メルマガ298号

今回のメルマガが与那覇恵子さんから寄稿です。「抑止論」はイスラエルの現状、沖縄戦の教訓を踏まえ、戦争を抑止するどころか、戦争を誘発し、犠牲を増やすことにしかならないと与那覇さんは訴えます。文中で引用された「何も無い所に弾は来ない、基地がある所に弾は飛んでくる」という体験者のことばほど重いことばないと思います。ぜひお読みください。

(修正のお知らせ)296号メルマガで配信しました「広島呉集会報告」をHPで以下の部分を太字で修正しています。太字のところが修正した箇所です。
 
海自輸送群→自衛隊輸送群 

一年前を振り返る。ミサイル配備に反対する沖縄・うるま市民の会が抗議、阻止活動に奮闘する中で、大分で新たな大型弾薬庫計画が浮上し、「大分敷戸ミサイル弾薬庫建設問題を考える会」が昨年夏に発足した。11月の「沖縄を二度と戦場にしない」県民集会の「全国連帯集会」で、奈良の八木健彦さんが「京都の祝園弾薬庫も狙われのでは」と述べた懸念は、翌12月に祝園弾薬庫の長射程ミサイル弾薬庫計画が発覚し現実となった。年が明けて京都で、次いで奈良で祝園弾薬庫建設に反対する市民団体が発足。九州では福岡北九州、鹿児島県さつま町の弾薬庫計画、広島県呉の大規模な「防衛複合拠点」、「自衛隊海上輸送群」など軍事拠点化に反対する市民が声を上げ、運動団体が次々と立ち上がった。その中で軍備強化が急速な沖縄-九州-西日本の「戦争止めよう!西日本連帯」ネットワーク化が動き出した。

軍事力依存の「抑止論」は非現実的 ~沖縄戦の教訓に学ぼう~

戦争前夜と言われる今の沖縄で私達を分断する2つの考え方がある。軍隊や武器の増強で戦争は抑止されるとする「抑止論」と、逆に戦争を誘発させるとの「反抑止論」だ。平和を維持する上で「抑止論」は現実的だとし、武力に頼らぬ「反抑止論」を理想のお花畑と揶揄する向きがあるが、果たして「抑止論」は戦争抑止の現実的思考なのだろうか?
ウクライナ戦争やイスラエルのガザ攻撃など国際状況は不安定だ。ウクライナは、プーチン大統領の警告にも関わらず、ロシアを脅威としてNATO加盟の軍事力強化や東部のロシア系住民への攻撃で対応した結果、ロシア侵攻を招き、戦争は終わりが見えない。「抑止論」信奉者のイスラエルは、提案された停戦に応じず、米国支援を味方に戦闘拡大に突き進み4万人以上の人々を殺害し続けている。武器があればナチスによるユダヤ人虐殺の悲惨な歴史は防げたとの考えがイスラエルの「抑止論」信奉に繫がったとされる。しかし、軍事力強化でウクライナは戦争を勃発させイスラエルは戦争を拡大し続ける。イスラエルのガザ住民に対する非人間的な過剰攻撃を見ると、強者が防衛と称し軍事力を攻撃力にして弱小国を戦場に弱者に犠牲を強いているのが「抑止論」の結末と言える。「抑止論」が戦争を防ぐどころか戦争を勃発させ拡大させている現実を私達は目にしている。「抑止論」は平和を維持する上で非現実的だと現実が教えているのだ。
「抑止論」の背景に「軍隊が住民を守る」との考え、「反抑止論」の背景に「軍隊は住民を守らない」との考えがある。79年前4人に1人の住民が犠牲になって学んだ「沖縄戦の教訓」だ。「抑止論」を支える「軍隊は住民を守る」は現実的で沖縄戦の教訓は非現実的か?否、自衛隊は「住民保護は自衛隊の責務ではない」とし避難も自治体責務だ。沖縄戦の教訓は実際の体験に裏打ちされた沖縄戦の現実が教えたものであり、ホームページに牛島司令官の辞世の句を掲げる例に見るように自衛隊という軍隊の本質は変わっておらず「軍隊は住民を守らない」の教訓は極めて現実的だ。
注意すべきは、今の沖縄で「抑止論」がミサイル配備など戦争準備を許す源となっていることだ。軍事力強化は戦争を勃発させるとの「反抑止論」は現実的だ。沖縄戦体験者で与那国住民の牧野トヨ子さん(95歳)は「何も無い所に弾は来ない、基地がある所に弾は飛んでくる」と言う。戦場となる場所にいる弱者でありながらなお「抑止論」を主張する人達には、沖縄戦を生き延びた先輩の体験から語られるその言葉の重みを受け止めて欲しい。

与那覇恵子(名桜大学非常勤講師)
※本稿は与那覇さんのご承諾を得て、琉球新報論壇(9月25日)を転載したものです。

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