朝鮮半島から日本列島、沖縄・琉球弧、さらに台湾、フィリピンまでをつなぐ所謂「第1列島線」とよばれる島々で、新基地建設、ミサイル配備、弾薬庫新設等が強行され、東アジアの軍事化が急激に進められています。中国脅威論がふりまかれ、「台湾有事」への軍事介入を念頭においた大規模な合同軍事演習が日常化しています。日米韓に加え、フィリピン、オーストラリア、英国、カナダまで加わったアジア版NATOともいえる軍事連携の拡大は、東アジアの軍事的緊張を極度に高めています。
大軍拡と軍事同盟強化は平和ではなく戦争への道です。私たちは対話と外交による平和の実現を求めます。国内的には沖縄からの呼びかけに応え、全国各地の反基地運動がつながり軍事化をとめるネットワークを作る運動が広がっています。この国内連帯の動きに合わせて、ZENKO/ZHAPでは、日米韓台の市民がつながって、東アジアの軍事化を許さない国際連帯のネットワークづくりを進めています。
今回はその企画での当会新垣事務局長の講演内容を配信します。ぜひお読みください。
戦争準備に抗う沖縄―日本―アジアの市民連帯
沖縄は米日政府の軍事植民地であり、県民は軍事植民地の奴隷である。国際政治学者の豊下楢彦氏
は「今日のガザは明日の沖縄」と指摘し、ノーモア沖縄戦の会はその横幕を掲げ、軍事植民地からの解放、人権回復を訴えている。豊下氏は米軍、自衛隊が台湾有事に向けて沖縄の島々に「無人機・ミサイル」を集中し、「沖縄は無人島ではない。県民の命を無視する作戦計画は、ガザと同様に国際人道法に反する」と指摘している。沖縄はガザと同様、周囲を海に囲まれ、逃げるすべがない。ミサイル・無人機戦争から沖縄県民が絶滅を免れるには「台湾有事」「朝鮮有事」「インド太平洋」の軍事拠点を無くし、米軍・自衛隊を沖縄から追放するしかない。
【米軍事植民地の歴史】
米国が沖縄を核戦略、海外出撃拠点としてきた80年を簡単に振り返る。
1945年 米軍は沖縄島に上陸した4月1日から嘉手納飛行場の滑走路建設に着手し、6月に2250メートル滑走路を完成。B29で日本本土爆撃を開始した。
私は嘉手納基地近くに住む。毎朝7時半に同基地の「進軍ラッパ」で起こされ、午後10時の「就寝
ラッパ」を聞いて眠る。嘉手納基地広報部に問い合わせたところ「嘉手納基地が出来て以来、毎日音
楽を流している」と回答を得た。
米国は1945年、統合参謀本部(JSC)の海外基地ネットワーク戦略で最優先の「主要基地区域」に
沖縄(琉球)、フィリピンを位置づけた。住民を追い出し「嘉手納」「普天間」「ホワイトビーチ」など米軍基地を造り、1950年代にはさらに大規模な軍用地収奪をし、伊江島で核模擬弾投下訓練を始め、1974年まで続けた。佐藤栄作首相は1971年の国会・沖縄返還特別委員会で沖縄の米軍用地接収は占領下での収奪を禁ずる「ハーグ陸戦法規に反していた」と認めた。
米国防総省資料によると1967年に沖縄に1287発の核兵器を貯蔵した(同年、韓国に949発、台湾56発)。沖縄への核配備は米国の「中国封じ込め」戦略に基づく。
1958年の台湾海峡危機で米軍は沖縄から中国福建省への核攻撃を検討。ダニエル・エルズバーグ
文書に記され、共同通信が配信した。1962年、キューバ危機時に、読谷村のメースB核ミサイル基地に4発の誤発射命令があり、寸前に発射を回避。那覇基地のハーキュリー核ミサイルが海に誤発射された。兵員が「爆発すれば那覇は消えた」と証言(NHKが報道)。
1998年、米公文書で在沖海兵隊が「沖縄防衛計画」を策定。「外国軍の侵攻に核兵器で対抗し、米
軍が沖縄から撤収する際には嘉手納、普天間など主要施設を核自爆攻撃で破壊する」計画と報道され
た。沖縄に住む住民の命を無視する計画である。
【性加害事件】
1955年、米兵が6歳幼女を強姦殺害遺棄。犯人米兵は軍事裁判で死刑判決を受け、米本国移送後
に大統領恩赦で釈放。病死後に軍人墓地に埋葬され、米政府が「兵役を讃える」墓石を贈った。
1995年、米兵3人が少女を強姦。懲役6年6月~7年。1人は服役後に米国で女子大生を暴行殺
人後に自殺。
2016年、20歳の女性が元海兵隊員に棒で殴られ拉致、強姦殺害、死体遺棄された。
2023年~25年 米兵による性加害事件が続発。97年日米合意に反し事件が沖縄県への通知、
マスコミ公表がなされず、米兵事件の隠ぺいが問題化している。
戦後、おびただしい数の米兵事件、殺人、強姦、米軍機の墜落事故などで多数の県民が犠牲となっ
ている。一方、県民が米兵や米国女性を殺害、レイプした事件を耳にしない。米軍事植民地下で、沖
縄県民は「一方的被害者」であり続けている。
【米軍世界核戦略と冷戦体制】
1969年、日米首脳声明は「1972年、沖縄返還(日本への施政権返還)」表明に「台湾条項」
「韓国条項」を盛り込み、「台湾有事」「朝鮮有事」への日本の支援とベトナム戦争への支援継続を表明した。沖縄返還後も在沖米軍基地の「自由使用(自由出撃)」、また「核密約」により「緊急時に沖縄への米軍核持ち込み」を確認した。米軍は1974年まで伊江島の核模擬爆弾投下訓練を続けた。
模擬爆弾訓練を行った核攻撃機 F100戦闘機は1959年、宮森小学校に墜落し小学生ら17人が死
亡。61年にも沖縄で墜落し2人が死亡。同じ日に福岡県に同型機が墜落し4人が死亡。明らかな欠
陥機で「アメリカ空軍で運用期間中に889機の F100が事故で失われ391人が死亡」(ウィキペ
ディア)と記される。
2021年4月の日米首脳声明は「台湾海峡の安定と平和」に言及。バイデン米大統領は「拡大抑止
(日本防衛への米国核の使用)」を表明した。バイデン大統領は2022年、東京での記者会見で「台
湾有事への軍事的関与」に「イエス」と表明した。
【台湾有事日米共同作戦】
在沖・在日米軍は朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争、アフガン戦争の出撃・兵站基地
であり続けた。日米は「台湾有事日米共同作戦計画」を策定、沖縄を戦場と想定し、2016年以降、
宮古、石垣、沖縄島、奄美大島に地対艦・地対空ミサイルを配備、与那国島に地対空ミサイル配備を
計画。2022年、防衛3文書で中国に届く「敵地攻撃ミサイル保有」を明記。大分県、京都府、青
森県など全国にミサイル弾薬庫を整備中。米海兵隊はハイマース高機動ロケット砲を配備、米陸軍は
フィリピンに中距離ミサイルを配備。日本全国の米軍、自衛隊基地の使用、民間空港・港湾・道路の
軍事利用、日米の戦闘機など兵力の全国への分散展開を計画し、沖縄だけでなく日本全土が共同作戦
計画に組み込まれている。米軍中距離ミサイルは「核搭載可能」。
【日米安保条約の変質】
1952年日米安保条約は当初の「極東」から、90年代の日米安保宣言以降は「中東、インド太平
洋、世界」に領域を広げ、2014年、安保法制が集団的自衛権を認めた。「米軍の指揮により自衛隊
が参戦する日米軍事一体化」、日本周辺だけでなく、米軍に従って南シナ海、インド太平洋、中東、アフリカ、全世界への日米一体の戦争態勢が完成形となった。
【米国の拡大抑止強化】
米国は2021年以降も、日米首脳声明で「拡大抑止(核使用を含めた日本防衛)」を強調し続けてい
る。2024年7月の「日米2+2(防衛・外務閣僚会議」で「核抑止強化」を確認。24年12月
に「拡大抑止」日米ガイドラインを策定。「有事の際の米国の核使用を日本と意思疎通」(読売新聞)石破茂首相は就任後に「核共有論」に言及した。
【韓国の核抑止強化と沖縄】
韓国保守政権下での「核保有・先制攻撃論」が日本で報道されている。2023年、「米軍攻撃型潜水
艦の韓国寄港」「米戦略爆撃機(核搭載可能)が在韓米軍基地に初めて着陸」と報道された。同年、米韓合同演習の後、「米軍戦略爆撃B1の嘉手納基地への初飛来、2週間駐留」が報道された。日米韓の核抑止強化の動きに、沖縄では「核密約により米軍核の沖縄再持ち込みが確認されている。嘉手納、辺野古弾薬庫に再び核が持ち込まれるのではないか」と不安視する声が上がっている。
【ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会の取り組み】
「国内連帯」と「国際連帯」
〇「国内連帯の強化」
2月22日、鹿児島集会で「沖縄・西日本ネットワーク」を結成する。
昨年4月に愛媛、8月沖縄、9月広島、11月大分で「軍事強化に反対する集会」を連続開催した。
鹿児島集会でネットワークを結成し、全国から政府に戦争準備の中止を求める「東京行動」を計画す
る。「各地域がバラバラでは日米の戦争準備を止められない」、「国内連帯」に力を結集し「戦争準備」を止めることが目的。
〇「国際連帯の構築」
2023年6月の沖縄講演 フィリピン人反戦活動家のウォルデン・ベロー氏は「沖縄、フィリピン、
韓国など米国の対中軍事包囲網が戦争の危機を高めている」と指摘。VFP(平和を求める元米軍人の
会)と提携し、「軍事強化中止」「東アジア各国からの米軍の撤退」を求める連帯声明を発表。
2023年11月の沖縄講演 台湾から来県したツアン・ルーシン氏は「『台湾有事は日本有事』論は、
台湾を救うのではなく、戦争を誘発する」「中台問題に大国(米国、日本)が介入すると戦争になる」と指摘した。
2024年12月 中国上海で開かれた「グローバルサウス」フォーラムに参加した具志堅隆松(ノー
モア沖縄戦の会共同代表)は「台湾有事の戦争回避」「沖縄を平和の緩衝地帯に。アジア、世界の平和に貢献する」と表明した。
「台湾有事」「朝鮮有事」は地域戦に留まらず核大国の米中が対決し、第三次世界大戦、世界終末・核戦争に陥る懸念が大きい。トランプ米政権、日本、韓国、フィリピンの政治が流動化し、軍事同盟が揺らいでいる。この機会にアセアンを含め米国、沖縄・日本、韓国、台湾、フィリピン、中国の市民が「国際連帯」を深め「軍縮・対話」による戦争回避を目指さねばならない。
新垣邦雄(当会事務局長)