で「ミサイル要塞化」写真展を県内、国内各地で開催しています。日米のミサイル要塞化に反対する県民意思を日米政府、国際社会に発信するため大規模な「全県組織化」に取り組み、県民大会の開催を目指しています。台湾、中国にも代表を派遣し、「戦争回避」「軍拡競争でなく軍縮を」と訴えることを構想しています。
フィリピンとの連帯目指す
米国は第二次大戦後の軍事戦略で沖縄とフィリピンを重要拠点として軍事基地化を進めました。米国は台湾有事(中国の武力侵攻)に対処するため、フィリピンの基地使用を増やそうとしています。フィリピンの市民、学生、労働者が「米軍の軍事拠点となり戦火に巻き込まれかねない」と反対するデモや集会を繰り広げています。フィリピン・マルコス大統領は米軍の基地使用を受け入れる一方で、台湾有事で「米軍の攻撃拠点となることは認めない」と言明しました。「ノーモア沖縄戦の会」では今後、沖縄とフィリピンの市民が連帯して米軍拠点化に反対することを考えています。
台湾との対話交流による戦争回避
また沖縄では「ノーモア沖縄戦の会」も協力し、台湾と沖縄の「対話プロジェクト」も進められています。今年2月と4月の2度、台湾の民進党、国民党関係者やジャーナリストら有識者を招いてシンポジウムを開催しました。9月とそれ以降にも一回、計4回のシンポジウムを予定し、沖縄・日本の有識者、若者世代との対話交流により「台湾有事」の戦争を回避する道筋を探っています。
第三次世界大戦、核戦争の危機
「台湾有事」が現実となり、日米中の3大国が戦火を交えることになれば、第三次世界大戦、核戦争にすら陥りかねません。今後、数十年続くと言われる米中の軍事、経済の対立、覇権争いは軍拡競争ではなく、外交による対話で解決を図るべきです。軍事力で対抗する「抑止」が破綻することはウクライナで明らかです。ASEAN各国も「米中の覇権争いに巻き込むな」と警戒の目で見ています。第二次大戦で世界、アジアの国々の民衆は多大な犠牲を被り、大戦後もアジアの戦乱は続き、台湾、朝鮮半島に戦争の火種はくすぶり続けています。火種に油を注ぐ軍備増強を各国政府は慎むべきであり、戦争で犠牲になる民衆は国境を超えて連帯し、各国政府に軍縮を訴えねばなりません。
「民主主義対専制国家」危険な分断と対立
米ソが対立した冷戦はソビエトの崩壊で終結しましたが、「民主主義対専制国家」の分断と対立に誘導する「新冷戦」思考が新たな戦争の危機を呼び寄せているように思えてなりません。日・米・欧主導の「民主主義陣営」と中・ロ・北朝鮮の「専制主義国家」の乱暴な対立構図に扇動されて軍拡競争に突き進むことは危険です。
「平和の配当」を沖縄に
沖縄戦で県民は米国から日本を守る「防波堤」として10数万人が犠牲となりました。米ソ対決の「冷戦」終結による平和の配当を受けることなく、米軍拠点として軍事基地の重荷を背負い続け、今また「新冷戦」の軍備強化を担わされ「第二沖縄戦」の危機に直面しています。沖縄は日米の軍事植民地ではありません。「人間の住んでいる島」です。「民主主義」の正義をふりかざす米国、隷従する日本政府の好き勝手に「民主主義の防波堤」とすることは許されません。沖縄は民主主義が掲げる人権と自由、自治の正当な権利を主張します。沖縄、台湾、朝鮮半島、アジアの国々が二度と戦場とならないために、「戦争の選択肢はない」、「軍拡でなく軍縮」、そのための国境を超えた民衆の連帯を呼びかけます。
新垣邦雄(ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会発起人)