今回のメルマガは今日報じられた長射程地対艦ミサイルの「九州先行配備」について、小西誠さんから寄せていただいたコメントです。いよいよ沖縄―西日本全域を戦場にする準備が明確になりました。ミサイルを配備するということはイコール標的になるということです。自分たちのところには飛んでこない、自分たちのところは安全だということが全くの幻想であることを理解しなければなりません。戦後80年、重大な局面を迎えようとする中、本稿をぜひお読みいただき、危機感を一人でも多くの方と共有し、戦争を止める力に変えていただきたいと思います。
長射程地対艦ミサイルの「九州先行配備」とは
本日(3月16日)の共同通信・沖縄各紙・東京新聞が、一斉に長射程地対艦ミサイルの「九州先行配備」を報じました。
この配備は、昨年からすでに九州―大分の地元紙では報じられていますから、長射程地対艦ミサイル「最終決定」だと考えて間違いありません。
つまり、この長射程12式地対艦ミサイル配備先は、陸自湯布院駐屯地の第8地対艦ミサイル連隊です。ここにはこの長射程地対艦ミサイル連隊配備を予定した、第2特科団(九州・沖縄―琉球列島全域のミサイルを指揮統制)が、昨年24/3に編成されています。
ただ、この湯布院への配備は、やはり「先行配備」で、「南西諸島」の第7地対艦ミサイル連隊をはじめ、順次12式地対艦ミサイルは、この長射程地対艦ミサイルに置き換えられるのは明らかです。つまり、単なる「量的生産体制」の問題に他なりません。
お伝えしていますように、九州・佐世保には、「トマホークの先行配備」のために、イージス艦「ちようかい」の改造が急ピッチで進みつつあります。このトマホークも、佐世保が先行し、順次、舞鶴・呉・横須賀へ配備されることは明らかです。
現在、南西シフトによる琉球列島のミサイル基地化の上に、この九州への長射程地対艦ミサイル、トマホークの配備という、対中国戦争の恐るべき事態が生じていますが、残念ながらこの状況への国民的危機感が弱すぎます。この状況は、防衛費2倍化も、対中国ミサイル基地化も、「単なる軍拡」だという反戦運動周辺の認識にあるのではないかと思います。
しかし、これは「単なる軍拡」ではありません。「台湾海峡有事」を始めとする「対中国戦争」を想定・射程にした「大軍拡」です。
また、このような急激な「大軍拡競争」を推し進めることが、台湾海峡をはじめ、東・南シナ海でいつ軍事的衝突が起きてもおかしくない事態をつくりだすことになるのです。
考えてみても明らかです。中国を射程にする、この長射程式地対艦ミサイル配備に対して、中国が黙ってみているはずがありません。80年代のトマホークを始めとした中距離弾道ミサイル配備が、ヨーロッパの激しい軍拡競争を引きおこしたように(INF条約へ)、この日本の長射程地対艦ミサイル・トマホーク・極超高速ミサイル配備は、間違いなく、激烈な事態を引きおこすでしょう。
このような意味からして、私たちは、今現在、重大な時期―危機にあることを認識すべきです。沖縄―九州から全国に、この長射程地対艦ミサイル配備―トマホーク配備に反対する声を広げましょう。
小西誠(軍事ジャーナリスト)


沖縄タイムス 2025.3.17