今回のメルマガは当会の新垣事務局長からの寄稿です。本稿は「戦争をする国へ 未来の死者の声を聞け」「わだつみのこえ」161号(2024年12月)を加筆修正したものです。全国で進む戦争準備に対して、当会も2月の「戦争止めよう!沖縄・西日本ネットワーク」(ネットワーク)の結成へむけた動き、自衛隊の戦前復古の危険性、昨年のすさまじい演習の動きなど、今知っておくべき、おさえておくべき重要なポイントをまとめていますので、ぜひお読みください。
「戦争をする国へ 未来の死者の声を聞け」
全国で進む戦争準備
広島県呉市の集会で私が述べたのは沖縄の状況報告よりも「感無量」の思いだった。
一昨年の11月、沖縄での「県民大集会」の夜、「全国連帯集会」で上がったのは「沖縄を戦場、犠牲にしない」という全国のみなさまの沖縄への「いたわり」だった。それが呉集会では、大分、佐賀、鹿児島、呉、愛媛、奈良、神奈川の方々が「私の住む所が戦場になる」という危機感を語ったのだ。沖縄だけでなく、我が町も戦場となる危機感を全国の方々が共有し始めている。そのことを私は「感無量」と述べたのだ。
沖縄の島々に地対艦、地対空ミサイルが配備され、ここを戦場と想定する「日米共同作戦計画」に基づき軍備と日米演習が激化している。そのことを私と、照屋寛之氏(ミサイル配備から命を守るうるま市民の会共同代表)が報告した。と同時に、大分に、京都に、大型の長射程ミサイル弾薬庫が計画され、佐賀にはオスプレイが配備される。鹿児島にもミサイル弾薬庫が計画され、奄美含めて弾薬庫は増設される。
広島・呉では自衛隊海上輸送群が新編される予定で、自衛隊や米軍の大規模な弾薬庫もあるうえに、製鉄所跡地に巨大「防衛拠点」をつくる計画もある。神奈川・横浜の米軍ノースドックでは米軍物資の輸送能力が強化されるとともに有事の際の出撃拠点となる準備が進められている。事あれば全国からミサイル弾薬や兵員が、横浜の米軍や呉の自衛隊輸送部隊により沖縄、奄美の南西諸島に運ばれ、戦争をすることになる。大分はそのミサイル戦争の指揮司令部となる。ミサイルの長射程化により大分、北海道は後方兵站だけでなく、ミサイルの発射拠点になるかもしれないという。
つまり全国各地がミサイル発射拠点になり、民間空港・港湾の軍事使用も計画され、全国が戦場となる可能性があるということだ。※年末に政府は「道路の特定利用」指定方針も決定した。
広がる「戦争止める」ネットワーク
そのようなことが報告され、私たちはまざまざと「全国で進む戦争準備」のありさまを目の当たりにした。このような戦争準備の凄まじい動き、全国で起きていることの一端を私たちは共有したのである。
今、私たちにとって重要なのは「戦争に向かう現状」を認識することであり、その上で「私たちはこの動き、全国が戦場となりかねない状況をいかに食い止めるか」が共通のテーマであることを確認したのだ。
11月30日、12月1日の大分集会にどう取り組むか。「その次は鹿児島」の声が上がった。奈良の方はミサイル弾薬庫計画のある京都集会を要望した。「来年は東京行動を」の提案が必然的な流れで提起され、それが当面の目標になった。東京に全国から集い、防衛省に全国の皆が「戦争準備をただちに止めよ」と要求するのである。情報を共有し、発信するためのサイトの整備も必要と提案された。「戦争止めよう!沖縄・西日本ネットワーク」(仮称)を正式に立ち上げ、西日本から関東・東京、そして東北、北海道へ、「全国ネットワーク」づくりの目標を確認した。
私は「情報発信が重要。メディアとの連携は重要課題」と提案した。政府は全国規模で各地の軍事化を周到に進めている。地方ではそれが見えない。大分や京都の地方紙のトップ記事が、そのほかの地域には全く報道されない。そのような「情報ギャップ」を解消するには、地方メディアの連携が不可欠と考える。
私の提案は具体的に言えば、地方新聞が「合同取材」し、各地方紙に記事を連載してもらう、ということだ。来年は「戦後八〇年」の節目であり、新聞協会の加盟地方紙、新聞労連も新年号に向けて議論している。私は、「地方紙連合による合同取材と新聞連載」を日本新聞労連、沖縄の地元二紙の編集幹部に相談している。
広島・山口―旧日本軍の復活
広島では呉の米軍・自衛隊の軍港を視察した。巨大な自衛隊の潜水艦が真っ黒な船体をいくつも並べている光景に愕然とした。沖縄で目にすることのない光景だ。戦艦大和を建造した建物が今も使われ、事実上の空母といわれる護衛艦「かが」が建造されていることに驚愕した。「呉、佐世保、横須賀、舞鶴」の旧日本軍港が「日本近代化」の歴史を物語る「日本遺産」と指定され、観光地となっていることを知った。「呉、佐世保、横須賀、舞鶴」は、旧日本海軍の歴史旧跡であるどころか、今現在も日米安保条約を支える日米の軍事基地にほかならない。「旧日本軍港」と、次の戦争に向けた日米の軍事施設が現在進行形で直結している現実を知った。
広島から山口県の岩国基地の視察に向かった。その巨大な海上基地。陸側の愛宕山を削って土砂を投下して「岩国方式」とも呼ばれ、沖縄の米軍普天間飛行場の辺野古新基地への移設と全く同じ大規模な海域埋め立てである。海洋の自然環境破壊を懸念することもなく無際限に国費を投入して海上基地を建設する日本政府のやり方は、補助金で行政を誘導する手法を含め、全く沖縄と同じだと痛感した。岩国基地(飛行場)は自衛隊、米軍が民間航空機と一つの滑走路を共有し、二つの滑走路を自衛隊も共有する那覇空港以上に危険だと直感した。新たな米海軍艦船の使用に向けてF35C戦闘機の駐機場と見られるテント状の新施設が林立、建造されていた。岩国基地は、沖縄の米軍嘉手納基地と同等、あるいは米軍と自衛隊が共用する基地として嘉手納以上の日米軍の軍事拠ではないだろうか。
山口から四国への米軍・自衛隊機のオレンジルートに加え、山口から九州・奄美へのオスプレイの飛行ルートも指摘されている。九州・奄美との一体性を考えると岩国基地は、沖縄と並ぶ日米の軍事拠点と考えるべきだろう。
広島の呉と山口の岩国基地を視察した私が学んだことは、①旧日本軍基地は新たな日米軍事基地として拠点化されている②軍事基地はさらに強化される―ということだ。そして、沖縄と同じように、巨額の国費が補助金の名目で惜しげもなく投入され、地元の行政を巻き込み、あたかも基地があることが地元の経済振興に役立つものとして地元世論も同調し、各種選挙が自民党政権に有利なように利益誘導され、「戦争をする国」づくりが、広島や山口だけでなく、全国各地で進んでいるのではないか、という懸念を抱いた。(次号に続く)
新垣邦雄(当会事務局長)