今回は当会発起人であり、平和市民連絡会の共同世話人である宮城恵美子さんからの寄稿です。11月8日から始まった日米統合共同演習キーン・ソード23、中城湾港、与那国空港の軍事利用への反対の動きを2回にわたって掲載します。沖縄県への申し入れ、今回の演習が意味するもの、さまざまな観点から鋭く切り込んだ内容は必読です。
映像「与那国に戦車~打ち砕かれた自立ビジョン」をホームページで公開しています。
https://nomore-okinawasen.org/4098/
11月17日、共同統合演習「キーン・ソード23」の一環として、陸上自衛隊は16式機動戦闘車を与那国空港に下ろし、島内の県道を跋扈しました。国につぶされながら、希望を捨てず、新しい自治の在り方を具体化した「与那国自立ビジョン」を掲げつづける田里千代基さん、主権者として意見を表明をすることの大切さ、分断された人々が再度つながることの難しさを実感しながらも野菜作りや、地域のコミュニティの中で新たな関係を見出そうとする猪俣哲さん、活動は休止しているものの、解散せず声を上げ続ける狩野史江さんへのインタビューに引き込まれます。そして演習によって翻弄される島の様子、一顧だにしない演習を強行する自衛隊の姿を発起人の三上さんが撮影し、15分の映像にまとめていただきました。ぜひぜひご覧いただき、拡散してください。よろしくお願いします。
(以下は前回に引き続き再掲です)
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「中城港湾・与那国空港の自衛隊使用許可反対と日米共同統合演習について①」
11月8日、「日米共同統合演習」の実践が開始された。市民は那覇市、糸満市、うるま市、北谷町、他から中城湾港に朝から馳せ参じた。朝、自衛隊とその車両が、民間船を使用して荷下ろしするというので、それに抗議するために、連絡を取り合って結集した。その日、沖縄平和市民連絡会は那覇から、コロナもありバスの間隔をとって24人が参加した。尚、平和市民連絡会は私が共同世話人を務めている団体である。平均年齢70余の団体である。
当時の様子を沖縄タイムスは11月9日に掲載、見出しは「沖縄を戦場にするな」「民間港使用市民ら抗議」「中城湾港 県警が強制排除」とまさに見出しの通りの行動となった。
この行動のいきさつには次の様な動きがあった。この演習は自衛隊と米軍の合同演習である。統合の意味であるが、私は次のように考えている。自衛隊も陸・海・空と所属が別々、米軍も陸・海・空・海兵隊と各々違う部隊である。メインの根拠地・駐屯地も日本全国に分散している。日本各地に存在している部隊が動くのである。日米両軍のその傘下の各部隊が一斉に琉球列島に集結して戦争事態に適合した行動がスムーズにとれるのか。欠陥や不足点、問題点などが判明するはずだ。岩国や築城あるいは佐世保から多人数の部隊が移動して来て一つの指揮の下、統制の取れる動きをするには演習が必要だということだろう。沖縄の周辺に集結して闘う。そのための動きが「一糸乱れず」行動できるかは実際に港も飛行場も公道も使ってみるしかないのであろう。使いかってが悪いのかスムーズに動けるか、時間・ペースも弾の打ち合い方も確認する必要があろう。それを念頭に各部隊を「共同統合」して行うものだと私は認識している。
沖縄戦の教訓は「軍隊は住民を守らない」ことである。何度でも繰り返し沖縄県庁は肝に銘じてこの教訓を県政の魂の中に据えないと、日本国家のみならず米国も交えた巨大な軍事力が一体となって沖縄・琉球弧に押し付ける政策に抗うことは出来ないだろう。日本の自衛隊であろうと米軍であろうと決して住民を守らないのである。軍隊が琉球弧に存在すること自体が緊張を高める上に演習していけばもっと撃たれるリスクを高める。自衛隊と米軍を区別して曖昧な姿勢をとるべきではないことを強く述べたい。沖縄県庁こそが住民の命を守る為に「楯となり」行動しなければいけない。
そもそも「日米共同統合演習」は、「台湾有事」で中国をたたくために沖縄を拠点として戦争する作戦、「日米共同作戦計画」を推進するために、公式日程11月10日から11月19日まで日米共同統合演習が沖縄で大々的に展開されようとしている。既に11月1日から準備に入る動きを示している。「日米共同作戦計画」とは沖縄の島々で自衛隊と米軍が合同して中国と戦争する作戦計画である。今回の演習は、沖縄で再び戦争するための演習である。
今の戦争は沖縄戦のような艦砲射撃の戦争ではなく、ミサイルを打ち合う。沖縄住民には逃げる暇も隠れる場所もない。沖縄県民はこのような「戦争計画」を日本政府から説明も受けていない。「演習」は認めることができない。日本政府はアメリカのお先棒を担いで軍拡を推し進め、軍事予算を倍増させて射程が1000キロメートル以上のミサイルを1600発増産して、南西諸島に配備するという。配備されるとその場所が反撃を受ける。日米が撃てば当然に中国も撃つ。私たちは日米戦争政策を止めねばならない。
【中城湾港の闘い】
統合演習に反対する最初の行動が中城湾港の闘いである。地域から反対の声を上げていこうと呼びかけた。市民は沖縄県との10月31日の交渉では県民の命を守るために、沖縄県が演習反対を明らかにすべきと主張してきた。沖縄県は演習反対との立場を出していないのは残念である。そこで、沖縄平和市民連絡会は日頃から共闘の歩調をとっている「うるま市・島ぐるみ会議」「嘉手納ピースアクション」と共催して、民間湾港使用の拠点にもなっている中城湾港で抗議の行動を行うことにした。
自衛隊車両と隊員の上陸は、演習の本格化の始まりである。市民約150人程が集まり声を上げた。警察・機動隊に市民は「ごぼう抜き」されて、座り込む市民の隙間から自衛隊員や軍車両部隊は出て行った。市民の激しい怒りと怒涛の中、反対運動の阻止闘争の中で始まった。
さて、10月31日に市民と県は交渉した。市民側から強く要望したしたことは、与那国空港は県管轄なのだから、許可しない権限をもっていると。しかし市民の意見を無視した。県は妥協している。新聞紙上で「防衛省は県に空港の使用届や輸送機の重量超過に伴う許可申請書を提出。県は9日までに条例に基づき審査し、短時間であれば駐機などは可能として許可した」ということが分かった。県は「公道の走行のとりやめや車両の変更を求めた」というが、空港を認めたことと矛盾する。そして実際に「演習」は10日から19日まで実施された。11月の3分の2は、日米共同統合演習が琉球列島で大規模になされたことを日本全国の人も知ってほしい。米軍から1万人、日本自衛隊は2万数千人とか3~4万人が動いたと思われる。更にオーストラリアやNATOイギリス軍までも参加したというから実数は分からないが、政府はぜひそれも明らかにして頂きたい。私たちは沖縄の住民は、再び沖縄を戦場にさせないために行動している。ぜひ、本土の人々も動いてください。お願いします。
この度の県交渉について要請した文章を資料として掲載する。
【資料】
2022年10月11日
沖縄県知事 玉城デニー様
那覇市大道169-4コーポ花城B102号
すぺーす結気付
沖縄から基地をなくし世界の平和を求める市民連絡会
(略称:沖縄平和市民連絡会)
代表世話人: 高里 鈴代 宮城 恵美子
真喜志 好一 松田 寛
要 請 書
日々の県政運営に心から敬意を表します。
さて、自衛隊が本年11月、米軍との共同統合演習で、沖縄県管理の中城湾港に、105ミリ砲を搭載した装輪装甲車「16式機動戦闘車」(MCV)や、敵のミサイルを迎撃する地対空誘導弾パトリオット(PAC3)等を陸揚げする計画があると報道されました。
これは、台湾有事をにらんだ南西諸島での戦闘を想定した訓練で、自衛隊による県内の民間港使用を既成事実化することを狙ったものです。しかし、こうした訓練は中国との緊張を一層煽るだけではなく、民間地域での訓練は住民生活を脅かすものです。
昨年の自衛隊の統合演習では、海上自衛隊の輸送艇が石垣港、与那国島の祖納港に入港しただけではなく、中城湾港でも民間チャーター船により、装甲車やトラック、対空ミサイル発射機とみられる車両80台が陸揚げされました。県内で初めて自衛隊による民間港を利用した輸送訓練が実施されたのです。今回は、米軍との共同統合演習であり、今後の米軍による民間港利用も念頭においたものと考えられます。
沖縄県は住民の命や生活を守るためにも、沖縄を再び戦場とさせないための取組が求められています。そうした観点から、下記のとおり要請します。
記
1.本年11月に予定されている中城湾港を使用した自衛隊と米軍の共同統合演習の全容を明らかにすること
2.中城湾港の管理者として、自衛隊の船舶、また自衛隊車両等を運搬するチャーター舶等の中城湾港使用を許可しないこと
3.今後、米軍による県管理港湾の使用を絶対に認めないこと」
以上、県に要請したが、住民に対して県からは1にある「全容」が明らかにされていないこと、2の中城湾港の使用を許可したこと、3については返答がないことを報告し、②に続く
宮城恵美子(ISF理事、平和市民連絡会共同世話人、当会発起人)