日々動く南西諸島防衛強化に関連する記事を掲載していきます。

「ミサイル阻止へ攻撃力保有」 防衛費GDP2%以上 (沖縄タイムス 2022年4月16日)https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/943819
政府の外交・安全保障政策の長期指針「国家安全保障戦略」など3文書改定に向け、自民党安保調査会が検討する提言原案の全容が判明した。相手領域内でミサイル発射を阻止する攻撃能力保有を明記。焦点となっていた「敵基地攻撃能力」の名称を巡っては、攻撃対象をミサイル基地に限らず、指揮統制機能も加えて改称する方向だ。防衛費は5年をめどにGDP比2%以上への増額を目指すよう要求。ロシアのウクライナ侵攻を受け、輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」も見直す。
複数の党関係者が15日、明らかにした。来週中に党内議論を経て提言を最終決定。4月下旬に岸田首相に提出する予定だ。(共同通信)

反対の声上げ、戦場化阻止-勝連にもミサイル配備 (論壇 沖縄タイムス 2022年4月16日)
2023年、陸上自衛隊勝連分屯地に、ミサイル配備というニュースが流れた。ハンマーで頭をたたかれたような衝撃を受けた。
与那国・宮古島に配備され、石垣島に配備され、石垣島には今年、勝連には来年配備の予定である。
まさか何キロも離れていない勝連にミサイル配備とは。すぐに勝連分屯地を見に行った。大通りから5,6分の所にゲートがあった。
2001年9月11日、米国で同時多発テロが起き、多くの人が犠牲となった。その頃、観光業界にいた私は、米軍基地がある島に住む怖さを実感した。
キャンセルが相次ぎ、翌年・翌々年の修学旅行の予約が激減した。基地ある島故の恐怖と悲哀を味わった。
冷戦終結後、自衛隊の北海道配置が減少し離島防衛に重きが置かれ、南西シフトの基本構想ができた。
2012年の尖閣国有化から始まった日中対立を利用して、アメリカの台湾防衛戦略では、日本を取り込む動きが始まった。奄美・与那国・石垣・宮古島・勝連の第1列島線で自衛隊などが、グアムを含む第2列島線で米軍が部隊展開をする戦略へと変わった。
2015年、「安保関連法案」が成立し、日本は戦争ができる国になった。
安倍晋三元首相は、「台湾有事」は、日本の有事と考えており、台湾防衛のため、アメリカ軍が沖縄の基地から出撃することになっていく。
そのような事態になれば、沖縄のミサイル基地も米軍基地同様、中国の標的となってしまう。そうなれば、沖縄が戦場となることは間違いない。
今、ロシアがウクライナに対して、非人道的な攻撃を仕掛けている。画面に映し出される人々に対して、何もできない自分にふがいなさを感じる。
しかし、今、どんな言葉を使っても、「戦争は正当化できない」と強く思う。
77年前、この地は地獄の沖縄戦を経験させられた。決して武力では平和の構築はできないと、先人たちは教えてくれた。決して、沖縄を戦場にしてはならない。
私は、勝連のミサイル配備に反対の声を上げていく。沖縄を再び戦場にしないために。
東智子(うるま市安慶名、68歳)

社説「憲法の軽視は許されぬー反戦デモ敵視」(沖縄タイムス 2022年4月16日)https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/943670
陸上自衛隊が2020年、記者向けの勉強会で配布した資料で「予想される新たな戦い」の対象に、「反戦デモ」を例示していた。
デモは、憲法21条で表現の自由として保障されている。戦争に反対し平和を訴える市民の合法的な意思表示の敵視であり、憲法と民主主義を軽視する危険な認識だ。
陸自は記者に配った資料で、武力攻撃に至らない手段で自らの主張を相手に強要する「グレーゾーン」事態の具体例を挙げた。この中で、テロやサイバー攻撃と反戦デモを併記していた。
記者から「不適切だ」と指摘を受けて回収し「暴徒化したデモ」に修正したという。
反戦デモへの見解を巡っては、湯浅悟郎前陸上幕僚長が19、20年に外部で講演した際の資料にも、同様の記述があったことが分かっている。
勉強会の担当者だけでなくトップを中心に、デモを敵視する風潮が組織内でまん延していたと疑わざるを得ない。
政府内では、文民の危機感も薄い。松野博一官房長官や鬼木誠防衛副大臣は当初「誤解を招く表現だった」と釈明するにとどめた。
問題は「誤解」されていることではない。戦力を備えた自衛隊という実力組織が、憲法も認める市民の権利行使を「戦い」の対象に挙げるという、ゆがんだ認識が問われているのだ。
松野氏は野党の追及を受け「不適切だった」と軌道修正したが、不十分だ。文民統制に関わる事態と捉え、岸信夫防衛相は陸自への指導など対応を検討すべきだろう。
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市民との関係を巡っては07年、陸自の情報保全隊が自衛隊の活動に批判的な市民の動向を調べ、個人情報を記したリストを作っていたことが明らかになった。
県内でも沖縄弁護士会、労組や市民団体などの幹部が実名とともに活動内容を記載され「戦前の特別高等警察の再来か」と猛反発した。
組織の方針にそぐわない市民を監視し、敵視する体質が脈々と受け継がれているのではないか-。そんな危惧が募る。
中国の脅威を念頭に、自衛隊の「南西シフト」が奄美から先島まで、琉球弧全体で進んでいる。情報保全隊も、宮古島市と与那国町への陸自配備に伴い、配置された。
台湾有事への備えを口実に、先島でも市民の活動に逐一、目を光らせるようなことがあれば、住民は他国だけでなく自国の軍事組織へも緊張を強いられてしまう。
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自衛隊基地などの周囲で、土地の所有者や利用状況を調査できる土地規制法が9月に全面施行され、情報保全隊の監視活動は県内でも強まると想定される。保全隊のリストには、ヘリの騒音に苦情を言っただけで勤務先や住所を調べられた人もいた。
ロシアのウクライナ侵攻が続く中、反戦デモは世界中で広がっている。先の大戦で住民を巻き込んだ大規模な地上戦があった沖縄県民は、平和を望む思いが特に強い。デモに加わる市民の声に謙虚に耳を傾ける姿勢こそ、自衛隊に必要だと自覚してほしい。