「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」は沖縄県が今年3月17日に実施した「国民保護図上訓練」に反対し、2月27日県議会での下地島空港の米軍使用に関わる嘉数知事公室長の答弁に対し異議を申し立てる趣旨で県に説明を要求しました。
県から3月30日(木)午後4時に県庁6階第一会議室で説明を行うとの回答がありましたので、山城博治、石原昌家ら共同代表が申し入れを行います。
与那国、石垣、宮古の全住民避難を内容とする図上訓練は有識者が「実効性がない」と批判し、沖縄の島々のミサイル基地化と戦争準備に県自ら加担するものとみなさざるを得ません。嘉数公室長の答弁は、下地島空港を軍事利用しないと政府の間で取り交わした「屋良覚書」「西銘確認書」に関し、「米軍の国内飛行場の出入りを認める日米地位協定5条が優先するとの認識を示した」(沖縄タイムス)ものとして容認できません。県に対し今後、有事を想定する「避難訓練」を実施せず、下地島空港の軍事利用に反対するよう、以下の要請を強く申し入れることにしています。
2023年3月 日
沖縄県知事
玉城 デニー 殿
ノーモア沖縄戦命どぅ宝の会
共同代表 石原昌家 宮城晴美 具志堅隆松 ダグラス・ラミス 山城博治
「南西諸島有事」に関して憂慮される本県に係る事案への照会について
日米両政府から「中国脅威」論が声高に叫ばれ、「台湾有事」「南西諸島有事」があたかも動かし難い現実の脅威かのように喧伝されるなか、与那国、石垣、宮古の各島々や沖縄島の各地で自衛隊の基地建設やミサイル・弾薬の搬入が著しくなった今日の情勢下、平和行政を担い県民の命と暮らしを守る県政運営に当たられるご労苦に心からの敬意を表します。
私どもの「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」におきましても、沖縄を戦場にさせないためにと昨年1月の会設立以来、数多くの講演会を開催し、県の内外に平和の尊さを、あるいは日米政府が進める強引な軍事基地強化がもたらす弊害や脅威について訴え、対話による地域の平和の確立の重要性を訴えてきました。その限りで県政とも連携ができるもだと認識しているところです。
そのような中で、私どもが昨今の県政運営について疑念を禁じ得ない何点かの事案について以下照会いたします。沖縄が再び戦場にされかねない事柄であることから、県知事自らお答えになることを要請いたします。
照会事項1
2023年3月17日実施の国民保護図上訓練がもたらす懸念・脅威について
県は、関係市町村並び自衛隊や警察など関係機関と合同で標記の図上訓練を実施しました。すでに法律として制定された国民保護法に基づく訓練であったとはいえ、沖縄が戦場になることを前提に行うものであることから、県民の間では大きな不安や訓練が強行されたことへの不信も残されたままであることを指摘しない訳にはいきません。戦場に名指しされた県内各地、各島々から「いざと言う時」の対応方の如何について照会や要望があっただろうことは容易に想像もできますが、しかし150万人近くの県民の命と暮らしを預かる県政として、まず表明されるべきは、「いかなることがあっても沖縄を再び戦場(いくさば)にはさせない」という決意であり、そのことを日米両政府はじめ外務・防衛の直接の関係機関への懸命な働きかけでなくてはならないことは言うまでもないことです。
しるに県政は今回このことを一切やっていませんし、県知事からの意思表明もなかったと思います。訓練そのものは法律上の規定があるからと法制度上の責務をあげつらうかも知れません。しかしそれでは78年前の戦争で県民を死地に送った県知事と同じではありませんか。またそのことを自覚もなく繰り返そうと仰るのでしょうか。私たちは反対です。来年1月にも再度同様な訓練を実施するとの報道もあるなか、県政の誘導によって、県民が知らず知らずのうちに戦争体制へ精神動員されることに断固反対します。そこで伺います。
➀政府の意図のままに県民を戦場に駆り立て、否応なしに戦時体制への協力を求めるこの種の訓練を以後断ることはできないか。
➁あるいは、県知事として、たとえ法律事項だとしても「県民感情に基づけば」この訓練の実施は不本意である旨、県民の命と暮らしを守るためには避難より、諸外国との関係について対話と外交により平和が維持されるべきものであることを表明する思いはないかどうか。
➂どのように説明しようとも、「有事」が発令されて以後に、10万余の先島地域住民の島外への避難が無理であることは自明のはずなのに、さも実現可能であるかの如く説明するのは住民を欺く行為と言わねばならず、声を上げて抗議しなければならない。如何か。
照会事項2
今回の図上訓練は、実質「離島住民避難訓練」です。
与那国、石垣、宮古の全住民避難を想定しています。
先島は「全島住民避難」を想定しながら、なぜ沖縄島(本島)は、「屋内避難」にとどまるのか。
「避難計画」を立案した県は、何らかの根拠に基づいてこのような内容にしたはずです。
半年以上前に産経新聞が報じていました。
総務省、防衛省職員が沖縄県庁に出向いて念入りに調整していることが記されてました。
それと県の担当職員が、「避難に必要な時間を確保するために、事態認定を早めに行ってほしい」という要望を政府側に伝えていたことが記されていました。
ここでの疑問は「沖縄県の職員が日米の作戦計画について政府側から何らかの示唆を得て、先島を「全島住民避難」と位置付けたのではないか」ということです。
端的に言えば、台湾有事に対処する日米の作戦は、「与那国、石垣、宮古で行われる」との情報を防衛省側から得て、本格的な戦闘の場所が先島であるとの想定により、「先島全島住民避難」を決めたのではないか、という疑いです。
沖縄で講演した軍事評論家の小西誠さんは、「米軍は沖縄本島から攻撃しないのではないか。沖縄本島の嘉手納などから米軍が攻撃すれば、中国と米国の戦争になり、米本国を巻き込む戦争になりかねない。それを回避するため先島限定戦争にする」とする趣旨の考えを示されていました。
つまり中国の台湾侵攻を阻止する日米の共同作戦は、与那国、石垣、宮古で実施される。島々から中国軍への攻撃は自衛隊が担い、米軍は情報提供と攻撃武器、ミサイル弾薬の供与と作戦の指揮にとどまり、米軍のGOサインを受けて自衛隊が実際の攻撃任務を実行する。嘉手納基地、普天間飛行場からの直接に出動することはしない。
法的な手続きは、「存立危機事態」を政府が認定し、米軍の要請を受けて、中国から攻撃を受けていない段階で集団的自衛権の行使を決定する。それに基づき、自衛隊が中国の洋上の艦船や陸上の基地、戦力に対して敵基地攻撃ミサイル攻撃を行う。そのような「先島限定戦争」が想定されているのではないかという疑念を払拭できません。県政が仮にそのような情報を得て、今回の「先島住民一斉避難訓練」を実施しようとしているのであればまさに言語道断の背信的行為と断じぜざる得ず、違うと言うのであれば、なぜ先島だけの「県外避難」を説明すべきです。
照会事項3
県管理の空港並びに港湾の軍事利用への歯止め、とりわけ下地島空港の軍事利用に毅然と反対することについての要請
私どもは昨年末に標記のことについて知事に対して公開質問状を送り、その遵守を要請してきたところです。その回答の際、嘉数知事公室長から「県管理の空港・港湾について政府・防衛省、自衛隊の自由使用はあり得ない」との回答をいただいて留飲を下げたところです。しかるに、去る2月28日の県内紙の報道によれば、嘉数公室長は下地島空港の軍事使用に関して「屋良覚書」や「西銘確認書」より、「米軍の国内飛行場への出入りを認めている日米地位協定5条が優先されるとの認識を示した」とされます。まさに聞捨てならない妄言と言わねばなりません。もしそのことを文字通り実行したなら、「県管理」など、軍事利用の前には何の歯止めにもならないと宣言するようなものです。県下の全ての公共インフラを軍事利用に供する県政の認識・判断に満身の怒りを込めて抗議し発言の撤回を求めるものです。下地島空港の軍事利用を許さない決意は県民の総意であり、また島々の空港・港湾の自由使用を認めないで、島々が日米両軍によって好き勝手の戦場にされることに歯止めをかけるのは、平和行政を謳う県政の県民に対する公約のはずです。発言の撤回と説明を求めます。