今回のメルマガは、毛利 孝雄(辺野古土砂全協・首都圏グループ/沖縄大学地域研究所特別研究員)さんからの寄稿です。辺野古土砂搬出反対全国聯絡協議会(土砂全協)では防衛省に対して4月10日に辺野古埋立土砂調達に反対する第一次署名を提出し、辺野古埋立工事についての交渉を行います。これまでの経緯を端的にまとめ、問題の本質を衝いた本稿をぜひお読みください。また本文中で案内されていますリンクから緊急署名にもご協力ください。
署名はこちらから ⇒ dosyazenkyo.com/index.html
急浮上する奄美からの辺野古大浦湾埋立土砂調達
-4月10日に辺野古新基地工事をめぐり防衛省交渉-
■「辺野古は唯一の選択肢」の現実
「辺野古は唯一の選択肢」――つくづく都合の良い理屈を思いついたものだと思う。「唯一」だから批判は受け付けない。どんなに時間と費用がかかろうが、やってる感は演出できる。工事を請け負う大手ゼネコンにはその間の利益は保証され、一部は沖縄の土建業にまわり基地反対の世論分断も期待できる。米軍にとっても使い勝手のいい普天間基地を、工事の続く間使い続けることができるわけだから願ったりのはずだ。そして、新基地完成の可否を問わず、埋め立てた土地は国有地になり沖縄県の権限を排除できる。
国は昨年1月から代執行で大浦湾側の工事を強行しているが、工事の順調な進展が約束されているわけではない。天井知らずの工事費や前例のない軟弱地盤改良工事については多くの指摘がされている通りだが、大浦湾側の埋立てに使用する肝心の土砂についても、未だ調達先すら明示できないでいる。そして、ここに来て急浮上しているのが、奄美大島からの土砂調達の動きだ。
■ 辺野古埋立土砂をめぐる経緯
埋め立て土砂をめぐる経緯を、簡単に振り返っておきたい。
辺野古埋立て土砂については、当初、7割を九州・瀬戸内海の西日本各地から調達することになっていた。辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会(以下、土砂全協)は、この時、西日本各地の土砂搬出予定地をつなぎ、「どの故郷にも戦争に使う土砂は一粒もない」を合言葉に、奄美大島で発足した。全国署名にも取り組み、62万筆を超える署名を国会に提出してきた。
一方で、沖縄県は、県外からの土砂持ち込みに対し「土砂条例」を制定し、特定外来種対策の徹底などの規制をかけることになる。防衛省は、「土砂条例」をクリアーするために、外来種対策の実験などを繰り返してきたが、有効な方法を見いだすことはできなかった。
結果、軟弱地盤改良に伴う設計変更申請の段階で、西日本各地からの土砂調達をあきらめ、沖縄島南部地区を中心に県内からの調達に舵を切ることになる。
この防衛省方針に対しては、沖縄島南部地区が未だ多くの沖縄戦戦没者遺骨が眠る土地であることから、県民はもとより宗教者の皆さん、全国の自治体からも決議など反対の声が広がることになる。そして、昨年の「慰霊の日」には、岸田首相(当時)が「県民の思いはしっかりと受け止める」と言明、南部地区からの土砂大量調達は困難となった。
■ 奄美大島からの土砂調達を止めれば辺野古は完成しない
こうした中で、防衛省は昨年8月以降、奄美大島現地での事前調査に入り、2025年度中の辺野古への土砂(石材を含む)搬入開始に言及した。奄美からの土砂搬入に舵を切ったことは間違いないが、沖縄島南部からの土砂調達もあきらめたわけではなく双方からの調達を狙っているはずだ。
採石事業をめぐる奄美大島の実情は、全国的にはほとんど知られていないと思う。「沖縄県土砂条例」との関連では、2016年の那覇空港第二滑走路埋立事業で奄美大島から石材が調達されたが、すべての採石場と搬出港で特定外来生物が確認された経緯がある。防衛省は何らの対策も明示していないが、今後、県の土砂条例を骨抜きにするために、様々な画策が行われることになるだろう。
注目したいのは、防衛省の設計変更申請書では、奄美大島から辺野古へ最大1,190万立方m(ダンプトラック約250万台分)の土砂調達が可能としている点だ。それは、辺野古埋立土砂総量の3分の2にも相当する。つまり、奄美大島からの土砂搬出を止めることができれば、辺野古新基地建設は止めることができるのだ。
■ 辺野古と一体で進む奄美の軍事化
奄美大島は、今日に至る南西諸島への集中的自衛隊配備とミサイル基地化がスタートした島。オスプレイ基地となる辺野古新基地は、仮に完成すれば自衛隊との共同使用が密約されている。そのオスプレイ低空飛行訓練は奄美で常態化している。今後は軍港と弾薬庫増設も計画されるなど奄美と沖縄は軍事的には一体の運用が進んでいる。そして軍事化の波はいま西日本へ、全国へと広がる。
辺野古・安和・塩川・宮城島はもとより、沖縄島南部地区からの土砂搬出を拒否してきた沖縄の皆さんの粘り強い闘いに呼応するために、奄美大島から辺野古埋立のための石材・土砂を調達させない! それは何より本土側に課せられた、そして責任を持つべき沖縄連帯の課題である。
※現在、土砂全協では奄美大島からの辺野古埋立土砂調達に反対する緊急署名を呼びかけている。署名用紙・チラシ・ネット署名は、以下の土砂全協HP(土砂全協で検索)から-。https://dosyazenkyo.com/index.html
※また、下記チラシの要綱で、来る4月10日(木)に署名の第1次署名提出と辺野古工事全般について防衛省交渉を行う。首都圏の皆さんの参加を呼びかけたい。
毛利 孝雄(辺野古土砂全協・首都圏グループ/沖縄大学地域研究所特別研究員)
