今回のメルマガは辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会・共同代表の阿部悦子さんからの寄稿です。キーン・ソード25が行なわれた奄美大島、徳之島の状況についてのリポートはとても貴重で、ぜひお読みください。また11月16日には「急速に軍事化する奄美群島」と題したオンライン学習会も開催されます。ぜひ多くの方にご参加いただきたいと思います。申し込み方法についてはチラシとURLを添付しますので、そちらをご覧下さい。
学習会告知サイト http://stophenoko.html.xdomain.jp/1116.html
徳之島、奄美大島での「キーン・ソード25」を体験して
私は去る10月24日から29日まで、「日米共同統合演習『キーン・ソード25』」さ中の徳之島、奄美大島に滞在し、「自然と文化を守る奄美会議」の方々のお世話になりながら、「演習」の様子と人々の暮らしぶりを感じてきました。そのご報告です。
<徳之島で>
どんな名前を付けようが、それらははっきりと「軍事演習」と呼ぶ他ないものでした。特に駐屯地のない徳之島は、全ての訓練が「生地」と呼ばれる民間の道路、公園、体育館、民間港、大小の漁港など、人々の生活の場で行われていました。報道によればその場所の数は島内だけで28か所(図参照)であり、島全体が「戦地」に見立てられていました。
(徳之島町総合運動公園には「地対艦ミサイル発射台搭載車」他多くの軍事車両が駐車していました。風光明媚な国立公園の伊仙町犬田布岬には「多用途無人偵察機・ドローン」の発射台とその回収台、自衛隊テントなどがあり、その横を観光客の行きかう姿も。大小の漁港も実戦訓練の場とされていて、水陸機動団の露払いのための海底調査が地元漁船の協力も得て大がかりに行われていました。キャンプやバーベキュー設備のある広大な「手々浜海浜公園」の芝生にはオスプレイ離発着による芝生が焼けた痕跡もありました。)
第2次世界大戦末期には現在の徳之島空港のすぐ近いところに軍の飛行場があり、本土から飛び立った「特攻機」の補修や補給基地として使われたといい、「記念碑」がありました。その周辺の集落では当時、米軍による激しい空襲
があったと記録されており、85歳の男性は、6歳だった当時、「目の前で赤子を抱いた『おばあ』に弾が当たって、どう!と倒れたのが忘れられない」と話されました。
そんな徳之島ですが、3町長は自衛隊推進の立場で、ほとんどの町民は反対の声が挙げられず、「黙認」しているかのようでした。25日に徳之島町舎前で10人ほどが集まり「奄美の自然を守る群民会議」がスタンディングを行いましたが、その時参加した女性は「毎日胸が苦しいです」と言われ、ある男性は、「『徳』の島だったのに、『毒』の島になってしまった」と嘆かれました。
私にとっても前回来た10年前の、「豊かな自然に囲まれたのんびりと優しい徳之島」が、まさに「戦争の最前線」のようになってしまったと感じました。
<奄美大島で>
その感想は奄美大島でも同じでした。私は10年前と5年前に奄美大島を訪ねています。5年前は奄美駐屯地と瀬戸内分屯地が開設されたばかりの時でしたが、街の中に大きな変化は感じませんでした。しかし、今や奄美大島では、市中の大通りで自衛隊が行進をするときには沿道には日章旗を振る人たちで込み合うといった状況が記録されています。
27日には奄美空港で、沖縄を飛び立ったF15戦闘機4機による「タッチ・アンド・ゴー」の離着陸訓練が行われました。私も展望デッキで、のぼりと旗を持って抗議しましたが、ここに集まった「群民会議」のメンバーも10人に満たない状況でした。一方デッキではカメラなどを持った老若男女が大勢集まり、まるで「イベント」を楽しむように賑わっていました。
また奄美市の人口密集地の上空で夜中にオスプレイが旋回することもあると言い、今年3月からオスプレイが奄美市に飛来した数は50回だと言います。この状況に対する議会への陳情に賛同する議員は数名です。
奄美大島でこのような「軍事化」に警鐘を鳴らし続けて来られた方々の活動は10年以上前からで、議会への陳情やスタンディング、裁判なども闘って来られましたが、国策による巧妙な力の前に、「孤軍奮闘」、「孤立無援」ともいえる状況ではないかと感じました。この「奄美群島の軍事要塞化」の状況は全国にも知られていないと思います。是非ともみなさんに共有していただきたいです。
<オンライン学習会「急速に軍事化する奄美群島」>
来る11月16日には、「辺野古土砂全協」主催によるオンライン学習会「急速に軍事化する奄美群島」を行います。徳之島、奄美大島の報告(城村典史氏)と、西日本に拡大する軍事態勢について(高井弘之氏)、さらには鹿児島県や防衛省も把握していないと思われる「オスプレイの沖縄~奄美の飛行訓練ルート」の存在(湯浅一郎氏)についても、レクチャーを受けます。(チラシ参照)是非ともご参加ください。
<奄美大島から辺野古に運ぶ計画の土砂問題で署名活動>
一方、「辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会」では、今年春に防衛省から発表のあった「奄美大島」から辺野古への土砂搬出に反対する署名活動を始めます。この問題は、「土砂全協」の中心テーマです。これから土砂を搬出する地元集落は、既に30年も粉塵、振動、騒音被害に悩まされ、これから辺野古に出すとなると、集落の消滅さえ考えざるを得ない状況だと思われます。急速な軍事要塞化の上に250万台もの土砂を積んだ大型トラックがこの島を行き交うことになれば・・・奄美大島、琉球弧をこれ以上踏みつけてはなりません。戦争さえ想定しなければ、土砂採取、搬出もあり得ません。こちらの問題については近日中にもお知らせをしたいと思います。
阿部悦子(辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会・共同代表)