メルマガ277号

今回のメルマガは与那覇さんの与那国リポートの2回目です。『「台湾有事」を口実にするこの戦争がどのような戦争であるのか、その本質が見えず、日本という国を防衛する防衛戦争であるかのような勘違いをしてしまい、軍備増強で戦争抑止との抑止論を展開しがちだ』という与那覇さんの指摘はとても重要です。ぜひお読みください。

与那国を訪問して(2)

猪股哲さんのプロ顔負けの腕前の料理を囲み、与那国町議の田里千代基さん、元町議で今は小嶺牧場を経営する小嶺博泉さん、「与那国島の明るい未来を願うイソバの会」の狩野史江さんと白玉敬子さんに私たち5人が加わった交流会で感じたのは、基地賛否で島が分断され反対の声をあげにくいなか、それでも与那国の将来を憂い、その明るい未来を建設しようとする思いは繋がり脈々と温め続けられているという確かさだった。与那国の「自衛隊の島」化は、2005年の台湾の花蓮市との友好都市関係に経済的活路を見いだそうとした、与那国町出身の吉元 政矩 元沖縄県副知事を中心としたグループの努力「国際交流特区」申請(7次、10次)が国に阻まれた後、2007年6月米海軍掃海艇2隻を引き連れたケビン・メア在沖縄総領事の来島を機に急速に進んだ。来島に島の軍事化を予見した山城博治さん(沖縄平和運動センター議長)は抗議集会を開いている。以降、島は自衛隊誘致問題に揺れたが、2015年2月「自衛隊基地建設」の民意を問う住民投票の結果は賛成多数(賛成632,反対445)であった。しかし、それには移住してきた自衛隊票(200)が含まれていた。2016年には総人口の15%を占める250人だ。人口増による島の活性化を望んでの自衛隊誘致だったが、今や、台湾有事を口実とする戦争の前線となるリスクで自衛隊員の家族は引き揚げ始め島を離れる住民もいて、人口は減少しているということは皮肉で悲しい事実である。樽舞湿原埋め立てに関しては、田里氏は環境保護のための環境影響評価調査実施を強く求めている。辺野古新基地でも辺野古区民1人あたり1億円が支給されるという話があったが、いつのまにか立ち消えた。この軍港計画でも1人1億円の話が流布しているそうだ。過去に学ばない者は同じ間違いを繰り返す。町議としてより良い与那国島を追求し続ける田里さんからは政治家としてのぶれない信条と努力を、人に依存する経済ではなく自らの力で立つ経済を模索する小嶺さんから諦めない創造者としての思考力とパワーを、「イソバの会」の狩野さん、白玉さんからは命を生み育てる女性としての平和への強い思いと平和を守るための勇気を感じた交流会であった。最初から最後まで私たちに付き合って下さった猪股さんから学んだことも多いが、何より、地元の人間ではない彼が地元の人間以上に与那国を知っており、与那国を思い、与那国のより良い未来のために日々の努力を黙々と続けている姿に圧倒された。
問題は、目の前で日米合同演習が日々実施され、沖縄の島々に自衛隊やミサイルが配備され、与那国、八重山、宮古の住民避難が具体化しようとするにも関わらず、戦争準備を推進する主体の日本においてこの戦争についての議論が殆ど無いことだ。沖縄で日々危機感が膨れあがるなかでの、そのような主要メディアの沈黙の結果、自民党政権が煽る中国や北朝鮮の脅威を信じる人達には、演習であれ公的発表であれ、敵対行動の殆どは日米が先導するもので、彼等の行動はそれに対する反応であるとの視野が欠けてしまう。「台湾有事」を口実にするこの戦争がどのような戦争であるのか、その本質が見えず、日本という国を防衛する防衛戦争であるかのような勘違いをしてしまい、軍備増強で戦争抑止との抑止論を展開しがちだ。沖縄戦体験者で与那国住民である牧野トヨ子さん(95歳)は「何も無い所に弾は来ない、基地がある所に弾は飛んでくる」(笹島康仁、大矢英代/Yahoo!ニュース 特集編集部)と言う。戦場となる場所にいながらなお、軍事力による戦争抑止を主張する人達には、戦争体験から語られるその言葉の重み、シンプルな事実を是非受け止めて欲しいと思う。

与那覇恵子(当会発起人)

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