今回のメルマガは発足した「沖縄を二度と戦場にしない県民の会」の運営委員である仲松典子さんからご寄稿いただいたものです。
先日開催された防衛セミナーでは講師がウクライナを例に出し、軍備の不足が侵略を招いた、自衛隊は国民を守り抜く、国民は一丸となるべきと説きました。しかしこの自衛隊の実態はどうなのか、教育、危機管理などの問題から人権という概念自体を欠く組織と仲松さんは鋭く指摘します。文章の締めの「抑止力に名を借りた軍拡競争は人類が滅ぶまで止まるまい。平和という抑止力こそトコトン追及すべきだ。君死に給うことなかれ」に納得しました。ぜひお読みいただきたいと思います。
止まらない軍拡競争 平和という抑止力追及を
去る沖縄防衛局主催の防衛セミナー。講師の話は、「ウクライナが負けているのは侵略を躊躇させるほどの軍備をしてこなかったから。軍備を増強し侵略を躊躇させる抑止力が必要。自衛隊は国民を守り抜く。日本国民は国を守る意識が低い。国民は一丸となるべき。」と私は解した。どの国が「日本」を「侵略」するのか?理由は?
抑止力の矛盾は既に多くの識者が指摘する。文字離れ傾向にある世代に、国が喧伝する「抑止力」を冷静に読み解く力が培われていることを望む。
さて、国民を守る「自衛隊」の実態はどうか。防衛省はハラスメント申告1325件と発表したが、今更?自衛隊内部の苛めを報じる本は少なくない。逃げ場のない護衛艦上で、高等学校教育に相当する機関で、そして幹部養成機関である防衛大学校まで、陰惨な苛めと隠蔽は旧日本軍の体質か。防大卒トップ幹部たちは卒業までの4年間、数々の苛めを知らずに過ごしたのか。だとしたら、危機管理に問題はないか。
「教育」機関で横行する虐待は「自衛隊」が人権という概念自体を欠く組織であることを伺わせる。軍隊にとって人権感覚は邪魔だろう。「軍隊では敵国人を人以下の存在と思わせる訓練」をするそうだ。結果の一つが米軍によるベトナム戦時のソンミ村虐殺事件だ。自衛隊で教育され、米軍の訓練を受ける自衛隊員が同じ轍を踏まないと言い切れるか。
講師は、習近平は周りがイエスマンばかり、何を言っても聞かない、だから危険だ、とも述べた。習近平氏の人柄は知らないが、そういうタイプの危険性は実に納得。人事権を握ってイエスマンで固め、辺野古・高江では市民の訴えを聞くどころか暴力装置を以て制圧した安倍政権。弾薬庫やミサイルの配備でも、汚染処理水の放出や中間貯蔵施設の設置でも、やめてくれという津々浦々の国民の切羽詰まった声を聞く耳もなく国策に走る政府。嘉手納・宜野湾に轟く爆音も然り。市民の声を受け付けず深夜まで訓練が続く。戦争まっしぐらか。「何を言っても聞かない」政府の恐ろしさ。
今この国は祖国として愛するに足るか。真に愛するもののためならば国民は自ら闘うだろう。真の自衛官ならばそのときこそ国民と共に立ち上がるだろう。虐待や国策の犠牲になってはならない。
抑止力に名を借りた軍拡競争は人類が滅ぶまで止まるまい。平和という抑止力こそトコトン追及すべきだ。君死に給うことなかれ、である.。
仲松典子(沖縄を二度と戦場にしない県民の会運営委員)
※今回の原稿は仲松さんの了解を得て、沖縄タイムス9月2日に掲載された論壇を転載したものです。