メルマガ204号

今回のメルマガは当会事務局長の新垣邦雄さんからの寄稿です。
昨年末の代執行訴訟判決は、米軍の戦略に利用されつづけてきた沖縄をさらに踏みにじるものであり、沖縄を戦場にする準備をすすめるものでしかありません。しかし全国の民間空港、港湾を軍事化し日米が共用する「特定重要拠点整備」、大分をはじめとする九州での弾薬庫建設強行など、戦場化は沖縄だけにとどまるものではありません。2024年も暗澹たる状況が続いていくことが予想されますが、「日米安保の闇」から抜け出し、戦争準備を食い止めるために、私たちがどう向き合えばいいのかを考える上で、ぜひ本稿をお読みください。

「日米安保の闇」抜け出そう 辺野古新基地と戦争準備に抗う

「沖縄の夜明けは日本の夜明け」
 元旦に、辺野古通いを続ける本土出身の方から、「辺野古の初日の出」の写真がメールで送られてきました。埋め立てが進む辺野古の浜に人々が集い、新年の日の出を向かえていました。「沖縄の夜明けは日本の夜明け」のメッセージに、「自信と希望を頂いた」と返信し、「沖縄と同様に日本も闇の中にある」と書き添えました。別の方からは、「ガマフヤーの具志堅隆松さんが1月9日から12日、県庁前広場で、代執行による大浦湾埋め立て工事に抗議するハンストをします。具志堅さんは参加または支援を呼びかけています」とのメールが届きました。日本政府は1月中旬にも生物多様性に富む大浦湾側の埋め立て工事を強行しようとしています。しかし県民はけして諦めていません。辺野古に集う本土出身の方々も思いは一つです。

 「辺野古 国が代執行」「知事『民意踏みにじる』」「ゲート前『闘い続ける』」。12月29日の沖縄2紙に大見出しが並びました。両紙の「特別評論」は、沖縄タイムス「追い込まれたのは国」(福元大輔政経部長)、琉球新報「不条理 負けてはならぬ」(新垣毅報道本部長)と、編集幹部が不条理な辺野古新基地建設に抗い続ける決意を示しました。

 県民、地元紙は辺野古新基地建設とミサイル配備の軍備強化の「根は一つ」と捉えています。作家の崎濱慎さんは「米軍基地の存在によって私たちの生存がますます危険にさらされている」。新報の社説は「中国脅威論を背景とする軍備増強が政府の強硬姿勢を支えている。だが軍備増強の行き着く先を私たちは沖縄戦の教訓で知っている」と書きました。辺野古新基地を許すことは次の沖縄戦の戦争準備を許すことになる。再び沖縄を戦場にはしない、という決意の表明です。

メースBと沖縄返還
 「辺野古代執行 国が代執行」を報じた12月29日の琉球新報の読者投稿欄「きょうの歴史」には、「米軍が勝連、読谷、恩納、金武に配備していたミサイル・メースB36基の解体作業終了(1969年)」と記されていました。

 69年11月21日、佐藤栄作首相とニクソン米大統領は「1972年沖縄返還」を発表しました。首脳会談でニクソン大統領は佐藤首相に「沖縄メースB核ミサイル基地の撤去」を伝えました。佐藤政権は「72年沖縄返還、核抜き・本土並み」の発表直後に衆院を解散。それに併せて沖縄の「メースB核ミサイル撤去」が発表されました。「沖縄返還 核抜き 本土並み」の成果を掲げる佐藤自民党政権は年末の衆院選挙に圧勝。翌年の70年、「日米安保条約 自動延長」を乗り切りました。

 しかし沖縄返還の「核抜き・本土並み」は偽りで、内実は沖縄への「有事の核再持ち込みと貯蔵」を密約し、ベトナム戦争、台湾有事、朝鮮半島有事への米軍の関与と日本の支援、「沖縄基地の自由使用」を米国に約束するものでした。米軍はその後の湾岸、イラク戦争はじめ、沖縄基地を自由に使用し、出撃する権利を確保しました。

少女暴行事件と辺野古移設
 95年少女暴行事件は日米政府を揺るがせます。「沖縄の負担軽減」をうたう日米交渉は「普天間基地返還」を打ち出します。大田昌秀県知事は沖縄の米軍基地を段階的に全面撤去する「基地返還アクションプログラム」を提起しました。しかし日米政府は「普天間のの危険除去」を名目に、「辺野古移設」を推し進めます。沖縄返還に県民が抱いた「基地も核もない平和な沖縄」の悲願、「普天間基地県外移設」の希望は、その都度、「核抜き・本土並み」、「辺野古が唯一」を欺罔する日米の政治宣伝に覆われ、踏みにじられてきたのです。
 その意味で「普天間基地の辺野古移設」も「南西諸島の軍備強化」も「根は一つ」です。日米政府にとって沖縄は、使い勝手の良い「基地の島」でしかなく、「人間の住んでいる島」の沖縄住民の人権、生きる権利は脅かされ続けています。県民は歴史と現実を見据えて、抗い続けるしかないのです。

 冒頭に「沖縄と同様に日本も闇の中にある」と書きました。「沖縄の夜明けは日本の夜明け」とも。そのことを日本本土の国民のみなさんに伝えたいのです。

永続的にアメリカに従属
 1951年、日本の独立を承認する「対日講和条約」、セットとなる「日米安保条約」交渉を前に、米国は「われわれが望むだけの軍隊を、望む場所に、望む期間だけ駐留させる権利を確保する」方針を確認しました。対日交渉を担ったダレス米元国務長官は、日米安保条約締結後に「日米安全保障同盟、永続的に軍事的に日本をアメリカに従属させるものを構築することで解決した」と成果を誇示しました。

全土基地化
 米国にとっての日本の「全土基地化」は現実の姿です。有事下で米軍が自衛隊を指揮する「指揮権密約」も現実のありようです。米軍が沖縄に持ち込み、自衛隊が購入した〝欠陥〟オスプレイが全国の空を飛び、敵基地攻撃を担う米国トマホークを日本は爆買いしました。台湾有事に向けて、米軍は沖縄の嘉手納、普天間基地だけでなく、本土の横田、岩国、三沢、厚木、横須賀ほか米軍、自衛隊基地を作戦計画に組み込むことを構想し、米軍が主導する実戦的な日米合同訓練が繰り返されています。全国の民間空港、港湾を軍事化し日米が共用する「特定重要拠点整備」も本格的に動き出しています。

 中国を想定する長射程ミサイルが配備される大分分屯地で保管庫2棟の建設が始まったのも束の間、防衛省は新たに7棟の増設を発表しました(12月22日)。「住宅密集地の真ん中にある弾薬庫は有事に攻撃目標となる」と中止を訴える市民の声は、まったく無視されています。年末には宮崎県、熊本県でも「新たな弾薬庫の建設」が報道されました。先に、奄美・徳之島空港、大分空港、岡山空港の自衛隊戦闘機の離発着訓練も報道されました。台湾有事を想定する戦争準備の軍事化が、沖縄から九州、四国・中国地方へ、そして全国へと、凄まじい勢いで広がりつつあります。

日米軍事一体化
 米国が望んだ「日本の全土基地化」と同時に、「日米軍事一体化」は完成形となりました。安倍政権下の安保法制、一昨年末の安保3文書により、法整備と国家安全保障方針も併せて確立され、「米軍に付き従い、米軍の指揮下で自衛隊が戦い、戦争をする日本」が方向付けられてしまいました。「日米安保の闇」が日本を覆い尽くそうとしています。

 日本はこのまま「戦争国家」の道を突き進むのでしょうか。私は、そうしてはならないと思います。安保3文書閣議決定を受けた琉球新報の記事で、ジャーナリストの布施祐仁さんは、安保3文書は「中国の台湾侵攻の抑止」が目的であり、「岸田首相は日本に大量のミサイルが降る事態になっても、米国と一緒に台湾を守ると考えているかもしれない。そのような国民的合意は存在しないし、説明すらなされていない」と指摘しました。

日本の国益は何か
 「台湾を守るために中国と戦う」。そのような政府の考えを、国民はきちんと説明をうけていません。中国との戦争になれば大量のミサイルが日本を襲う事態となりかねません。それでも「台湾を守るために中国と戦う」のでしょうか。沖縄県民だけでなく、多くの国民の命が失われ、沖縄だけでなく横田基地のある東京も戦場となりかねません。

 沖縄は米軍戦略に利用されてきました。今や日本列島全体が「中国から米国を守る防波堤」(羽場久美子氏)として利用されようとしているのではないのか。米国の軍事・経済の利益のために、中国と戦う羽目に陥るのではないのか。「日米安保の闇」から抜け出し、日本が「戦争をする国」にならないために、「日本の国益は何か」を見つめ直さねばなりません。

新垣邦雄(当会事務局長)

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