メルマガ245号

今回のメルマガはノーモア沖縄戦 えひめの会の高井弘之さんからの寄稿です。沖縄でのすさまじいミサイル要塞化が進む中、この動きと軌を一にするように九州・中国・四国でも軍事強化が進められています。それぞれの現場で動いている情報をお互いに共有していくことはこれからの大きな課題です。全国において急スピードで進行している状況を俯瞰した上で、今後すすめていくべきことは何か、本稿で示されています。ぜひお読みください。

沖縄から九州・中国・四国へと拡大する戦争態勢の構築―各地の市民が連携・連帯して、戦争の阻止を!―

琉球弧における戦争態勢の構築
琉球弧では数年前から、奄美・宮古・石垣に攻撃用ミサイル基地が次々と造られ、部隊と弾薬が配備されて来た。そして、この3月には、沖縄島の陸自・勝連駐屯地にさらに部隊が配備され、これらを合わせた対艦ミサイル連隊が編成される予定である。同時に、民間空港・港湾の軍事利用や軍事拠点化に向けた動きも進行し、中国への戦争態勢の構築――「沖縄の戦場化」準備が着々と進められている。

九州・中国・四国へと拡大される戦争態勢の構築
その沖縄へ戦時に展開するための「戦争―後方態勢」の構築が、いま、九州・中国・四国で急ピッチで進められている。大分市の陸上自衛隊分屯地には長射程ミサイル用の大型弾薬庫が9棟も建設される予定で、すでに工事が始められている。そして、そこからすぐ近くの湯布院・陸自駐屯地には、新たに対艦ミサイル連隊が配備される予定だ(2024年度)。さらに、宮崎県・えびの市の陸自駐屯地や鹿児島県のさつま町にも弾薬庫の建設が計画されている。そして、熊本の陸自・健軍駐屯地にはすでに対艦ミサイル連隊が配備されている。
宮崎の新田原空自基地には、空自初運用のF-35B戦闘機(短距離離陸・垂直着陸)が配備される予定(2024年度)で、基地の大規模な拡張計画もある。また、民間空港の佐賀空港にはオスプレイを配備予定だ(2025年)。そのため、格納庫や弾薬庫を備えた陸自駐屯地を空港西側の土地に建設予定で、すでに工事が進められている。そして、海自呉基地には、沖縄・宮古・八重山に部隊や軍事物資を輸送するための共同の部隊(「自衛隊海上輸送群」)が輸送用船舶を伴って編成される予定である(2025年3月/陸自が主体)。

民間の空港・港湾・船舶・公道の軍事利用
 また、沖縄に続いて、九州・中国・四国の民間空港・港湾の軍事利用―軍事拠点化の動きが開始されている。昨年11月の自衛隊統合演習(米軍も参加)では、岡山・大分・奄美・徳之島の民間空港で自衛隊機の訓練が数日間にわたって行われた。大分空港ではF2戦闘機4機が着陸後、駐機場に移動し、民間のタンクローリーから旅客機用の燃料を給油するなどした。
また、この演習では、北海道の美幌・陸自駐屯地を出発した戦闘車が一般の公道を走って釧路港に行き、そこから民間船舶を使って大分港まで移動、再び公道を走って福岡県の築城航空基地まで行き、そこから輸送機で沖縄の那覇空港・空自基地まで運ぶ訓練も行われた。まさに、沖縄後方に在る戦争兵器を「戦場」へと輸送するための訓練である。

民間空港・港湾の軍事拠点化
さらに政府は、平時・有事の民間空港・港湾の軍事利用を進めるために、全国32~40の空港・港湾(政府が非公開にしているため報道によって違いがある)を「特定重要拠点」候補と位置づけ、軍事利用できるよう整備しようとしている。戦闘機や輸送機が利用しやすいように滑走路の延長や駐機場の整備を行い、大型艦艇が接岸できるように埠頭・港内の整備をするなどである。
候補は10道県にわたるが、それらは、最も多い12施設が対象の沖縄県のほか、鹿児島・宮崎・熊本・長崎・福岡・香川・高知など(沖縄の後方拠点たる)西日本に集中している。
これら民間空港・港湾の軍事利用は、上記の昨年11月の演習が「特定重要拠点」候補に挙げられていない岡山・大分の空港などでも行われたことからわかるように、今後、どこの民間空港・港湾においても行われる状況にある。実際、防衛省はメディアに対して、次のように話している。

防衛省によりますと今回、大分空港や岡山空港、徳之島空港などで訓練を行うのは関係自治体の理解が得られたためとしていて、ほかの空港についても理解が得られれば、訓練を行いたい考えです。
(NHK NEWSWEB/2023年11月13日)

市民の犠牲を前提とする戦争態勢の構築
政府は、自国民の安全や生命をも全く歯牙にかけぬまま、これらのことを行っている。現在の国際人道法(ジュネーブ条約第1追加議定書)において攻撃が禁止されている民間施設を軍隊が使うということは、その施設や民間人を、いわば合法的な「攻撃対象」として差し出すことを意味する。しかし、このようなことを、政府は全く説明しないまま、冷酷に事を進めている。

日米欧による「中国弱体化」戦略
以上の動きの前提には、軍事侵略をせぬまま経済発展し大国となった中国に対して軍事的・経済的包囲網を築き、中国を「弱体化」させようとする戦略と欲望が存在している。その行為の主体は、かつて中国を侵略し半植民地にした日欧米列強であることを、いま、私たちは想起しなければならない。

「戦争―後方態勢構築」の阻止によって、戦争を止める!
 ところで、いま政府が、沖縄での臨戦態勢の構築に向け、西日本での「戦争―後方態勢」の構築を必死に進めているのは、それを実現しないと中国との戦争を開始―継続できないからである。逆に言えば、この「後方態勢」の準備―構築を阻止できれば、沖縄を攻撃拠点とする戦争の開始―「沖縄の戦場化」を止められるということである。
私たちは、西日本及び全国各地・各団体・各個人の連携・連帯・ネットワークを早急につくり、前を行く沖縄の運動と結びつきながら、共に力を合わせて闘い、政府の戦争態勢構築を挫折させなければならない。そうして、戦争を開始させないようにしたい。

※以前、紹介させていただきました拙著『日米の「対中国戦争態勢」とは何かー東アジアでの戦争を止めるためにー』(A5判 148p/900円)、在庫、あります。こちらも、ご一読していただけると幸いです。

※以前、紹介させていただきました拙著『日米の「対中国戦争態勢」とは何か―東アジアでの戦争を止めるために―』(A5判 148p/900円)、在庫、あります。こちらも、ご一読していただけると幸いです。

(Eメール/takaihiroyuki123@gmail.com )

高井弘之(ノーモア沖縄戦 えひめの会/運営委員)

※以下は、上記・昨年11月の自衛隊統合演習で、自衛隊が民間空港で軍事訓練した時の写真です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

以下の注意事項をご確認の上、良識あるコメントにご協力ください

  • コメントをいただいてから掲載まで、お時間をいただくことがございます。
  • 各コメントに対して当会より個別の返信はおこないません。回答を必要とする当会へのお問合せは、お問合せフォームにてお受けいたします。
  • 当会の目的や参加者の交流促進に寄与しないと当会が判断したコメントは、掲載を見送らせていただく場合がございます。
  • 投稿コメントの公開を希望しない場合は、コメントの記入欄にその旨ご記載ください。また、お名前のみ公開を希望しない場合、お名前欄にペンネームをご記入ください。

*