今回のメルマガは当会発起人の新垣邦雄さんからの寄稿です。去る9月7日に米海軍の掃海艇パイオニアが石垣港への寄港を強行しました。この戦争準備のための実戦訓練といえる強行に対し、当会からも共同代表、発起人の3人を派遣し現地での反対行動に参加しました。本稿では寄港強行の様子について具体的に報告していただきました。この報告を通じ、当会が今後も現地で行動する方々との連携を強め、南西諸島軍事強化を許さない、絶対に島々を戦場にしない活動をさらに展開することの重要性を強く感じました。ぜひお読みください。
「港湾、空港の軍事使用狙う 有事即応の〝実戦訓練〟」-米軍掃海艦石垣寄港、現地報告
米軍掃海感が9月7日、市民の反対の声を無視し石垣港寄港を強行しました。ノーモア沖縄戦の会は、5日~7日、現地反対行動に具志堅隆松共同代表、宮城恵美子さん、私新垣邦雄が参加しました。台湾有事に直結する米軍艦船寄港を目の当たりに、切実な思いで寄稿阻止に体を張る現地の方々と共に「戦争準備の米軍艦寄港反対」の声を上げました。
米軍掃海艦の石垣寄港は2009年以来14年ぶり。当時はケビン・メア沖縄総領事が米軍掃海母艦を率いて与那国島に続いて石垣に寄港しました。メア氏は手記に「有事を想定し八重山諸島の港湾施設を把握するための事前調査」と記しており、軍事利用が目的であることは明白です。ミサイル要塞化が進み日米共同作戦計画が策定される中での寄港は、事前調査どころか有事対処の「実戦訓練」とみなさざるを得ません。
米軍掃海感は沖縄島うるま市のホワイトビーチを経由して石垣入港。その間に「掃海訓練を行った」としています。「掃海訓練」とは海上に敷設された機雷除去の訓練です。日米共同作戦計画原案には、米軍艦船が展開するために周辺海域から敵艦船を排除する計画が盛り込まれており、米海兵隊の島々への分散展開を含めた実戦的な訓練にほかなりません。
米軍は、あえて「通常寄港」を強調しました。目的を「保養、通信」などに限定せず、「今後はいつでも自由に寄港する」という宣言と受け止められています。
現地で見守ったジャーナリストの布施祐仁さんは、寄港の大きな目的として「宣撫工作」をあげました。中山市長は寄港を容認し、入港の夜には自衛隊関係者などとの歓迎会が開かれました。掃海艦は日米の国旗だけでなく満艦飾の万国旗も掲げていました。在日米軍の動向を追跡取材する山本秀夫カメラマンは「日米の国旗以外の満艦飾の旗は異例。祝賀セレモニーをアピールする狙い」と指摘しました。
着岸した埠頭は前日からバリケードを張って市民は締め出されました。米軍の要請によるもので、それ自体、米軍が民間港をも自由使用し、反対する市民を排除するありようが明らかです。今後、米軍艦船、米軍機が沖縄の島々の民間港、民間空港に「通常寄港」を強行することが懸念されます。台湾有事に向けた地ならしの意味合いも大きいと思います。
私たちは着岸した米掃海艦から200メートル以上も遠ざけられたバリケードの外から、「米軍艦はすくに帰れ。二度と来るな」と声を上げました。山里節子さんは「Go home」「We do not want War」「Peace Peace Peace」と英語で連呼し、参加者が唱和して米軍艦船の寄港に反対する市民の強い意志を訴えました。ノーモア沖縄戦の会の宮城さん、新垣がマイクを握り、「石垣、与那国、宮古の人々を孤立させない。二度と沖縄を戦場にはしない」と連帯をアピールしました。
寄港前の5日は市内で地元の方々と意見交換を行いました。今回を皮切りに、ノーモア会も積極的に先島、離島の島々に足を運んで抗議、反対運動の連帯を深めることを確認しました。
具志堅共同代表は台湾での講演会から帰任し石垣入りしました。台湾の講演会は「大国の介入」をテーマに開かれ、台湾の人々が台湾有事の戦争に陥る事態を危惧し、介入を強める米国に対しても、高圧姿勢の中国に対しても批判的であったということです。参加者の全体記念写真の横幕には、中国語で「在沖米軍基地撤去」の文字があり、台湾の方々が沖縄の米軍支配、基地の重圧に反対し、批判的であることがうかがえました。具志堅さんは、「石垣、宮古、与那国と台湾との意見交流」を呼びかけました。
宮城さんは「台湾有事」が、米国の軍事・経済覇権を維持するために、米国が仕掛け作られた「偽りの危機」であり、日本政府が追従し自衛隊が一体化して戦争の危機を高めている現状を告発しました。新垣は、日米政府の戦争準備に歯止めがかからず戦争の危機が高まっていること。沖縄を結集軸に国内の反対運動集会の沖縄開催、国際連帯会議の沖縄開催を提案しました。
これに対し地元参加者からは「反対運動への市民の結集が課題」、「反対の声を上げづらい雰囲気がある」との報告がありました。一方で、ミサイル配備、戦争の危機が高まる中で「業者(土建)や観光関係の中にも現状を危惧する声がある」と変化の兆しを指摘する方もおられました。また「石垣は米軍基地がなかったので、沖縄島のように基地被害に対する危機感が弱い」、「いまだにミサイル配備などの実態を知らず、他人事のように考えている人も多い」。講演会や学習会など「学ぶ取り組みを続けることも大事」という意見も聞きました。
意見交換には「石垣島の平和と自然を守る市民連絡会」の藤井幸子事務局長、「石垣島への自衛隊配備を止める住民の会」の上原秀政共同代表、内原英聡さんほかの市議、反対運動の方々ら20人以上が駆け付けてくれました。
沖縄島の「屋内避難」は「不合理」
石垣港での抗議行動に立ち会う中でジャーナリストの布施祐仁さんは、台湾有事に対応する沖縄県の住民避難計画が、与那国、石垣、宮古を「全住民避難」としながら、沖縄島(本島)は「屋内避難」に留めていることを「合理性がない」と批判しました。与那国、石垣、宮古には自衛隊ミサイル部隊が配備されますが、沖縄島にも自衛隊ミサイル部隊が置かれ、さらに米軍の「嘉手納」「普天間」の重要基地がある。有事となれば先島以上に沖縄島が攻撃目標となる危険性は大きい。沖縄島が「屋内避難で大丈夫という保証はない」と布施さんは指摘しました。まったく同様のことを軍事ジャーナリストの半田滋さんも週刊金曜日で指摘しています。
防衛省は宮古、石垣の先島から陸自地対艦ミサイル配備を進め、沖縄島への配備計画をを後回しにしました。基地反対運動が沖縄島で燃え上がらぬよう、地ならしとして先島に先行配備したことが疑われます。そのような経緯で県民の意識も「先島が危ない」と、どこかしら他人事のような感覚に陥りがちです。
有事が現実となれば戦場となるのは先島だけではない。それどころか自衛隊と米軍基地が集中する沖縄島は、先島以上に巻き込まれる懸念は大きい。軍事専門家は、「嘉手納が真っ先に標的となる」とも指摘しています。沖縄の全ての島々で軍備強化が進む中で、島々の住民、県民が一丸となって反対の声を上げねばなりません。
新垣邦雄(当会発起人、事務局長)