今回は「南西諸島軍事強化トピック」です。毎日更新している沖縄「戦前新聞」の情報を当会発揮人の新垣邦雄さんに解説していただいています。年初から軍事強化、軍拡の記事が毎日、洪水のようにあふれかえり、毎朝の記事を確認するのが憂鬱になります。しかし、この状況をしっかりとつかみ、何が起きているのか、この解説で頭の整理をし、今私たちが何をすべきかを考えていければと思います。ぜひご覧ください。
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南西諸島軍事強化トピック(2月20日~26日)
◇反戦集会26日に 県民広場で 70団体参加へ(沖縄タイムス 2023.2.23)
◇論壇 大森茂夫 沖縄で新たな平和運動 シニアと若者 心一つに(琉球新報 2023.2.23)
◇沖縄の戦場化を阻止 世代・保革超え再結集を 仲松典子(2・26緊急集会実行委員)(沖縄タイムス 2023.2.24
◇戦争の危機感共有へ あす 2・26集会 「夏に万単位の集会」(沖縄タイムス 2023.2.25)
◇「戦争反対」訴え 名護で40人抗議(沖縄タイムス 2023.2.25)
◇戦争回避へ意思示す 保革超え結集呼びかけ 軍備強化反対 きょう緊急集会 具志堅実行委員長(沖縄タイムス 2023.2.26)
1600人結集、県民大会へステップ
1000人規模を目標にした「島々を戦場にするな! 沖縄を平和発信の場に!2・26緊急集会」は、県庁前広場周辺を1600人余が埋め熱気にあふれた。日米政府による「台湾有事」対処の南西諸島軍事要塞化に歯止めをかける「全県組織化」に向けた「緊急集会」の位置づけであったが、成功と評価したい。これまでと違う今集会の大きな特徴は、若者が実行委員に加わり、彼らの意見で「争うよりも愛しなさい」とソフトなスローガンを掲げたことだ。司会を若い男女、集会宣言も若者がマイクを握った。政党や大組織の代表ではなく、一人2分のリレートーク方式でさまざまな市民活動、幅広い年代層がメッセージを発表した。政治に関心の低い若者や基地問題を敬遠しがちな子育て世代、女性層をいかに引き込んでいくかが今後の課題であり、若者が牽引役となることを期待したい。
集会でガマフヤーボランティアの具志堅隆松実行委員長は、「沖縄戦は意見を自由に言えない時代で戦争を止められなかった。今は自由に意見が言え、集会も開くことができる。第2沖縄戦を起こさないよう声を上げよう」と語った。実行委員の仲松典子さんはタイムス寄稿文で「これからを生きる若い世代こそ不安を感じ、平和を求めているはずだ」と前置き、しかし「権利の上に眠る者を法は保護しない」「私たちは沖縄の存亡を日米政府に委ねるのか」と厳しく問いかけた。
「平和は当たり前」の時代ではもはやない。日米政府は沖縄を戦場とする戦争準備を着々と進めている。「台湾有事」対処の日米共同作戦が沖縄県民の犠牲を織り込み済みであることは、米国シンクタンク・CSIS報告や防衛省シンクタンク・防衛研究所の提言などで明らかだ。県民は座して死を待つわけにはいかないのだ。
長射程ミサイル配備を争点に
県民は「戦争の危機」をリアルに認識する必要がある。私たちは「沖縄の存亡を日米政府に委ねる」わけにはいかないし、声を上げ、「日米政府が嫌がることをする」(柳澤協二氏・3月1日、北谷町の講演会)ために知恵を絞らねばならない。「日米政府が嫌がること」、その一つに柳澤氏は「長射程ミサイルの沖縄配備を選挙の争点にする」ことを提案した。
県内各種選挙の争点に、中国に届く敵基地攻撃「長射程ミサイル配備の是非」を提示して立候補者に踏み絵を踏ませ、選挙の結果を通して「敵ミサイルの攻撃目標となる長射程ミサイルの配備に反対」の民意を日米政府に示せ、という提案である。
今回の「緊急集会」の成功をバネに、数次の集会、最終的には「万人規模」の県民大会を目指している。米軍車両を焼いたコザ暴動(1970年12月)は、ひそかに現場視察したランパート高等弁務官を震撼させた。日米政府を揺るがす大規模な集会、反対運動を起こす必要がある。筆者(新垣)は個人的に、嘉手納基地包囲、普天間基地包囲などの大規模な大衆行動があっていいと考えている。米軍基地だけでなく焦点の自衛隊基地を取り囲む包囲行動があっていい。基地の機能を停止させる目的ではなく、「ミサイル基地、台湾有事に連動する基地使用に反対する」民意を示すためだ。
◇不戦こそ最大の教訓 安全保障大転換 河野洋平元議長に聞く 閣議決定民意欠く(タイムス 2023.2.20)
◇シンポ「戦争を回避せよ」に寄せて 外交こそ最優先課題 台湾有事で「究極の選択」(琉球新報 2023.2.21)
◇寄稿 「台湾有事」狂想曲 豊下楢彦 戦争回避望む国多く 独自外交「県の専管事項」(琉球新報 2023.2.23)
河野氏「憲法、専守防衛と相容れぬ」
自民党の保守本流を歩んだ元首相の福田康夫氏、党総裁や衆院議長を務めた河野洋平氏らが「安全保障大転換」を批判、「日中国交正常化の原点に戻れ」と警鐘を鳴らしている。河野氏「(防衛費拡大で)立派な軍事大国だ」「(反撃能力は)外国の領土・領海内で武器を使用し破壊を試みるものだ。憲法の精神や専守防衛と相容れない」「重大な政策転換なのに国民に諮ったことは一度もない」「政府に都合の良い有識者を集めて見解をとりまとめ世の中全体の流れのように見せて推していく手法。横着な民主主義になってきた」「戦車と大砲と爆弾で国際紛争を解決するなどということはありえない」「戦というものはいったん始めたら終わらない。大変な犠牲も出る」。
「中国と米国の戦争」⇒自衛隊参戦⇒「日本が中国と戦争」
元内閣官房副長官補・柳沢協二氏は「台湾有事が日本有事に自動的になると思っている政治家が多い。だが台湾有事は中国と台湾の戦争である。そこに米国が参戦して中国と米国の戦争になる。米軍は、沖縄を含む日本の基地を拠点に戦う。それに日本が同意し、あるいは自衛隊が米軍とともに参戦すれば、日本が中国と戦争する「日本有事」になる」と説明する。
非常に分かり良い。そもそも「台湾有事は日本有事」ではない。米軍が台湾を守るために中国との戦争の口火を切ると「米国と中国の戦争」になる。「ノーと言えない」日本が、在沖、在日基地からの米軍の出動を許し、あるいは自衛隊が米軍に付き従うときに「日本と中国が戦争」=「日本有事」のはめに陥る、というのである。
日本は「ノー」と言えるか
柳沢氏は続ける。「日本の基地からの米軍の出撃は、安保条約に基づく事前協議事項である。存立危機事態などを認定して自衛隊を出すのも、日本の判断事項である」という。
「米国と中国の戦争」に「日本を巻き込むな」と日本政府が米国にものを言えるのか。つまり「在沖、在日基地から米軍が出動するのはまかりならん」「米軍が中国と戦争をしても自衛隊は支援しません。参戦しません」と言えるのか。「ノーと言える日本」を取り戻せるか、である。
米軍が立案、犠牲は台湾と沖縄
国際政治学者・豊下楢彦氏は「米国の基本戦略はウクライナで具体化されている「セッティング・ザ・シアター」(戦場を準備)であろう。米軍が行なうのは立案、訓練、物資の配置、作戦拠点の設置などであって、戦うのは台湾と自衛隊であり、犠牲となるのは台湾と沖縄の住民。(略)米軍はあくまで後方支援」と見る。
日米は戦争準備に狂奔するが、「東アジアにはASEAN諸国やインドなど『米中対決、米中戦争に巻き込まれたくない』との立ち位置をとり、緊張緩和の役割を果たそうとする国が多数存在する」。米国シンクタンクCSIS報告書は「沖縄県民が被る膨大な犠牲は全く無視している。(略)日本政府も県民保護に取り組もうとしていない」。であれば沖縄が「戦争回避を求める東アジアの国々や自治体、市民との連携を深めるために自治体外交を展開する」ことは「全くもって県の『専管事項』である」という。
◇弾薬搬入 日時伏せる 石垣 陸幕長「安全のため」(琉球新報 2023.2.22)
◇石垣に車両200台搬入へ 来月上旬 海自艇で 公道使用か(沖縄タイムス 2023.2.22)
◇国と県、早く避難計画を 中山石垣市長インタビュー(琉球新報 2023.2.26)
◇降下訓練を与党市議容認 うるま「ロマンティック」発言も(沖縄タイムス 2023.2.23)
◇ミサイル配備で住民説明会要請 うるまの市民団体(琉球新報 2023.2.25)
反撃能力=敵基地攻撃能力をどのような局面で行使するのか岸田首相、浜田防衛相ともに「手の内を明かせない」などと説明を拒否し続けている。安保3文書で宮古、石垣、うるま市に配備する地対艦ミサイルの長射程化、長射程の離島防衛用高速滑空弾、極超音速ミサイルの開発計画を盛り込みながら、配備先は明らかにしない。「防御不能」とされる極超音速ミサイルは北京にも届く射程3000キロの報道もある。長射程ミサイルの配備先は有事の際に、敵ミサイルの標的となる懸念があり、自衛隊基地の地元にとっては重大な関心事だ。
防衛局、住民説明会を拒否
ミサイル配備に反対するうるま市民の会が沖縄防衛局に同局、防衛相による「住民説明会」を要求したが、同局次長が「説明会の開催予定はない」と拒んだ(新報)。タイムスによると「周辺住民に新たな負担や安全安心に関わる影響を与えるものではない」と説明したという。ありえない説明内容だ。それまでなかったミサイル部隊が配備されミサイル弾薬が持ち込まれる。それも当初の百数十キロの射程が1千キロに延長され、うるま市への配備が確実視されている。ミサイル弾薬の近くに暮らす平時の不安、有事に敵ミサイルの標的となる懸念を住民が抱くのは当然だ。防衛局が住民説明会の開催すら拒むことは責任放棄であり、容認できない。ミサイル部隊を容認するうるま市長の対応が問われる。
石垣市長「長射程ミサイル容認」
中山義隆石垣市長は共同通信の取材に「長射程ミサイル自体は容認だ。反撃能力の保有は抑止力になると思う」と答えた。駐屯地が攻撃目標になる懸念から観光客が来なくなるのでは、という問いに「それはない。沖縄本島にも米軍基地があるが、観光客は毎年来る」と答えた。有事の際の住民避難について、「島にとどまるのは得策ではない。基本的に島外避難が必要だ」「住民だけでなく、観光客を含めて6万~7万人を逃がさないといけない」「台湾からの避難民受け入れも検討しなければならない」と答えた。
記事を読み、「本気か」と市長の真意を疑った。防衛省が石垣市への長射程ミサイル配備計画を明らかにしない中で「長射程ミサイル容認」を公言し配備に道を開いた。敵の攻撃を招きかねないと危惧する市民にどのように説明するのか。「反撃能力保有が抑止力になる」と信じ込む口ぶりだが、抑止が破綻し有事になれば「観光客含め6~7万人の避難」に取り組むという。「抑止力」を信じながら「有事」に備える論理矛盾がある。石垣島の全住民避難は非現実的ではないか。観光への影響はない、と断言するが「基地のある沖縄本島にも観光客は来る」は説明になっていない。米国の9.11テロ後、米軍基地が集中する沖縄は風評被害で修学旅行など団体客が壊滅的にキャンセルされ、沖縄観光が大きなダメージを受けたことをよもや忘れてはいまい。こうした多くの疑問点に石垣市長は答える責任がある。
沖縄の戦場化が迫り来る中で「長射程ミサイル配備」を受け入れるか否かが県民にも自治体の首長、議会にも問われる。容認する首長を市民が容認すれば、長射程ミサイルを自ら受け入れたことになる。「権利の上に眠る者を法は保護しない」。危機をリアルに感じ取り、反対の声を上げ、行動するしかない。同時に容認する首長の責任を追及することだ。
2月20日(月)https://nomore-okinawasen.org/5934/
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2月23日(木)https://nomore-okinawasen.org/5989/
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寄稿 「台湾有事」狂想曲 豊下楢彦 戦争回避望む国多く 独自外交「県の専管事項」(琉球新報 2023.2.23)
降下訓練を与党市議容認 うるま「ロマンティック」発言も(沖縄タイムス 2023.2.23)
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2月24日(金)https://nomore-okinawasen.org/6015/
沖縄の戦場化を阻止 世代・保革超え再結集を 仲松典子(2・26緊急集会実行委員)(沖縄タイムス 2023.2.24)
戦争の犠牲 いつも民衆 沖縄戦体験者ら思い寄せ ウクライナ侵攻1年 日本の軍備増強にも懸念(琉球新報 2023.2.24)
有事にらみ 沖縄負担増 ウクライナ侵攻1年 識者に聞く 住民保護 政治の責任 自治体輸送力把握を 国士舘大学 中林啓修准教授 / 日米安保頼み懸念も 台湾侵攻 対話で防げ 上智大 宮城大蔵教授(沖縄タイムス 2023.2.24)
2月25日(土)https://nomore-okinawasen.org/6038/
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米軍 台湾派遣4倍へ 対中国で訓練拡大報道(沖縄タイムス 2023.2.25)
2月26日(日)https://nomore-okinawasen.org/6054/
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国と県、早く避難計画を 中山石垣市長インタビュー(琉球新報 2023.2.26)
新垣邦雄(ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会 発起人)