メルマガ261号

今回のメルマガは沖縄国際大学准教授の秋山道宏さんに「平和的生存権」が脅かされることの意味、それは沖縄だけの問題ではないということを論点にして寄稿していただきました。ぜひお読みください。

問われる「平和的生存権」

いま、沖縄では、国内で約7割の米軍基地が集中し、「南西シフト」と呼ばれる自衛隊の配備強化も行われています。これは日米一体の軍事要塞化で「新しい戦前」と言える状況が一気に進んでいます。
進む軍事要塞化
私が沖縄国際大学での非常勤講師の傍ら、博士論文の研究に集中するため沖縄に戻ったのが2014年、安保法制が争点となっていた年でした。15年の強行採決前夜、地元の南部・南風原町では自衛隊ヘリが夜中に自宅周辺を飛び回り、大学への出勤時に自衛隊車両の往来を頻繁に目撃するようになるなど、軍事強化されている現状は身をもって感じていました。集団的自衛権の行使が容認され、目に見えて軍事要塞化が進められる中、憲法9条への自衛隊明記にまで踏み込んだ、明文改憲への外堀が埋められ始めています。
 9条を巡る沖縄の現状について、軍事基地があることで日本の平和主義が成り立っているのだと批判的にみる人もいます。米軍統治下の沖縄の人々が復帰にもとめたのは「基地なき平和な島」でした。人権が尊重される憲法の庇護のもとへの復帰だったのです。
 しかし、現実には復帰後も基地のある状況は改善されず。辺野古新基地建設や日米一体の軍事要塞化はむしろ強化されて進行しています。こうした状況で明文改憲がなされてしまえば、沖縄の基地強化がいま以上に是認されていくことにもつながります。

脅かされる生活

沖縄から憲法の問題を考えるときに、平和主義という論点に重なるテーマとなるのが「生存権」です。生活や生存を脅かすものが、戦争や軍事という視点です。
うるま市石川地区の陸上自衛隊訓練場の新設計画について、保守・革新などの立場を超え反対の声があがり、国に計画撤回を要求しました。保守系も含め国に訴え出たのは、やはり地元地域の居住地近くに自衛隊の訓練施設ができるという、自分たちの生活や生存が脅かされる問題だったからだと思います。
今年8月で沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落した事件から20年を迎えます。最近では自衛隊ヘリ2機の事故が発生したほか、垂直離着陸オスプレイの墜落もありました。こうした事態に抗議する声があがるのは、生活や生存を脅かされる危機感に迫られているからだと言えます。
一方、国政だけではなく、場合によっては県政も含め、頼りにならないと政治に対する「諦め」のような感覚が若い世代を中心に広がっています。劣悪な労働環境のもとで貧困や社会的分断にさらされている中で、戦争や平和の問題が自分たちの身近な問題として、なかなか結び付きにくい現状があります。
軍事要塞化をどう止めていくのかという問題と、直面する生活や生存の問題とをどう結びつけて焦点をあてていくのか。この課題は、戦後、沖縄の人々が求めてきた「平和的生存権」が改めて問われているもので、沖縄にとどまらず日本本土の人々にも突き付けられているのではないでしょうか。

秋山道宏(沖縄国際大学准教授)
※本稿は秋山さんのご承諾を得て、赤旗5月4日掲載されたものを転載したものです。

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