メルマガ22号

会員のみなさまへ

メルマガ22号での山城博治さんの原稿の中での表現について以下の通り修正いたします。今後ともよろしくお願いいたします。

「2、軍拡へ前のめりになる日本政府・自民党」の小見出しの4行目「狂気」の表記について、
読者より差別的用語でふさわしくないとのご指摘を受け、「暴論」と修正させて頂きます。(5月23日)」修正した部分を太字にしております。

「台湾有事」は米国の謀略。政府の無謀な対中国戦争を止めよう
            
1、長期化するロシアのウクライナ侵攻を止めよう
 世界を震撼させるロシアのウクライナ侵攻が始まってから2ヶ月半が経過する。
 連日報道される戦争の悲劇。街が破壊され一般の住居や学校、病院にまでミサイル攻撃が加えられている。銃弾に斃れ、地下に追いやられ恐怖する数多くの市民、国外へ脱出する幾百万の人々。世界中が涙し怒りに震えている。この信じがたいばかりの悲劇を目の当たりにして、国連をはじめ米国やEU諸国、あるいは中国やインド、日本といったアジアの主要国が仲裁に入り和平合意に向けて動き出すものと思われた。しかし現実はそのようにはなっていない。和平合意が何故進展しないのか詳細が報道されないなか、ゼレンスキー大統領は連日報道陣の前でNATO諸国をはじめ世界中に具体的な軍事支援を呼びかけ徹底抗戦の構えを崩さない。それに応えるようにEU諸国や米国は莫大な軍事支援を行っている。バイデン大統領は4月28日ウクライナへの軍事・経済支援のため330億ドル(4兆3000億円)に及ぶ巨額の追加支援を発表した。もはや支援と呼ぶレベルではない。米国をはじめNATO諸国の軍事援助がこのように拡大し続ければ戦闘はさらに激化し長期化する。それどころか通常兵器で劣勢を余儀なくされるロシア・プーチンが本気で核兵器に手を出す可能性が高くなってくる。世界は本気になってこの戦争を止めなくてはならない。

2、軍拡へ前のめりになる日本政府・自民党
 日本政府どうか。2021年1月のバイデン政権誕生以来同政権と一体となって「中国脅威」論を強調し、「南西」諸島・琉球弧での自衛隊基地建設に突き進んできた政府・自民党が、ロシアのウクライナへの軍事侵攻を機にさらに一層軍事強化に乗り出そうとしている。その旗振りの先頭に立つ安倍元首相の発言は、まさに暴論という他ない突出ぶりだ。「台湾有事は日本有事」発言から始まり、「敵基地攻撃能力」ならぬ「敵中枢攻撃能力」保有、「核兵器の共有化」まで踏み込んでいる。この恐るべき暴論に煽られ岸田内閣も急激な軍拡路線に傾斜していく。岸田首相は総裁選のさなかで「敵基地攻撃能力保有」に言及しただけでなく、その後中国や北朝鮮に届く長距離高性能ミサイルの開発・配備を了承し、防衛費の対GDP比2%増額も検討に入ったと言われる。
この急激な軍事拡大策は「ロシアのような全体主義国家に対抗するため」とされるが、ロシアが日本侵攻に踏みだす理由が見出せないことから、その対象が中国や北朝鮮であることは明らかである。しかしこれもまた中国や北朝鮮が、日本を戦争も辞さない敵対国と名指ししたことはこれまで皆無であり、にもかかわらずここまであからさまな敵対的軍事拡大策を進めていく裏には何かある。
先に触れたように米国バイデン政権のウクライナ支援は単なる軍事・経済支援のレベルをはるかに超えている。2022年度の軍事予算でウクライナ59億ドル(約6,800億円)。それに対してロシアは617億ドル(約7兆円)、日本が491億ドル(約5兆4,000億円)とされることから、米国が4月28日にウクライナに追加支援を決定した330億ドル(約4兆3,000億円)と2月24日にロシアがウクライナ侵攻を開始してから続けられた支援の累計37億ドルとの合計367億ドル(約4兆7,700億円)がどれほど高額なものかが分かる。ウクライナの軍事費の6倍以上、ロシアの年間軍事費の約60%だ。数字の上からはもはや米国の対ロシア戦争だ。ウクライナは米国の代理戦争を強いられていると言える。だからゼレンスキー大統領はロシアとの和解協議に応じることができない。全国民に向かって「国民よ、銃を取れ。そしてウクライナのために戦おう」と呼びかけるしかない。米国はウクライナ全土が焦土と化そうがロシアに勝利するまで軍事介入支援を続けるだろう。米国の意図はウクライナ戦争でロシアをたたき、その次に中国、北朝鮮をたたく。その包囲網に日本を呼び込み、いざという時には日本を戦わす。安倍氏や岸田首相を背後から煽っているのは米国だ。このことは、現在進められている「南西」諸島の軍事化と「台湾有事」での米国の対日政策を見れば明らかになる。

3、「台湾有事」は米国の謀略である
(1)バイデン政権の対中政策と日米協議
昨年1月米国大統領に就任したバイデン大統領は、就任直後の2月に国務省で演説し、中国について「われわれのもっとも深刻な競争相手」と定義したうえで、中国からの挑戦について正面から受けて立つと宣言した」とされる(日本国際問題研究所)。
ここから「台湾有事」がプロパガンダされ、日本を巻き込んだ怒涛の中国封じ込め政策が開始される。以下時系列的に今日までの流れを見てみる。
①フィリップ・デービットソン米インド太平洋軍司令官(当時)発言 2021.3.9
「台湾は明らかに彼らの野望の一つだ。その脅威は今後10年間ではっきりあらわれるだろう。実際のところ6年だ」
②日米外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2) 2021.3.16
「自由で開かれたインド太平洋を実現するため強固な日米同盟の一層の強化」
③日米首脳会談 2021.4.17
「台湾海峡の平和と安定の重要性」を確認
◦台湾有事の際には日米が積極的に連携することを確認したもの(外務省高官談話)
◦台湾有事になれば、与那国島と台湾とは110㎞。南西諸島も一つの戦場になるのは軍事的には常識で日本の安全保障に直結する(河野克俊前統合幕僚議長)2021.5.12
◦中台有事になった場合沖縄に直接関係する。沖縄県民は事態を覚醒せよ(中山泰秀防衛副大臣)日米シンクタンクオンライン会議 2021.6.29
④日米外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)2022.1.7
 県内日米各基地の共同使用を念頭に「国家防衛に必要なあらゆる選択肢を検討する」
⑤日米首脳会談 2022.1.21
◦「敵基地攻撃能力の保有を含め、防衛力を抜本的に強化する」「防衛費GDP比2%増額に言及」(岸田首相)
◦「自衛隊機が相手領空内に入り、軍事拠点を爆破する選択肢について排除しない」岸信夫防衛大臣 衆院予算委員会分科会 2022.2.16

(2)「台湾有事」に米軍は参戦しない
   以上から、バイデン政権の中国への異常なまでの警戒心と日本を巻き込んで対抗しようとする計略が見えてくる。バイデン政権登場以来急激に高まる「中国脅威」論の発端となったデービッドソン前司令官証言が政権とすり合わせの上で発せられたものであることは明白だ。いたずらに中国の脅威を煽り米国の同盟関係国を自らの戦略に引入れるための大芝居だったといえる。問題はここからだ。
   日本政府は、米国の要求に応じて「南西」諸島・琉球弧に米海兵隊辺野古新基地のほか数多くの自衛隊基地を建設している。同諸島の「防衛」を名目とするが本当の狙いは、2022年1月7日の外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)で確認したように、全ての自衛隊基地を共同使用に供させ、そこに米軍がミサイルを配備し攻撃拠点にすることにある。
   日米が中国をミサイルで攻撃すれば、そこは当然反撃の対象とされ戦場となる。しかも米国はウクライナでもそうであるように自らは戦わない。血を流すのは自衛隊であり住民だ。沖縄選出の伊波洋一参議院議員は、2月12日、地元那覇市での講演でこのことについて次のように語っている。「米軍は『日米共同作戦』に大部隊を投入しない。既存の自衛隊基地や民間施設などを小部隊が共同使用する。『台湾有事』が近いと判断されれば、中国のミサイル攻撃を想定して在日米軍の主要部隊は日本から撤退する。北海道から南西諸島まで日本列島全体が中国ミサイルの射程に入っているからだ。航空機や艦船を保全するためグアム島より遠くの、ハワイや米本土に撤退させる。一部の空軍や海兵隊の航空機部隊をグアム以東の幾つかの臨時拠点に配置して米海兵隊のEABOを担わせる。この部隊が南西諸島の軍事拠点から島伝いに移動して『台湾有事』で東シナ海の中国艦船を攻撃する」。まさに正鵠を射る発言だ。
   「脅威」を煽るだけ煽って、「南西」諸島・琉球弧を戦場にすることを日本側に強要しておきながら、自らは参戦せず自衛隊にほぼ丸投げの戦闘となることが明らかになった。米国はウクライナで莫大な軍事支援を行う傍ら自らは戦闘に参加せず、ロシア叩きに血道を挙げている。このことから「台湾有事」を口実に戦端が開かれたらどのような戦争になるか語るまでもない。騙されてはならない。「台湾有事」は米国の中国叩きに日本を引き込み「南西」諸島・琉球弧を戦場にする計略であり、日本に米国の代わりになって対中国戦争を担わせる恐るべき謀略である。

 4、私たちの主張  
米国の恫喝に屈して、日本を破滅の道に導く日本政府や安倍氏をはじめとする保守強硬派議員の妄動に乗せられてはならない。そもそも台湾問題は中国の国内問題である。中国政府は「台湾当局が独立を明言しなければ侵攻しない」と言明しており、また蔡英文台湾総統も「台湾は中国との統一(一国二制度)を求めないが独立もしない。現状維持だ」と語り、中国政府と事を構えるつもりがないことを表明している。国際社会の責務は中国・台湾当局にそのことの順守を求めその環境を整備することにある。
私たちは去る1月、日米の「台湾有事」を名目とする戦争圧力に抗して、平和の裡に台湾問題が解決できること、日中間の領土問題も外交のチャンネルを通じて解決ができる問題であることを訴えるため『ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会』を立ち上げた。多くの県民の皆さま、全国の仲間の皆さまの賛同を得て大きな世論にして「南西」諸島・琉球弧での戦争、ひいては日本全土を戦場にする無謀を止めていきたいと願っている。ご理解とご支援を心からお願いするものです。

山城博治(「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」共同代表)

「メルマガ22号」への1件の返信

  1. 1、ウクライナ情勢の見方のなかで、ウクライナの人々の考え方、ものの見方、希望や選択を理解するという観点がないように思います。それと、ウクライナ情勢の類推で台湾を含む極東の情勢を語ることが適切かどうかも疑問に思います。
    2、「そもそも台湾問題は中国の国内問題である」と言い切れるのか疑問が残ります。台湾は事実上は独立状態と私は思っています。台湾の人々が唐突に独立宣言をして中国の侵攻に口実を与えるような破滅的な選択をするとは思わいません。しかし今後中国が台湾の独立状態をだんだんと制約してくる可能性はあるのではないか。香港は独立状態であったとは言えず同様に見ることはできないけれども、現在に至る経過を考えると左記の危惧は否定できません。そのような事態に至ったときにどのような立場をとるのか難しい問題です。

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